サフォライドは、齲蝕の進行抑制剤として乳歯齲蝕の洪水の時代に多用されていた。しかし本剤は、単に塗布すれば良いのではない。 歯面にプラークの付着があれば、効果が得られない。 黒変した上のプラークは、まるで“おぼろ月夜”のようだ。
まずプラークの除去が必要である。 最近、効果がなければ、専門医を紹介・・という安易な講習会もあるらしい。 言語道断な話である。 本剤を応用する以上、最大の抑制効果を得たいものだ。 そこで今回から、その工夫について紹介する。 本剤の欠点の一つは、刺激が強いため、齲窩が深いと歯髄炎を惹起しトラブルとなる。 また苦味が強いので舌に付くと、子どもに嫌がって泣かれてしまう。 そこで、ガーゼやワッテで簡易防湿が必要だ。 さて、大阪大学歯学部 故山賀禮一名誉教授は、サフォライド剤の開発者として有名である。 先生は、岡山大学の理工学の講義に来られる度、小児歯科へ立ち寄られていた。 その際、サフォライドについても興味深い話をされた。 「原液(38%フッ化ジアミン銀)塗布より、むしろ10倍希釈した方が軟化象牙質への浸透性が良いと思う。 原液では、軟化象牙質の表面は硬くなるが、内部は軟らかいことがある」 これをステーキの焼き方に例えて教えていただいた。 「強火で焼くと、表面がカリっと焦げ香ばしさが広がる。しかし、内部まで火が通らず肉汁が多くなりジューシーに仕上がるだろう」
なるほど! 実際、不思議に思っていたことだった。 続けて「一方弱火で焼くと、内部までよく火が通る。 同じように希釈して塗布すると、内部まで十分浸透し硬くなる。 しかも苦みが減るので、泣く子が少なくなるはずだ」 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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