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コラム

アン・サリー、その歌声と表現 歌手として、内科医として、大切にしている口の健康

アン・サリー、その歌声と表現 歌手として、内科医として、大切にしている口の健康
アン・サリー、その歌声と表現 歌手として、内科医として、大切にしている口の健康
歯科医師であり、現代美術作家でもある長縄拓哉先生が各業界の第一線で活躍するクリエイターとともに歯の健康について考える当企画。5回目のゲストは内科医でありながら、NHK紅白歌合戦の出場や連続テレビ小説『おかえりモネ』の挿入歌、映画『おおかみこどもの雨と雪』の主題歌など、歌手としても幅広く活躍するアン・サリーさんをお迎えしました。「デンタルマガジン193号(2025年6月1日発行)」では載せきれなかったこぼれ話やアンさんの歯磨きライフについて伺います。

内科医・シンガーソングライター アン・サリー 氏/歯科医師・現代美術作家 長縄 拓哉 先生

<アン・サリー(Ann Sally)氏プロフィール>


内科医・シンガーソングライター。ジャズの素養をもとに昭和歌謡からロックまで様々なジャンルを手がける活動で知られる。2001年に『Voyage』でアルバム・デビューを果たし、2003年の『Day Dream』『Moon Dance』ともにロングセラーを記録。
医師として勤務する傍らコンスタントに音楽活動を続け、これまで多数アルバム作品のほかCMや「おおかみこどもの雨と雪」をはじめとする映画主題歌を歌唱。
デビュー20周年となる2021年にはNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の挿入歌を歌唱し、2022年2月には20年を超える音楽活動の集大成とも言うべきアルバム「はじまりのとき」をリリース。その唯一無二で印象的な歌声とジャンルレスな音楽性は幅広い層に届けられている。

<長縄 拓哉(ながなわ たくや)先生プロフィール>


1982年愛知県生まれの歯科医師(医学博士)であり現代美術作家。2007年東京歯科大学卒業後、東京女子医科大学病院、デンマーク・オーフス大学での口腔顔面領域の難治性疼痛(OFP)研究を経て、口腔顔面領域の感覚検査器を開発。IADR(ボストン、2015)ニューロサイエンスアワードを受賞。デジタルハリウッド大学大学院在学中。現代美術の特性を応用し、医療や健康に無関心な人々や小児のヘルスリテラシーを向上させ疾病予防をめざす。

より幅広い選択ができるほうを選んだ結果、今のスタイルに

長縄:僕自身、歯科とアートの2つのフィールドで活動していることもあり、同じく医療に携わるアン先生が音楽の世界でも活躍されてきた背景にとても興味があります。どのようなきっかけで、今のようなスタイルになったのでしょうか? アン:私の中では、医療と音楽を切り離そうとか、逆に2つの肩書きを持っていることを全面に出してアピールしようとか、そんなふうに考えたことはないんです。子どものころから音楽が好きで、医療についても同じくらい憧れを抱いていました。ただ、高校生になって進路を決める際に、音楽大学に進んだら医者にはなれないけれど、医大に行けば音楽は続けられると考えました。より幅広い選択ができるほうを選んだ結果が、今のスタイルにつながっていったのだと思います。 長縄:音楽好きはどなたかの影響だったのでしょうか? アン:自宅にステレオセットとレコードがあり、それをこっそり聴いては歌っていました。五輪真弓さんや松田聖子さんなど、いろいろなジャンルのレコードがあったのですが、特に好きだったのがジャズシンガーのサラ・ヴォーンで、ベストアルバムを何度も聴いては歌い方を真似していました。学生時代は音楽サークルが活発な大学の学生とバンドを組んでブルースなどを演奏していました。研修医になってからもバンド活動は続き、そうした中で、あるプロデューサーの目に留まり、アルバムを出すことに。そこからプロの歌手としてのキャリアが始まりました。

