唐突だが、最初に想像していただきたい。 読者は、これから歯科治療のためエアータービンで歯を形成されるとする。 その際どのような呼吸をするだろう? きっと息を止めているはずだ。 そうしないと水が気管に入りむせてしまう。 では、印象採得では、どうだろう? トレーが近づくにつれ、大きく息を吸い込む。 そして、トレーを挿入される瞬間に息を止める。 治療中、患者は術者の動きに合わせ呼吸調整をしていることがわかる。(図1) しかしこれができないのが、低年齢の子どもである。 治療にばかり目が行くと、呼吸のことを忘れがちである。 苦しいから、嫌がり暴れるのかもしれない。 そこで事前に、呼吸調整ができるように誘導しておく。 さて今、術者がチェアーで子どもの歯を磨くとする。 しかし単に“歯をきれいにする”だけではもったいない。 歯磨きを通じ、こどもを協力的にしておくと、以後の処置が楽になる。 その方法を紹介しよう。 最初に、歯ブラシを子どもの視野に入れ、口に近づけ息を止めるように誘導する。(写真2) そして3数える間だけ磨き、歯ブラシを抜く。(写真3) すると唾液を嚥下した後、息を吐き続けて吸う動きがみられる。 こうして、歯ブラシに合わせて呼吸を調整するように誘導する。 これを確認したらまた歯ブラシを視野に入れ磨く。 その直前には、横にコップを置き、歯ブラシをその水で洗うと同時に、水を含ませることで嚥下を誘発させる。(写真4) これを同じリズムで繰り返すのがポイントだ。 こどもの脳には,何か近づけば,口を開けるという回路を作っておくのである。(写真5) 是非,お試しあれ。 続く 一定のリズムで行うことが重要です。 (リズムが崩れると嫌がり始めることがあります。)(図10)
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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