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医科歯科ボーダレスな診療を目指して
エピソード2:第2回 歯科でみつける?甲状腺疾患

2021/7/28 デンタル〇〇デザイン

歯科診療時、患者さんの甲状腺が大きい?と思ったことはありませんか。歯科受診も甲状腺疾患発見のきっかけになりえるのではと思います。

私は内科医師ですが、初診時や定期的な再診時に歯科口腔を観察して、歯科受診やセルフケアのレベルアップをお勧めしています。その逆パターンとして、歯科医師や歯科衛生士の皆様に、歯科口腔疾患から一歩踏み出してかかわっていただくことをご提案したいと思います。

バセドウ病と橋本病といえば、歯科医師・歯科衛生士の皆様方はもちろん、医療従事者でなくても認知度の高い疾患だと思います。その割に、初回診断のきっかけになることは内科医師であっても、実はそうそう多くありません。

私は消化器内科が専門ではありますが、甲状腺疾患を見つけることがよくあり、毎月5人ほど甲状腺専門医に紹介しています。来院された主訴に関連する場合と主訴と関連がなく見つかる場合も少なくありません。そして2年に1人くらいは甲状腺がんも見つかっています。発見のコツは「もしかしたら甲状腺疾患?」と思って診察することです。

私自身、人間ドックや定期健康診断での診察において、少し甲状腺が腫大しているかな?と思っても、健診の診察所見欄に「甲状腺腫大」と自信をもって記載できていたわけではありません。実際には、甲状腺超音波検査と血液検査での甲状腺機能検査・各種自己抗体検査を参照・対比する臨床経験を積んだことで、問診・視診・触診・超音波所見、診断名がつながるようになりました。

視診・触診だけで甲状腺腫大を確実に診断することは難しいです。ベテラン医師でも超音波検査の結果と一致しないことがありますので、恐れずに「一度、甲状腺を診てもらったいかがでしょう?」とお声かけください。間違っていたら格好が悪いとか恥ずかしいとか思わなくても大丈夫です。甲状腺疾患を数多く診療している医師ほど、その視診・触診がいかに難しいかよく心得ています。

歯科では、顎関節の動きをみるためや顎二腹筋の緊張具合や圧痛の有無、唾液腺やリンパ節腫脹がないかなど、確認するために顎や頸部を触診されると思います。胸鎖乳突筋は触診されますか?舌の位置や緊張の度合い、噛み締め癖やTCH(Tooth contacting habit)の確認については、内科医師の私もとても興味のあるところです。医科と歯科の境界領域ともいえる頭頚部領域、少しだけ範囲を拡げて、甲状腺付近も触診してみてください。患者さんに嚥下動作してもらうと、甲状軟骨が上下するのを触知できるのでさらに良いです。

さらにお伝えしたいことは、口頭で内科受診をお勧めするだけでなく、「診療情報提供書」でもって「歯科受診時に甲状腺腫大を疑います。一度貴科にてご高診お願いいたします」と、甲状腺を診療している内科(多くは内分泌代謝内科)か耳鼻咽喉科の医師に紹介していただきたいと思います。

医科の診療科では、病院・診療所を問わず「診療情報提供書」とその返書のやり取りは日常茶飯事です。しっかり書けば、きちんと返事が返ってきます。このフィードバックが歯科医師や歯科衛生士の見識を高めてくれるはずですし、歯科受診をきっかけに甲状腺疾患が見つかることが現実的になってくるでしょう。

医科からすれば、歯科で甲状腺疾患について気にしてみていただいているというだけで驚きです。多くの専門医は、他科の先生(専門医ではない)からそのような紹介があって仮にまったく問題がなかったとしても、ご紹介いただいた他科の先生の立場がなくなるような説明はしないものです。

どんな疾患も正確な診断と適切な治療が大切なことは間違いありませんが、診断されるきっかけがあればこそ。歯科も歯科口腔以外の疾患の発見・診断のきっかけになるのです。

冒頭に述べました甲状腺が腫れる(腫大する)疾患にもいろいろあります。甲状腺ホルモンが増える(機能亢進)もの、減る(機能低下)もの、甲状腺機能が正常のものなど……。以下に甲状腺と甲状腺疾患の基礎知識についてまとめてみました(図1)。ぜひ参考にしてみてください。


図1 甲状腺と甲状腺疾患の基礎知識。