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しくじり先生の小児歯科 その37 慢性齲蝕を作る その4  サフォライドの原液は、強火で焼くステーキ?!

しくじり先生の小児歯科 その37 慢性齲蝕を作る その4  サフォライドの原液は、強火で焼くステーキ?!
しくじり先生の小児歯科 その37 慢性齲蝕を作る その4  サフォライドの原液は、強火で焼くステーキ?!
サフォライドは、齲蝕の進行抑制剤として乳歯齲蝕の洪水の時代に多用されていた。



しかし本剤は、単に塗布すれば良いのではない。
歯面にプラークの付着があれば、効果が得られない。
黒変した上のプラークは、まるで“おぼろ月夜”のようだ。



まずプラークの除去が必要である。
最近、効果がなければ、専門医を紹介・・という安易な講習会もあるらしい。
言語道断な話である。

本剤を応用する以上、最大の抑制効果を得たいものだ。
そこで今回から、その工夫について紹介する。
本剤の欠点の一つは、刺激が強いため、齲窩が深いと歯髄炎を惹起しトラブルとなる。
また苦味が強いので舌に付くと、子どもに嫌がって泣かれてしまう。
そこで、ガーゼやワッテで簡易防湿が必要だ。

さて、大阪大学歯学部 故山賀禮一名誉教授は、サフォライド剤の開発者として有名である。
先生は、岡山大学の理工学の講義に来られる度、小児歯科へ立ち寄られていた。
その際、サフォライドについても興味深い話をされた。
「原液(38%フッ化ジアミン銀)塗布より、むしろ10倍希釈した方が軟化象牙質への浸透性が良いと思う。
原液では、軟化象牙質の表面は硬くなるが、内部は軟らかいことがある」
これをステーキの焼き方に例えて教えていただいた。
「強火で焼くと、表面がカリっと焦げ香ばしさが広がる。しかし、内部まで火が通らず肉汁が多くなりジューシーに仕上がるだろう」


なるほど!
実際、不思議に思っていたことだった。
続けて「一方弱火で焼くと、内部までよく火が通る。
同じように希釈して塗布すると、内部まで十分浸透し硬くなる。
しかも苦みが減るので、泣く子が少なくなるはずだ」 

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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