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2026年1月のピックアップ書籍

2026年1月のピックアップ書籍
2026年1月のピックアップ書籍

検査・診断から臨床的な注意事項までザイゴマインプラント治療を網羅した一冊 ADVANCED ZYGOMATIC IMPLANTS 日本語版 The ZAGA Concept

Carlos Aparicio・著 安藤琢真/越前谷澄典/大多和徳人/ 加藤 哲・訳 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 31,900円(本体29,000円+税10%)・352頁 評 者 井上秀人 (福岡県・井上秀人歯科インプラントクリニック) 『ADVANCED ZYGOMATIC IMPLANTS 日本語版』は、Carlos Aparicio先生が以前書かれた『ZYGOMATIC IMPLANTS』に続く第二弾の、日本語翻訳版の書籍である。本書は内容が実に具体的で、症例写真もふんだんに用いられ、イラストも多く、解説も実にわかりやすい。われわれ開業医にとっては非常に魅力的な一冊だといえる。 上顎が著しく骨吸収した患者にとって、ザイゴマインプラントを応用し即座に固定式の補綴装置が入ることは、夢のような話である。ところが、この術式は非常に難しく、なかなか一歩が踏み出せない歯科医師が多い。本書は、これからこの治療を始めたい歯科医師にとっても有用な指南書ではないだろうか。 実は、ザイゴマインプラント治療はPer-Ingvar Brånemark先生によって1980年代に開発された方法である。その後、治療法が修正され、1990年代にAparicio先生が上顎骨や頬骨の解剖学的な特徴に注目して、ZAGA(ザイゴマアナトミーガイデッドアプローチ)分類と治療プロトコルを確立した。 本書では、実際にこの治療を実施するにあたり、基本的な診断から臨床的な注意事項を詳説している。特に、治療前の診断としてCBCT撮影は必須であり、またDTX Studioなどのシミュレーションソフトが必要であると記している。さらに、切削すべき場所や方向などの決定方法を事細かに説明し、3Dモデルを用いた予備的な削合を推奨。ZAGAの治療プロトコルでは、必要以上の骨削合はすべきではないとしているが、これはザイゴマインプラントが骨と接触する面積を大きくしたほうがよいという発想からきたものである。 そこで、歯槽頂のどの部分から削合し、頬骨弓のどの部位を狙ってドリリングを行えばよいのかを、さまざまな症例をとおして具体的に示している。考えてみれば、ドリルは直線的に進むため、削るべき二つの点が明確になり、それを直線的に結んで削っていけば、予定どおりのドリリングができるはずである。このドリリングを確実に行うためには十分な剥離を行い、視野を明示することが重要なため、外科的な細かい技術についても詳細に解説。さらに、ガイデッドサージェリーに関しても詳述し、また、補綴装置の製作や印象採得においてデジタル機器を駆使した方法にも触れている。 このように、ザイゴマインプラント治療を成功に導くためのヒントが満載の一冊になっている。そして、最終章では世界中のZAGAメンターの症例が紹介されているが、冒頭の症例が、なんとわれらが同志、今は亡き安藤正実先生の症例であったことは誇らしく思えた。今回、翻訳に携わっていただいた、安藤琢真先生、越前谷澄典先生、大多和徳人先生、加藤 哲先生に心から感謝したい。本書が、日本におけるザイゴマインプラント治療の普及と発展に寄与することを願ってやまない。

