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薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第6回(最終回):地域の薬剤師が“健康ハブ”になる未来へ

薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第6回(最終回):地域の薬剤師が“健康ハブ”になる未来へ
薬剤師×歯科医師がつくる「地域で支えるお口の健康」 第6回(最終回):地域の薬剤師が“健康ハブ”になる未来へ
前回お伝えしたように、2024年度診療報酬改定は歯科医療と薬局の関係に大きな転換点をもたらしました。歯科診療における「診療情報等連携共有料1」の連携先に保険薬局が正式に追加され、歯科から薬局へ服薬情報を照会した場合には120点、薬局側が情報提供を行った場合には30点を算定できる仕組みが整備されました。これは、薬剤師が保有する服薬情報が歯科医療の安全性確保に不可欠であることを、制度上明確に位置づけたものといえます。

その背景には、高齢化にともなう多剤併用患者の増加があります。歯科で処方されるNSAIDsは、利尿薬やレニン・アンジオテンシン系阻害薬との併用により急性腎障害のリスクを高める、いわゆる「トリプルワーミー」の最終因子となり得ます。すべての薬物相互作用を歯科医師のみで把握することは現実的ではありませんので、薬剤師が管理する包括的な服薬情報は、医療安全を支える重要な基盤です。

さらに注目すべきは、薬局が地域における「未病の見守り拠点」として担う役割の拡大です。栃木県薬剤師会と栃木県歯科医師会が共同で作成した「口腔ケア用品継続購入者への受診勧奨ガイドライン」1は、薬局のカウンターでの小さな気づきが歯科受診へとつなげることができる好事例といえるでしょう。

薬局は住民にとって「困ったときに最初に相談する場所」であり、薬剤師は日常的な対話の中から健康状態の変化、さらには前回取り上げたオーラルフレイルの初期サインにもいち早く気づくことのできる専門職です。しかし、薬剤の嚥下困難、義歯の不適合、口腔乾燥、舌痛といった症状が、医科だけでなく歯科受診へつなぐべき重要なサインであることは、医療職を含め地域社会に十分浸透しているとはいえません。

これからの地域医療に求められるのは、以下に示すような双方向かつ継続的な連携体制の確立です。

・歯科 → 薬局:服薬照会・情報提供依頼
・薬局 → 歯科:受診勧奨・副作用情報のフィードバック
・医科・歯科・薬局・介護職間での情報共有ラインの構築

こうした多職種連携の質が、地域包括ケアシステムの成熟度を大きく左右する時代に入っています。

そのためには、薬剤師と歯科医師が互いの専門性を尊重しながら、住民に寄り添い、医療情報をていねいに共有することが求められます。その積み重ねが、地域の健康寿命の延伸へとつながると思っています。地域の薬局と歯科医院が「地域の健康の要」として機能する未来は、すでに現実のものとなりつつあります。

本連載が少しでも読者の皆様の生涯にわたって“口から食べ続けられる社会”を支える新たな一歩となることを願っています(了)。

参考文献
1.鹿村恵明、平田陽一郎、髙橋淳一、田中友和、若林守、大野克夫.オーラルケア商品の継続購入者に対する歯科受診勧奨ガイドラインの作成.薬局薬学.2025;17(2):176-184.



著者後藤 大

ごとう歯科医院院長(宮崎県宮崎市)

略歴
  • 神奈川歯科大学卒業
  • 日本歯科医師会災害時対策・警察歯科総合検討会議委員
  • 宮崎県歯科医師会 警察歯科及び災害時対策会議副委員長
  • 宮崎市郡歯科医師会地域歯科担当理事
  • 日本災害時公衆衛生歯科研究会(DPHD)世話人
  • 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士

  • 災害時の歯科医療支援体制や警察歯科活動の整備に携わるとともに、地域における口腔保健・嚥下リハの連携強化をつうじて、平時・有事をとおした歯科の社会的機能向上に取り組んでいる。
後藤 大

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