子どもに麻酔をする時、“痛くないよ~”という言葉をよく使う。しかし、子どもは“痛くないよ~”と言われながら、予防接種を打たれてきた。 従って、この言葉は“これから注射をする”と受け取るかもしれぬ。 では、どのような言葉がけが良いのだろう? さて言葉がけには、二種類ある。 一つは、聞いたら“よし、頑張ろう!”と勇気づけられる言葉である。 言い換えれば、“元気になる”言葉がけ。 これを“正の言葉がけ”と言う。
もう一つ、この言葉を聞くと、不安感を高めたり、心を萎縮させる言葉がある。 これが“負の言葉がけ”だ。
冒頭の“痛くないよ~”も負の言葉がけである。 “負の言葉がけ”は、他にも 「泣いたら、後でお父さんに叱ってもらいますよ。」 「おりこうにしないと、注射をするよ」・・などがある。 負の言葉がけは、成人の治療に対しても気をつけねばならない。 例えば、これから読者は埋伏智歯を抜歯するとしよう。 まず伝達麻酔を打たれた。 術者の歯科医師は、隣のチェアーで他の患者の治療を始めた。 麻酔を十分効かせるためだと思い待っていた。 すると歯科衛生士から“いかがですか?ご気分悪くありませんか?”と聞かれた。 読者は、“大丈夫”と答える。 しばらくすると、また“ご気分悪くありませんか?”と聞かれたので、同じように答えた。
しかし、同じような質問を繰り返されると、神経質な患者なら“麻酔を打つと気分が悪くなるのかな・・・”と思い暗示にかかってしまう。 これも不安感を引き起こすので“負の言葉がけ”と言える。

著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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