“本物の矯正歯科医”が手に取るであろう一冊 矯正治療の長期経過と保定管理 不正咬合へのアプローチと長期予後からの示唆

小坂 肇・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 19,800円(本体18,000円+税10%)・180頁 評 者 西井 康 (東京歯科大学歯科矯正学講座教授) 周知のとおり、本書の著者である小坂肇先生は、日本人の正常歯列模型を多角的に計測し、その歯列形態に適した処方によるブラケットを開発した第一人者である。さらにその探究心は尽きることがなく、このたび、矯正歯科医の究極の到達点ともいえる「長期経過」に焦点を当てた本書を世に送り出されたのである。 学会や雑誌では、最先端の治療法や難症例の治療結果が華やかに紹介される。聴講者や読者はその精巧さに感嘆し、その時点で思考が完結してしまうことも多い。しかし、治療結果が“光”であるならば、長期経過はしばしば“影”に位置づけられる。時にはその影を見せたくないという感情が働くこともあり、それが臨床の現実でもある。 本書の第1〜3章では、矯正治療後の保定に影響する因子、著者が歩んできた機能咬合と保定の関係、さらには保定研究の歴史的展望が整理されており、著者の深い洞察が伝わってくる。続く第4〜8章では、classⅡ、classⅢ、叢生、過蓋咬合、開咬といった主要な不正咬合について、長期観察を重ねた症例が提示され、一貫した視点で観察と考察が展開されている。いずれも臨床家であれば共感できる内容であり、小坂先生の臨床経験という“フィルター”を通じて示される洞察は、読者に多くの示唆を与えるものである。 特筆すべきは、安定した症例のみを選別するのではなく、一般臨床で普遍的に起こりうる歯列の変化を正面から示している点である。これにより、われわれは避けて通れない現実を真正面から突きつけられる。長期経過観察とは、矯正治療および口腔周囲環境のなかで咬合がどのように推移するのかという本質に迫る営みである。そこには、「不正を矯め、保ち、そして自然な変化に委ねていく」というサイクルのなかで、矯正歯科医がどこまで関与すべきかという問いがつねに存在する。 一定の臨床経験を重ねた矯正歯科医であれば、多くが同様の思索に至るかもしれない。しかし、自身の長期症例を丹念に掘り下げ、検証し、さらに1冊の書物としてまとめあげることは、誰にでもできることではない。これは、小坂先生の矯正歯科医としての誠実さと情熱の結晶であるといえる。 日本矯正歯科学会は2026年に創立100周年を迎え、その記念大会のテーマは「100年の煌めきと未来への飛翔」である。本書は、まさにその“煌めき”の1つとしてふさわしい成果である。 新たな治療法やデバイスに関する書籍は関心を惹きやすい一方で、その輝きはしばしば一過性である。しかし、本書が放つ光は決して瞬間的なものではなく、長く読み継がれる“持続する光”であると確信する。本書を手に取る読者は、すでに真摯に臨床に向き合う“本物の矯正歯科医”であると感じる。

智歯抜歯に関して手とり足とり詳しく書かれた本! 智歯抜歯テクニックコンプリートガイド はまる原因、はまらない対策と処置

坂下英明・編著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 16,500円(本体15,000円+税10%)・240頁 評 者 堀之内康文 (公立学校共済組合九州中央病院歯科口腔外科前部長) 本書は1冊まるごと「智歯抜歯」の本である。世に抜歯の本は多いが「智歯抜歯」だけで1冊という本は少ない。日常の臨床で、普通抜歯、難抜歯までは自院で手がけても、埋伏智歯には手を出さないGPが多い。また、自分で抜けるようになりたいと願っていたり、すでに抜歯していても「もっと早く」「もっと安全に」「もっと自信を持って」抜歯できるようになりたいと願っているGPも多い。本書はそのような歯科医師にピッタリの本である。 まず、編著者の坂下英明先生は元明海大学口腔外科教授(現・名誉教授)で、抜歯も大変お好きで、抜歯に関する造詣の深さでは日本一と私が信じ、心から尊敬している先生である。また、執筆者は、全員朝から晩まで智歯を抜歯している抜歯のエキスパートである。 本書の一番の魅力は、副題の「はまる原因、はまらない対策と処置」が示すとおり、智歯抜歯が難しくなる理由や「なぜ抜けないのか」「どうしてはまるのか」という疑問について丁寧かつ明快に分析されており、その予防法、対処法、解決法が具体的・実践的に示されている点である。まさに智歯が抜けるようになりたいと願っている歯科医師が知りたいポイントが詳細に記されている。本当に自ら智歯抜歯をしている執筆陣による本であり、抜歯の大家である坂下先生の編著者としての厳しい目が隅々まで行き渡っており、実践的で臨床に役立つ本である。 さらに特筆すべきは、豊富なイラストとシェーマによる視覚的な理解のしやすさである。写真はリアルではあるが、解剖や術式を正確に理解するためにはイラストのほうがすぐれていることは、有名な解剖書が今でも写真ではなく精緻なイラストであることでも明らかである。解剖、術野の見え方、器具の方向、分割の方向、骨削除の範囲、粘膜の牽引方向など、写真では角度的に撮影困難な部分は、イラストのほうが理解しやすい。 本書は、智歯抜歯に関してまさしく「手とり足とり詳しく書かれた本」で、自然に「智歯抜歯は怖くない」「これなら自分にもできそうだ」という勇気が湧き、自信が持てる本である。2015年に刊行の、抜歯の本として現在も読まれている『抜歯テクニックコンプリートガイド』の姉妹本で、この2冊が揃えば、抜歯に関する知識と技術はほぼ網羅できる。まさしくコンプリートガイドである。これまでまったく自院で抜いていなかった埋伏智歯を、安全・確実に抜けるようになれば、本書の本代などはすぐに回収できるので、非常に費用対効果の高い書籍でもある。 医学書の世界では、永く読み継がれる名著には「○○の内科学」「○○の外科学」のように監修者や著者名が冠されることがある。本書もいずれ、多くの歯科医師の間で「坂下の智歯抜歯」とよばれ、永く読まれ続けるに違いない。診療の範囲をさらに拡げたい気鋭の歯科医師にぜひ読んでいただきたい1冊である。