ニューオリンズでの体験は、その後の活動にも影響を与える経験でした

長縄:研修医時代にニューオリンズに留学されたそうですね。ニューオリンズといえば、ジャズの発祥の地として知られた町です。 アン:ニューオリンズには高血圧の世界的な権威がいて、その先生のもとで学んでみたいという思いを前々から持っていました。それに一度、日本の外から世界を俯瞰して見てみたいという気持ちもありました。ですから、その先生がいらっしゃる施設であれば、どの都市でも留学していたと思います。ただ、やっぱりニューオリンズですから、研究目的ではあるものの、内心では本場のジャズに触れられることを楽しみにしていました(笑)。 長縄:実際にニューオリンズの生活では、音楽に触れる機会はあったのでしょうか? アン:本当に音楽が盛んで、いたる場所で演奏しているんです。医師の中にもプロのサックス奏者がいましたし、ニューオリンズで生まれ育った方は必ずと言っていいほど楽器が弾けるような、音楽が生活に根づいた街でした。そんな環境なので、私もアフターファイブには、演奏を聴きによく出かけました。そこで「CDを出しています」なんて言おうものなら、すぐに「じゃあ、歌ってみろ」と言われるんです(笑)。そのうち、気晴らしに行っただけなのに、「日本から来たアン・サリーさんです!」と当たり前のようにステージに呼び込まれたりして(笑)。 長縄:それは刺激的な時間ですね。 アン:ミュージシャンたちの演奏技術は高く、「この歌を歌いたい。キーはこのくらい。テンポはこんな感じで」と伝えると演奏が始まります。アルバムを1枚出してすぐに留学したので、それまで飛び入りで、それもすごいミュージシャンたちと演奏をした経験がなかったため、とても勉強になりました。 長縄:お客さんの反応はどうでしたか? アン:特に印象深いのは演奏者もお客さんも歌詞をどう解釈して、どう表現するのかをとても重視していたことです。演奏のダイナミックスや変化も歌詞に支配されていて、例えば、歌詞に小鳥が出てくれば誰かが小鳥の鳴き声を真似した音を出したり、悲しい歌詞の時には悲しい演奏になったり、あえて楽しげに演奏することで歌の世界観を深くしたり。そんなふうに解釈が複雑に絡み合って、「歌が生きている」という感覚を覚えました。それまで英語の歌を歌う時は、外国語ということもあって、そこまで気持ちを込めていなかったことにも気づかされました。言葉に心を込めること、それをどう表現するのか。ニューオリンズでの体験は、その後の音楽活動にも影響を与える貴重な経験でした。

等身大の声で、自分の内面から湧き出るものを最大限に活かしたい

長縄:ジャズシンガーというと、黒人の力強い歌声のイメージがありますが、アンさんの歌声にはそれとは別の魅力があります。ご自身の声について、どのように感じていますか? アン:ニューオリンズの人たちは体も大きく、声量もあって魅力的です。それはおそらく、スピーカーがない時代から演奏をしてきた背景があるからで、大きな声で歌う先代たちの歌い方を脈々と受け継いできたからだと思います。そこに私がポンと入ると、確かに貧弱に聴こえるかもしれません。あんなふうに歌えたらいいなとは思いますが、私はそこで生まれ育ってはいないし、同じようにはできません。憧れて背伸びするよりも、等身大の声で、自分の内面から湧き出るものを最大限に活かすことを大事にしています。アメリカの女性シンガーでリッキー・リー・ジョーンズという方がいるのですが、彼女は繊細な表現をするヴォーカリストです。彼女のライブを観に行った時、楽器の音も小さく、奏者たちは耳をそば立てて演奏していました。私自身、そういう表現方法をする歌手に惹かれる傾向はありますね。 長縄:先ほど、「内面から湧き出るもの」というお話がありましたが、西洋のミュージシャンとは異なる、東洋的なアプローチというものもあるのでしょうか? アン:さまざまなジャンルの楽曲を収録した私のカバーアルバムの中に、中国の都市・蘇州を舞台にした「蘇州夜曲」という歌があります。この歌はメトロノームでは合わせられないんです。物を上に放って最高点に到達するとシュッと落ちるみたいな、振り子のように揺れるテンポで演奏することで、有機的な音楽になるんです。ですから、レコーディングでは心が揺れるままに歌い、ギターとピアノがその揺れを察知して、“あうんの呼吸”で演奏しました。20年前にレコーディングした歌ですが、今でもリクエストがあり、ライブでよく歌います。その時にメトロノーム的な解釈で演奏する人がいると合わなくなるので、「振り子でいきましょう」と声をかけます。黒人音楽でよく「グルーヴ」という言い方をしますが、こうした表現は東洋的なグルーヴなんじゃないかと思います。

