阿部田 暁子の 『何か良いこと見つけたい。』
Vol.8 「優しくしてくれて、ありがとう」
2018/7/6 デンタル〇〇デザイン

インプラントのメインテナンスにいらっしゃっていたおじいちゃんの患者さん。 いつもかわいく(その表現は失礼かもしれませんが)ニコニコされていて、予約の日が近づくと達筆なお葉書をくださり、「綺麗にしてもらえるのが楽しみだ」とおっしゃってくれました。 私が初めて担当することになったその日は、「怖い人だったらどうしよう。」とドキドキしていたそうです。 終わると、「あー良かった、優しい人で、良かった、本当に良かった」と言ってくれていました。 リコールの葉書には、印刷の文面に添えて私が自ら直筆で「お待ちしていますね。」と書くようにしていました。 「阿部田さん、お葉書が届いています。」いつものような達筆な文面。 しかしそこには、こんな文章がありました。 「家族が自転車で通うのが危ないので、近くの歯医者さんに今後通うようにと言っております。今までお世話になりました。今度が最後になりますが、楽しみに伺います。」 確かにお元気とはいえ、高齢の方が自転車で通うことに、家族が心配するのもわかります。 その日は、いつものようにニコニコと、早めに来院されていました。 終わると 「本当に今まで優しくしてくれて、ありがとう。あなたがいるからここに通うことが楽しかった。綺麗にしてくれていつもありがとう。」と、最後に大事そうに茶色の袋をくださいました。 「あなたのことを思ったものですよ。」 「え?なんだろう、この厚み?ん?まさか・・げ、げん、いや、そんなことない。それはいけない。」 目の前でそっと、袋を開けると・・は、思わず息をのみました。 そこにはなんとも達筆な、掛け軸に貼るような1メートル以上ある縦長の習字の文字が! 「裁花楽太平」と書いてありました。 「うぁ~素晴らしい、どういう意味なのですか?」 すると、きっと真面目なお顔になり、 「花を咲かせながら、その道を歩いていく、まるであなたのようだと思いました。」 そこには、その方のお名前ではない赤い印鑑が押してありました。 そう、おじいちゃんは、習字の師範だったのです。 そして、ニコニコされながら、「さようなら、ありがとう」と手を振って、帰っていかれました。 ・・花を咲かせながら、人生の道を歩むのか・・ おじいちゃん、どうかお元気でいてください。 そして、ありがとうございました。 これからの道のりも、きっと花を咲かせて歩いていきますね。