世界最高峰のEFP診療ガイドラインの詳細と実践を解説! 歯周炎ステージ I・II・III 診療ガイドライン エビデンスと臨床例で徹底解説

清水宏康/星 嵩・監著 緒方美智子/川名部 大/神成貴夫/ 木村文彦/呉 圭哲/小林龍太/ 佐々木ひな乃/土田晃太郎/早川裕記/ 前川祥吾/矢野孝星・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 13,200円(本体12,000円+税10%)・176頁 評 者 二階堂雅彦 (東京都・二階堂歯科医院) EFP(ヨーロッパ歯周病連盟)は、世界の歯周治療をリードするヨーロッパ各国の歯周病学会からなる連盟であり、AAP(米国歯周病学会)とともに世界の歯周治療分野をリードする学会である。昨今は歯周病よりもインプラントをテーマにしたセッションを多く扱っているAAPに比べ、EFPは日本の歯周治療分野の状況により近い。 EFPはそのリーダーシップの表れとして、2020年に「歯周炎ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲのエビデンスに基づく診療ガイドライン」(400ページに迫る大著)をJournal of Clinical Periodontologyで発表した。執筆者は、歯周治療に関心のある歯科医師であればだれもが知っているヨーロッパ諸国の大御所たちである。 今回紹介する『歯周炎ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲ診療ガイドライン』は、もっとも厳密で信頼性の高い方法論である、先述したEFP S3レベル・診療ガイドラインを基に、多くの臨床例とともにわかりやすく解説した内容となっている。 本書の基本構成は、プラークコントロールから、非外科治療、外科治療、サポーティブケアにわたる30項目のさまざまなクリニカルクエスチョン(Q)に対し、まず簡潔な回答が示される(A)。さらにその回答がどの程度エビデンスで支持されているのかが、推奨グレードA、B、0の3段階で示され、加えて参加者のコンセンサスの強さが、「100%同意」から「<50%で同意なし」まで5段階で示されている。 つまり、タイトルとクエスチョンを見るだけで、その治療がどの程度エビデンスに則っているのかが一目で確認できる。 たとえば、「Q:骨内欠損をともなう深い残存ポケットの適切なマネジメントは?」に対し、 ・ A:>3mmのポケットの歯周組織再生療法を行うこと推奨。 ・ Grade A、コンセンサスは強(75〜95%同意)。 といった具合である。またここからが本書の真骨頂であるが、そのクリニカルクエスチョンを補完する具体的な症例(42症例)が示されることで、読者の理解力は著しく高まる。 さらに本書の特徴は、そのドキュメンテーションのすばらしさである。全編を通じて口腔内およびデンタルエックス線写真が規格化されていることに始まり、治療中、手術中の写真も的確なポイントをとらえるもので統一され、執筆陣の高い臨床力が示されている。 執筆者はEPICを主宰する清水宏康先生、星 嵩先生を監著者に据えたEPICのメンバーである。このようなすばらしい書籍をつくり上げた彼らを、EPICの創設者として誇らしく思う。 本書は世界最高峰のEFP診療ガイドラインを基に、多くの臨床例を加え、読者の理解を高める書籍となっている。歯周治療に取り組んでいるすべての歯科医師、歯科衛生士に推薦したい。