みんなが「いい」と感じる音楽は、きっとシンプルな曲かもしれない

長縄:僕の場合、作品を描いていると、どこで完成なのかわからなくなることがあります。音楽はアレンジャーやミュージシャンなど、いろいろな人の手が加わって作品になるように思うのですが、アン先生にとって「ここで完成」というタイミングはあるのでしょうか? アン:オリジナル曲をつくる時は、シンプルなデモ音源と、本当に簡単な譜面をミュージシャンに渡し、「せーの」で演奏します。すると、イメージとは違う感じになることがあって、でも、それがかえって素晴らしい音楽になる場合もあります。音楽は一人ひとりの個性を持ち寄るアンサンブルなので、むしろすべてを私がコントロールすることはできません。それにスタジオを借りている時間も限られているので、ある程度、納得するラインを決める必要もあります。だけど、面白いのは、何回もテイクを録っても、みんなが「いいね」と感じるテイクは、たいてい1回目か2回目なんです。音楽はある意味、瞬間芸で、アルバム制作の時はその瞬間を封じ込めるのですが、絵はその瞬間、瞬間を継続させるのも難しいし、1人で制作するから、「ここで完成」と決めづらいのかもしれませんね。 長縄:1人で描いていると、果たして終わりはいつなんだろうと(笑)。 アン:世の中には奇跡のような歌がたくさんあります。生きている間にその魔法を感じられる音楽をつくれたらいいなという憧れがあるのですが、みんなが「いい」と感じる音楽は、きっとシンプルな曲なのかもしれないと思うことはあります。

将来、元気で過ごすためにも歯の健康は大切

長縄:僕が絵を描く目的のひとつは、普段、医療や健康に関心がない人たちに予防の大切さを伝えるためです。例えば、僕の作品を見た人が「この作者は歯医者だったな」と思い出すだけで、歯の健康について考えるきっかけになるかもしれません。アン先生のファンの皆さんは純粋にアン先生の音楽を楽しんでいると思いますが、もしかすると、「内科の先生だよな。そういえば、最近、飲みすぎているな。お酒控えよう」と思う方がいらっしゃるかもしれません。そんなふうに考えたことはありますか? アン:私の歌を聴くと、「血圧どうだっけ」みたいな(笑)。 長縄:そうそう、最近スナック菓子を食べすぎてるなとか(笑)。 アン:内科医なのに恥ずかしながら、そんな視点を持ったことがなかったので、ハッとしました。確かに、そういう活用方法はありますね。ただ、ステージのMCで冗談として、「歯、磨けよ!」とドリフみたいなことを言うことはあります(笑)。 長縄:そうなんですね(笑)。今回の記事をきっかけに、アン先生のファンの皆さんが歯の健康について考えてくださると嬉しいなと思います。 アン:元気なお年寄りほど、自分の歯がたくさん残っていて、口腔内も健康的なんですよね。歯の健康と全身の健康が比例することは、診療でもよく感じています。 長縄:実際に、むし歯や歯周病が糖尿病や心臓病、認知症などと深く関わっていることは、近年明らかになっています。むし歯や歯周病を放っておくと、全身にさまざま影響を及ぼします。 アン:そうなんですよね。ただ、怖いんです、治療の際の器具が(笑)。 長縄:僕も怖いです(笑)。だけど、最近は麻酔の技術も向上していますから、昔のような痛い治療は減っていると思います。ところで、歌と口の健康は関係があるのでしょうか? アン:やはり歯が健康でないと発音がきれいにできなくなります。また、口が乾燥すると声が出にくかったり、発音もしにくくなったりするので、日頃から口の健康には気をつけています。 長縄:どのようにケアされていますか? アン:寝起きの口腔内は雑菌だらけなので、まずは朝起きたら1回磨きます。その後は毎食後に磨くのと、1日1回は歯間ブラシと糸ようじを使用し、マウスウォッシュも必ずやります。ただ、私もそんなにほめられる状態ではなく、フォローしなければいけない歯もあるので、なるべく80歳で20本の歯が残っているように、そして、痛い治療を受けないために頑張って磨いています。 長縄:最後に読者に向けて歯の健康についてメッセージをお願いします。 アン:口の健康は内科的な健康にも関わるのは確かです。内科医としても、しっかり歯磨きをしていただきたいと思います。そして、もしも口の中に悪いところがあれば、放置せずにきちんと治すことが、将来、元気で過ごすためには大切です。口の健康には気をつけていただけたらと思います。 長縄:本日はありがとうございました。 アン先生にプレゼントした長縄先生の作品「ハイエン」。喫煙しながら飴を舐める妊婦が描かれていて、歯科と内科に共通するリスク因子について注意喚起する意図が込められている。 インタビュイー アン・サリー 氏(内科医・シンガーソングライター)/ 長縄 拓哉(歯科医師・現在美術作家)

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