新人・復職DHをはじめ多くのDHとDRも読むべき中身の濃い1冊 新人・復職DHのための丸わかり歯周治療
牧草一人・監著 相宮秀俊/阿部健一郎/安藤壮吾/井辻佐知/ 楳垣 愛/黒川 綾/桑原あゆな/ 坂本紗有見/佐藤朱美/佐藤令菜/杉元敬弘/ 鈴木誓子/高田智史/月星太介/十時裕子/ 中村航也/橋本真里江/福岡拓郎/松井正格/ 水谷 恵/南 里佳/宮地浩徳・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,500円(本体5,000円+税10%)・128頁 評 者 石谷昇司 (東京都・石谷歯科医院) 人手不足が叫ばれて久しい今日、多くの歯科医院では歯科衛生士の確保に悪戦苦闘し、また同時に採用した歯科衛生士の教育に頭を悩ませているのではないだろうか。 そんな方々に最適の1冊が本書である。評者は十数年前に監著者の牧草先生のインプラントコースに参加し、それ以来親しくさせていただいている。現在も母校大阪歯科大学にて解剖学の非常勤講師および歯周治療科臨床教授を務められ、臨床の合間に研究もされており、頭の下がる思いである。また、多くのスタッフを雇用されていて、若い歯科医師、歯科衛生士の教育にも熱心である。 本書は、タイトルどおり卒後1~5年目までの新人、そして人生イベントなどで休職したのち復職する歯科衛生士にターゲットを絞っている。とはいえ、中を見るとわずか100頁強の薄い書ながらかなり濃い内容が凝縮されているのがうかがえる。 Chapter1「歯周病とは」で歯周病の定義・診断・分類(新旧とも)、発症や進行に関する特徴などが大変わかりやすくまとめられている。 Chapter2は牧草先生の得意とする「歯周組織の解剖」が、図表のみならず豊富な顕微鏡写真や電顕像にて丹念に解説されている。 Chapter3「歯周治療の流れ」で、大まかな治療の流れから医療面接、検査と続き、実際の治療に関しては歯科衛生士が行うプラークコントロールの実践や歯周基本治療、とりわけスケーリング・ルートプレーニングに多くのページが割かれている。特にスケーラーの使用法については超音波・ハンドタイプともに動画が収載され、視覚的にも大変わかりやすい。また、歯科医師が行う歯周外科についても詳細に記述されており、その後のメインテナンスやSPT、PMTCについてもうまくまとめられ、近年のトレンドであるパウダートリートメントについては前述同様に動画も収載されている。 Chapter4「歯周病と周辺分野」では、関連する歯内療法や補綴治療、インプラント治療、矯正歯科治療などについてまとめられ、よりいっそう知識を深めることができる。そして最後に日本歯周病学会認定歯科衛生士資格についても記してあり、資格取得を目指している歯科衛生士にとって貴重な情報が提供されている。 全編を通じて重要なポイントについては「チェックポイント」や「キーポイント」と称した、枠で囲ってまとめてある部分があり、それを拾い読みするだけでも短時間で多くの情報が得られるし、おもに若手の先生が担当された13本の「コラム」にも非常に有益な情報が詰まっている。 このように本書は中身がギュッと濃縮されており、新人や復職の歯科衛生士のみならず、多くの歯科衛生士、そしてそれを教育する歯科医師にとって必読の書である。牧草ファミリー一体となって書きあげられた本書が多くの歯科医院の書棚に並び、スタッフ1人ひとりが読まれることを熱望する次第である。
機能的マウスピース装置選択の羅針盤となる、 臨床家必携の1冊 別冊ザ・クインテッセンス 子どものための機能的マウスピース矯正装置 選び方と使い方完全ガイド
岡藤範正/横井由紀子・編著 大河内淑子/大塚 淳/岡本雅文/金子和之/須田 鎮/文野弘信/柳澤百子/Veronika Dercsár・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 7,480円(本体6,800円+税10%)・136頁 評 者 三林栄吾 (愛知県・みつばやし歯科・矯正歯科クリニック) 『子どものための機能的マウスピース矯正装置─選び方と使い方完全ガイド』の発刊は、日本の矯正歯科界においてきわめて意義深い出来事である。 機能的マウスピース矯正装置は現在でこそ一定の理解を得つつあるが、数年前を振り返れば、その有効性や適応をめぐって多くの懐疑や批判にさらされてきた。 