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阿部田 暁子の 『何か良いこと見つけたい。』 Vol.8 「優しくしてくれて、ありがとう」

阿部田 暁子の 『何か良いこと見つけたい。』 Vol.8 「優しくしてくれて、ありがとう」
阿部田 暁子の 『何か良いこと見つけたい。』 Vol.8 「優しくしてくれて、ありがとう」
インプラントのメインテナンスにいらっしゃっていたおじいちゃんの患者さん。
いつもかわいく(その表現は失礼かもしれませんが)ニコニコされていて、予約の日が近づくと達筆なお葉書をくださり、「綺麗にしてもらえるのが楽しみだ」とおっしゃってくれました。
私が初めて担当することになったその日は、「怖い人だったらどうしよう。」とドキドキしていたそうです。
終わると、「あー良かった、優しい人で、良かった、本当に良かった」と言ってくれていました。

リコールの葉書には、印刷の文面に添えて私が自ら直筆で「お待ちしていますね。」と書くようにしていました。

「阿部田さん、お葉書が届いています。」いつものような達筆な文面。
しかしそこには、こんな文章がありました。
「家族が自転車で通うのが危ないので、近くの歯医者さんに今後通うようにと言っております。今までお世話になりました。今度が最後になりますが、楽しみに伺います。」
確かにお元気とはいえ、高齢の方が自転車で通うことに、家族が心配するのもわかります。

その日は、いつものようにニコニコと、早めに来院されていました。
終わると
「本当に今まで優しくしてくれて、ありがとう。あなたがいるからここに通うことが楽しかった。綺麗にしてくれていつもありがとう。」と、最後に大事そうに茶色の袋をくださいました。
「あなたのことを思ったものですよ。」
「え?なんだろう、この厚み?ん?まさか・・げ、げん、いや、そんなことない。それはいけない。」
目の前でそっと、袋を開けると・・は、思わず息をのみました。
そこにはなんとも達筆な、掛け軸に貼るような1メートル以上ある縦長の習字の文字が!
「裁花楽太平」と書いてありました。
「うぁ~素晴らしい、どういう意味なのですか?」
すると、きっと真面目なお顔になり、
「花を咲かせながら、その道を歩いていく、まるであなたのようだと思いました。」
そこには、その方のお名前ではない赤い印鑑が押してありました。
そう、おじいちゃんは、習字の師範だったのです。
そして、ニコニコされながら、「さようなら、ありがとう」と手を振って、帰っていかれました。
・・花を咲かせながら、人生の道を歩むのか・・
おじいちゃん、どうかお元気でいてください。
そして、ありがとうございました。
これからの道のりも、きっと花を咲かせて歩いていきますね。

著者阿部田 暁子

公益社団法人
日本口腔インプラント学会認定
インプラント専門歯科衛生士
一般社団法人 日本歯科麻酔学会 認定歯科衛生士

略歴
1985年
日本歯科大学附属歯科専門学校卒業
(現日本歯科大学東京短期大学)同大学麻酔科勤務
1988年
スウェーデン イエテボリ大学 ブローネマルククリニックにてナースコース受講
サティフィケート取得
2005年
アシスタントワークセミナー講師、ドイツ海外研修を経てSPIインプラントアシスタントセミナー開始
2007年
スウェーデンハルムスタッドにて感染管理講習受講
日本医療機器学会 第2種滅菌技士取得
現在
開業医、総合病院口腔外科、など臨床現場にて勤務を経てインプラント専門歯科医院にて、メインテナンス、オペを担当
各種インプラントアシスタントセミナー講師 各種学会などで発表活動
共著
  • 「インプラント治療のためのアシスタントワークとメインテナンス」
    (クインテッセンス出版 2005年)
  • 「インプラント治療における成功への法則とリカバリー」
    (第一歯科出版 2007年)
  • 「歯科衛生士ベーシック スタンダードインプラント
    (医歯薬出版 2015年)
阿部田 暁子

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