読み進めるほどに理解が深化していく不思議な読書体験が得られる1冊 治る歯髄 治らない歯髄 ハイライトQ&A91 臨床で悩むギモンにDr.泉が答える

泉 英之・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 13,200円(本体12,000円+税10%)・164頁 評 者 斎田寛之 (埼玉県・斉田歯科医院) 2018年に上梓された泉英之先生の『治る歯髄 治らない歯髄〜歯髄保存の科学と臨床〜』は、歯科界に大きなインパクトを与えた名著であり、いまやその名を知らない臨床家はほとんどいないだろう。歯髄保存という概念自体はそれ以前から歯内療法専門医を中心に取り組まれてきたが、本書の出版を契機に、それまで“何となく”“見よう見まね”で行われてきた歯髄保存が診断や術式の面で体系化され、多くの臨床家が歯髄保存へチャレンジする大きな転機となったことは疑いない。 筆者自身も本書から多くを学び、マイクロスコープ視野下での歯髄保存に取り組んできた。しかし「言うは易く行うは難し」である。歯髄保存に挑戦したことのある臨床家であれば多かれ少なかれ途中のさまざまなステップで疑問を抱き、意図しない結果を経験したのではないか。やはり、読者が一読で泉先生のレベルに到達することは容易ではなく、「あの時,泉先生に直接質問できたら」と思った経験は、筆者だけではないはずである。 そのような臨床家の切実な思いに応える1冊として、前著から7年の時を経て刊行された第2弾が本書『治る歯髄 治らない歯髄ハイライトQ&A91』である。筆者自身が歯髄保存を通じて抱いた疑問の多くが、91もの質問の中にほぼ網羅され、それぞれにエビデンスに基づいたていねいな解説が加えられている。読み進めるほどに「もっと早く出会いたかった」と感じさせる書籍であるが、これらの質問の蓄積が、泉先生が全国各地での講演活動を通じて集積されたものであると考えると、この7年という歳月にも深い納得がいく。 91の質問には、歯髄保存の基本を再確認できる質問から、日常臨床で必ず直面する実践的なテーマ、さらには専門家ならではの鋭い視点による厳しい問いまで、幅広く収載されている。「こんな問いまで掲載するのか」と感じる質問が含まれている点も本書の価値を一段と高めている。 紙幅の都合で一部しか紹介できないが、「直接覆髄や断髄を行ったが成功率が高くないのはなぜか」「フローチャートによる診断を行わない理由は何か」「止血が困難な場合の具体的な対応法」「MTAが硬化しなかった原因」など、臨床家の実感に即した問いが並ぶ。それらに対する泉先生の回答は豊富な研究データと臨床症例に裏付けられており、必要な情報が過不足なく提示される、臨床で壁にぶつかった際に該当項目を参照する“辞書的な使い方”にも適している点は本書の大きな特長である。 教科書的な硬さはなく、きわめて読みやすいにもかかわらず、読み進めるほどに理解が深化していく不思議な読書体験が得られる1冊である。歯髄保存を極めたいと志す臨床家はもちろん、かつて歯髄保存に難しさを感じて距離を置いてしまった方にもぜひ手に取っていただきたい。第1弾と併せて読み込むことで、患者のQOL向上に直結する大きな示唆が得られるはずである。

リーダーや教育・医療従事者、組織変革に携わる実務家に必読の1冊 若手Dr.・DH・スタッフにも! ブループリント 選択の先にある未来 歯科医療の新たな地図 スタッフ・患者さんにも! ホワイトマップ 選択の先にある未来 余白から広がる人生戦略

荒井昌海・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 各4,950円(本体4,500円+税10%)・96頁 評 者 築山鉄平 (福岡県・つきやま歯科医院) 荒井昌海先生との初めての出会いは2015年、学会のパーティで共通の友人を介して紹介していただたいのがきっかけで、それ以来、折に触れて交流させていただいている。2017年には、一緒にヨーロッパインプラント学会認定試験を受験、合格を経験した。多くの先生が抱く印象と同様に、非常にスマートで論理的でありながら、人柄もすばらしい先生との印象は当時より変わっていない。 荒井先生が今回執筆された『選択の先にある未来』は、臨床・教育・組織運営といった現場経験に裏打ちされた見識から、「私たちが下す選択」が個人と社会の未来にどのように影響するかを展望する1冊になっている。荒井先生は専門領域の知見にとどまらず、倫理・教育・テクノロジー・地域社会の交差点を横断しながら、選択の重層性と連鎖性をわかりやすく示している。 本書の魅力は2つある。1つは具体的な事例に基づく説得力だ。医療現場での判断や教育現場での方針決定、組織改革の場面が生々しく描かれ、それぞれの選択が短期的な成果だけでなく長期的な文化や人材育成に及ぼす影響がていねいに追跡されている。読み手は抽象論ではなく、実践者としての示唆を得られるため、みずからの職場で試すべき具体的な行動がみえてくる。 もう1つは、未来志向のバランス感覚だ。変化の速い現代において短期的効率と長期的持続可能性のどちらを優先すべきかはつねに難題だが、荒井先生は両者を二者択一にせず、「重ね合わせる設計」を提案する。たとえば教育の場面では、即効性のある指導法と、人格や倫理観を育む時間の投資を両立させる具体的手法が示され、読者は目先の成果と未来への投資を同時に考える視座を獲得できる。 批評的にいえば、論旨が多岐にわたるため、読み手によっては取捨選択が必要だ。分野横断のアプローチは幅広い示唆を与える一方で、専門領域の深掘りを期待する読者にはやや概説的に映る場面がある。しかし、読者ターゲットを若手歯科医師、歯科衛生士、スタッフ、患者さんに絞っていることを考えるとそれも納得である。 本書から得られる主要な教訓は、“選択は孤立していない”という点である。個々の判断は時間軸と社会的ネットワークを通じて波及し、思いがけない結果を生む。荒井先生は、その因果連鎖を可視化しつつ、具体的な評価指標やチェックリスト、実践プランまで提示しているため、読後すぐに職場での議論や試行に移すことができるだろう。 総じて『選択の先にある未来』は、現場のリーダーや、教育・医療従事者、組織変革に携わる実務家にとって必読といえる1冊だ。短絡的な効率追求を戒めつつ、持続的な価値創造に向けた現実的な道筋を示す本書は、今日の不確実な時代における「よりよい選択」を考えるうえで有益な羅針盤となるであろう。