本書の価値は、こうした背景を踏まえながら、機能的マウスピース矯正装置の役割を学術的・臨床的の両面から整理し、体系的に再定義している点にある。 本書では、EF Line,Myobrace、パナシールドプラスMedical、マルチファミリー、ムーシールド、U Concept、オーソ テイン、プレオルソなど、主要な装置を公平に取り上げ、構造的特徴、対象年齢、適応と禁忌、臨床的役割を精緻にそれぞれ比較している。装置の選択肢が増え続けるなかで、「なぜこの装置を選択するのか」を明確に理解できる構成は、装置選択に迷いが生じやすい一般開業医にとって、とりわけ有用な内容である。 さらに、第一線で活躍する執筆陣の豊富な臨床経験が随所に反映されている。各装置の解説や症例提示は明快かつ実践的であり、診断から治療に至るまでの流れが具体的に示されているため、読者は自らの臨床に重ね合わせながら治療の具体像を容易にイメージすることができる点も、本書が実践書として高く評価される理由の一つであろう。 また、本書に示された有限要素法(FEM)解析による力学的考察は、特筆に値すべきである。反対咬合改善に至る歯・歯根膜・歯槽骨の力学的連鎖を示した図(p.19をご参照いただきたい)は、機能的マウスピース装置の作用機序を科学的に裏づけ、従来経験的に語られてきた知見を確固たる理論へと昇華させている。これらは、編著者である岡藤範正先生が長年にわたり積み重ねてきた研究成果の延長線上に位置づけられ、本書に揺るぎない学術的基盤を与えている。 さらに、本書全体を貫く「口腔機能の育成」という理念も高く評価したい。舌位、口唇機能、呼吸様式といった要素と咬合との関連が丁寧に示されており、機能的マウスピース矯正を“装置依存の治療”ではなく、“成長発育に寄り添う包括的アプローチ”として位置づけている。各症例に側貌セファロ分析が提示されている点も、一般臨床において骨格評価と成長を意識した診断の重要性を改めて示している。 総じて本書は、従来の固定観念を超えて、機能的マウスピース矯正装置の臨床的意義を再考させる一冊である。 矯正専門医はもちろん、日常診療で成長期の子どもと向き合う一般開業医にとっても、装置選択の羅針盤として、さらに口腔機能を軸とした診療を深化させるための信頼できる指針として、強く推薦したい。
すべての歯科医療従事者に読んでほしいフォトエッセイ集! 父母ヶ浜 2000日 花と自然を愛する歯科医師の足跡
浪越建男 著・写真 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 3,850円(本体3,500円+税10%)・144頁 評 者 月星光博 (愛知県・月星歯科クリニック) 浪越建男氏による現在連載中のエッセイ「むし歯の少ない町の歯科医師の日常 シーズン2」(株式会社モリタのWebサイト「デンタルライフデザイン」)から厳選された内容と書き下ろしに加え、多数の写真が収載されたフォトエッセイ集『父母ヶ浜 2000日─花と自然を愛する歯科医師の足跡』がついに上梓された。2019年に刊行された氏の書籍『季節の中の診療室にて─瀬戸内海に面したむし歯の少ない町の歯科医師の日常─』(小社刊)の好評を得ての続編である。 浪越氏といえば、自身が校医を務める香川県三豊市の小学校でフッ化物洗口を導入し、1999年に全日本歯科保健優良校最優秀文部大臣賞を受賞、2011年には6年生全員のカリエスフリーを達成し、日本歯科医師会会長賞を受賞したことや、日本のフロリデーション(水道水フッ化物濃度調整)の推進者としても名高。また、趣味の域を超えたといっても過言ではない椿(200種以上)の愛好家でも知られている。 浪越氏の日常は、日課とされている早朝の父母ヶ浜(日本のウユニ塩湖と言われ、現在では多くの観光客が押し寄せる香川県の人気スポット)のゴミ拾いとスマートフォンによる写真撮影から始まる。これは、自然と地上に生けるすべてのものを慈しむという彼の信念から生じているようだ。彼にかかれば、一朶の雲や一匹のアリ、一凛の花さえ、雄大な自然の主人公となる。エッセイの源となる博識は、古典文学から自然科学、音楽、映画と幅広い。各エッセイの書き出しは、ありふれた日常の一コマから始まる。その切り取られた日常は、氏の類まれな観察力と表現力で彩られ、感動的な結末へと導かれる。