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しくじり先生の小児歯科 その40 慢性齲蝕を作る その7 魔法の水 唾液

しくじり先生の小児歯科 その40 慢性齲蝕を作る その7 魔法の水 唾液
しくじり先生の小児歯科 その40 慢性齲蝕を作る その7 魔法の水 唾液
サフォライドの塗布時、フリーエナメルを除去し唾液の交通を良くする。
すると齲窩の乳酸桿菌が洗い流され減少する。
当然、酸産成量が減少し進行が抑制されるはずだ。
また唾液の緩衝作用により、齲窩のpHを高める効果も期待できる。



ここで緩衝作用について簡単に触れておこう。

ヒトが生きていくためには、多くの酵素が働く。
そのためには血液のpHは、7.35~7.45(正常動脈血)の弱アルカリ性に保たれている。
仮に、pHが6.8以下、7.8以上の状態では、生命保持が不可能となる。

ちなみに診療室で経験する手足の痺れや動悸、めまいを症状とする過換気症候群がある。
これは過度の呼吸によりCO2濃度が低下し呼吸性アルカロ-シスに陥り、体の調整機能が乱れた状態である。
そこでヒトの体は恒常性を保つため、酸やアルカリが加えられたときに、体液のpHを正常域に保とうとする性質がある。
この作用が唾液にも存在する。
             
理解を容易にするため、簡単な緩衝作用の実験を行った。
1)蒸留水(pH約7.0)を5mL用意する。
2)ここに0.1N(規定)の強塩酸(pH約1.0)を0.2mL加えると、pH約2.3となった。



3)次に筆者の唾液5mL(pH約7.2)に、同じ量の塩酸を加えたらpH6.01となった。
蒸留水に比べ、pHが低下し難いことがわかる。



4)では、塩酸を加えpH2.3になった試験管に、さらにどの程度蒸留水を加えれば、唾液と同じpH6.01になるだろう?
計算上では、5,000mLの蒸留水を加える必要がある。



以上のことから、唾液の緩衝能が理解いただけるだろう。

唾液は、ただの水ではない“魔法の水”なのである。

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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