『歯ブラシ処方箋2』でカスタムメイドプラークコントロールを実践! 歯ブラシ処方箋2 歯ブラシ選びでブラッシングが変わる

金子 至・監修 金子 至/橋爪由美子/金子 創/金子 智 ほか・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,600円(本体6,000円+税10%)・200頁 評 者 沼部幸博 (日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座) 「どんな歯ブラシがお薦めですか?」歯科医療に携わっていると、必ず投げかけられる質問である。また、使用中の歯ブラシを持参し、継続使用の是非を尋ねてくる患者さんも少なくない。これらの質問に皆さんはどう答えるだろうか。 現在、市場には多くの口腔衛生用品があふれており、さまざまな媒体による宣伝ではそれぞれの利点が強調されている。そこで患者さんが私たちに求めるのは、「自分にもっとも合うものはどれか?」である。しかし、これは簡単な質問ではない。なぜなら、私たちも通常、市販されている製品群の特徴すべてを熟知しているわけではないからである。 患者さんの口腔は実に多様である。考慮すべき特徴を数え上げればきりがなく、同じ条件の口腔は一つとして存在しない。私たちはそれらを把握したうえで、適切な口腔衛生用品を選択し、的確に指導する必要がある。さらに、患者さんのプラークコントロールの技量やモチベーション、性格、身体的運動制約の有無も、器具選択時の重要な要素である。 本書は前版に引き続き、これらの多様な課題に直面した際に紐解くべき“奥義書”である。 「PART1歯ブラシ処方箋とは」「PART2歯ブラシを知る」「PART3歯ブラシを処方する」では、口腔衛生用品の機能・特徴の紹介から始まり、患者さんに適した処方に必要な項目を段階的に整理し、さらに症例に応じた選択基準をていねいに解説している。そこで示されているフローチャートは、器具選択のステップを理解するうえで大いに役立つことは間違いない。 さらに、「PART4歯ブラシ処方箋の使い方」では、クインテッセンス出版のWebサイトからアクセス可能な「歯ブラシ処方箋出力サービス」が紹介され、その意義・利点・活用方法が明確に示されている。 圧巻なのは最終章「PART5歯ブラシ一覧」である。現在国内で販売されている歯ブラシ、電動歯ブラシ、ワンタフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスの一覧が掲載され、それぞれの特徴、推奨される患者条件、指導内容までが見事に整理されている。これらは器具選択時に有用なだけでなく、前章の「歯ブラシ処方箋出力サービス」とも連動し、「口腔衛生用品の処方」を中心とする一連のシステムが構築され、その活用により歯科医師・歯科衛生士による器具選択および患者さんへの指導時の利便性が大きく高まる。 このように、本書は単なるプラークコントロール法の解説に留まらず、「口腔衛生用品の処方」から始まるカスタムメイドプラークコントロールを実践するための指南書であり、歯科医療従事者必携の一冊である。 結びに、膨大な口腔衛生用品の情報を整理し、適切な器具推奨に必要な考え方と選択基準を理論的に明示し、「処方箋」というキーワードを軸に、誰にでも使いやすいシステムを開発、提案した執筆者の方々に、心より敬意を表したい。

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