エッセイの中で氏の知識はつぎつぎと連鎖反応を生じ、やがて地球レベルの環境問題への警鐘、歴史へのオマージュとして一話が完結していく。 例年にないほど全国各地でクマによる被害があいつぎ、連日ニュースで報じられている。地球の温暖化とは無縁ではなさそうである。そして、自然と生き物(植物,動物,人間)の共生のあり方が問われているような気がする。浪越氏のエッセイの読後では、それまでとは違った価値観が加わったことに読者諸氏は気づくかもしれない。 今回の書籍は、氏が6年(2,000日)以上にわたって日課であるゴミ拾いをしながらスマートフォンで撮影し続けた約80,000枚の父母ヶ浜の写真、そして自宅で育てる椿の成長過程と季節ごとの変化を収めた4,000枚の写真の中から選りすぐりの情景が随所に散りばめられ、氏のさすがともいえる博識で綴られた51編のエッセイ(書き下ろし8編が収載)が、四季ごとに区分けして掲載されている。 本書は、地球温暖化ですっかり影を潜めた日本の四季を心に取り戻してくれるすばらしい内容である。歯科医療に携わるすべての人に読んでほしい一冊である。
デジタルデンティストリーの基礎固めに最適な1冊! QDT別冊 IOSのための支台歯・窩洞形成と歯肉圧排
星 憲幸・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,600円(本体6,000円+税10%)・112頁 評 者 北道敏行 (兵庫県・きたみち歯科医院) 口腔内スキャナー(IOS)が臨床に広く普及した現在、支台歯形成や歯肉圧排の考え方は、従来の印象採得を前提とした発想から大きな転換を求められている。本書は、その変化を単なるデジタル機器への置き換えとして扱うのではなく、形成・歯肉マネジメントという補綴前処置の本質を,IOS時代の視点から体系的に整理した1冊である。 本書を通して一貫して示されているのは、「IOSで正確かつ安定して読み取れる形態とは何か」という明確な問いである。鋭縁や不連続なマージン、不明瞭な窩縁形態が、スキャンデータの欠損やCAD上での補間を引き起こし、その結果として最終補綴装置の適合性や再製作率に影響を及ぼす過程が、臨床写真とともに論理的に解説されている。形成を単なる切削操作としてではなく、「補綴精度を規定するデータを設計する工程」として捉え直す視点は、IOSを日常臨床で用いる歯科医師にとって極めて重要である。 歯肉圧排に関しても、本書は従来の「マージンを視認するための操作」という枠組みを超え、「スキャン可能な状態を安定して確保するための前処置」として再定義している点が印象的である。圧排糸やペーストといった基本的手技に加え、症例や歯周状態に応じたさまざまなおすすめツールや器材が具体的に紹介されており、単なる理論書にとどまらず、明日からの臨床に直結する実用性を備えている点も本書の大きな特徴である。それぞれのツールがIOSの読取り特性やデータ再現性にどのような影響を与えるのかという観点から整理されているため、読者は自身の臨床環境やワークフローに即した歯肉マネジメントを選択しやすい構成となっている。 さらに特筆すべきは、支台歯形成と歯肉圧排を個別のテクニックとして分断せず、補綴治療全体のワークフローとして統合的に捉えている点である。IOSでは、形成不良や圧排不足が即座にデータ欠損として可視化され、その影響はCAD設計や技工操作へと連鎖する。前工程の質は最終補綴装置の完成度を大きく左右し、デジタル化が進むほどその重要性は高まる。本書は、この点を臨床実感に即して明確に示している。 また、本書の内容は特定の機種や材料に依存しておらず、IOSという技術の本質的特性に基づいて整理されている。そのため使用するスキャナーやシステムが異なっても応用可能であり、長期的に参照できる臨床書としての価値を備えている点も評価したい。形成・圧排という普遍的テーマを、時代に即した視点で再定義している点に、本書の意義がある。 IOS導入初期の歯科医師にとっては、従来の形成・圧排の考え方を見直すための指針として、またすでにIOSを日常的に使用している術者にとっては、自己流になりがちな前処置を再点検するための基準書として有用であろう。IOSを真に活用するために、本書は多くの臨床的示唆を与えてくれる。
















