TOP>コラム>しくじり先生の小児歯科 その36 慢性齲蝕を作る その3 火事の際、まず消火を行う

コラム

しくじり先生の小児歯科 その36 慢性齲蝕を作る その3 火事の際、まず消火を行う

しくじり先生の小児歯科 その36 慢性齲蝕を作る その3 火事の際、まず消火を行う
しくじり先生の小児歯科 その36 慢性齲蝕を作る その3 火事の際、まず消火を行う
学生時代、保存の模型実習では軟化牙質を除去し充填を行ってきた。
そのため、歯科医師の頭には“齲蝕”直ちに“削って充填”という回路が形成されている。
しかし小児歯科臨床は、そうはいかない。
中でも、理解力のない低年齢児はたいへんだ。
軟化象牙質を除去すると抜髄となるケースがある。
無理すると大泣きし、処置は困難を極める。
そして診療後、やるせない気持ちに陥る。

この様なケースでは、従来の思考回路を変える必要がある。
それは、齲蝕の進行を止めること。
すなわち“齲蝕を慢性化”することだ。

これは火事に例えるとわかりやすい。



出火時に行うのは、家を建てる(充填)ではない。
まず行うのは消火である。
砂糖入りの食べ物は、火に油を注ぐようなものだ。

慢性化させる課程で、小児が歯科診療に慣れ、理解力が高まる。
さらには、二次象牙質の形成促進により露髄を防げる。
良いこと尽くめではないか。

さて、火事の消火液の一つとして、サフォライドがある。
筆者は、現在でも非常に優れた薬剤だと考えている。
これは、38%フッ化ジアミン銀の溶液で、歯質中のタンパクを固定させたり、無機質と結びつき歯質の脱灰を防ぎ石灰化を促進させる。
また細菌のタンパク質を固定し抗菌作用・プラーク形成を抑制する。
さらに、象牙細管に深く浸透し、細管の封鎖作用もある。
そのため、主に乳歯齲蝕の進行抑制剤として広く使われてきた。

本剤は、小児歯科に入局した1978年当時、多用されていた。
しかし、次の3つの欠点があった。
第1は、刺激性が強いため、齲窩が深いと歯髄炎を惹起する。



第2は、苦味を嫌がり泣き出す。
第3は、軟化象牙質が黒変する。



これらの欠点をどうクリアすれば良いのだろう?

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事