診断の質をより高め、治療の質を底上げする1冊 チェアサイドですぐ役立つ!撮影・読影テクニック パノラマ診断パーフェクトガイド
相宮秀俊・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 9,900円(本体9,000円+税10%)・128頁 評 者 牧草一人 (京都府・牧草歯科医院) 本書の著者・相宮先生とは、評者が主宰する歯周病およびインプラントの研修セミナーを受講いただいたことをきっかけに、10年以上にわたるお付き合いさせていただいている。当時の相宮先生は、開業のかたわら、義歯や咬合再構成など補綴分野を中心に幅広く研鑽を積まれたうえで、歯周病やインプラントを学ぶために評者のセミナーに参加された。そのため筆者が相宮先生に対して抱いている印象は、「良質な商品が豊富に揃った総合デパート」のような存在である(決して失礼な表現ではない)。すなわち、開業医の理想像とも言える「質の高い1人インターディシプリナリー」を実践できる、数少ない臨床家の1人である。本書を拝読し、その真髄が余すところなく詰め込まれた一書であるとあらためて感じた。 本書のテーマは、「パノラマ診断」というきわめてシンプルなワンイシューである。しかし、各CHAPTERでは多岐にわたる診療分野との関連性が整理されており、パノラマエックス線画像診断が歯科治療全体において重要な役割を担っていることを、読者は自然に理解できる構成となっている。 歯科医療に限らず、すべての医療行為の正当性は、適切に行われた検査結果に基づく診断を根拠として成り立つ。われわれ歯科医師が担う治療領域は、う蝕治療、歯内治療、歯周治療のみならず、智歯抜歯、インプラント治療、顎関節症治療、矯正治療など非常に広範であり、正確な診断が不可欠である。 評者の専門の歯周治療では、デンタルエックス線14枚法による診断が不可欠であり、インプラント治療ではCBCT画像による診断がすでに定着している。現在では、新規開業時からCBCTを導入する歯科医院が多いことも周知の事実である。 一方、診断における発想の出発点として、パノラマエックス線写真は現在においてもきわめて有用な診断ツールである。近年、若手歯科医師が症例の相談に際し、初めからCBCT画像を提示する場面が少なくないが、それだけでは患者の口腔内全体を俯瞰することは難しく、まずはパノラマエックス線写真、顔貌写真、口腔内写真から患者を総覧し、必要に応じて追加検査を行うことが診断の王道である。すなわち、パノラマエックス線写真による画像診断は、歯科医療における思考の起点と言える存在である。 本書は、歯学部生や研修医など臨床を開始したばかりの若手歯科医師にとって有用であるだけでなく、豊富な臨床経験を有するベテラン歯科医師や歯科衛生士にも、多くの示唆を与える内容であると考える。 「本書のはじめに」において相宮先生は、「診断こそが治療の質を決める」と先達の教えを紹介されている。その最初の入口がパノラマエックス線画像診断であるという思いが、本書全体を通じて明確に伝わってくる。私自身も、本書のコンセプトを肝に銘じ、日々の診療に向き合っていきたいと感じた次第である。
患者の思い描く理想の笑顔を現実として形にする際の 最良のガイドブック 審美歯科治療ガイド まえ歯の治療を受ける前に読む本
飯田吉郎・監著 吉木雄一朗/都築優治/鬼頭寛之・著 相宮秀俊/安藤壮吾/飯田真也/ 押村侑希/高田智史・症例提供 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 8,800円(本体8,000円+税10%)・96頁 評 者 南野卓也 (大阪府・Nao歯科・矯正歯科/大阪大学大学院歯学研究科再生歯科補綴学講座) 「先生にお任せします」。 カウンセリングでこの言葉を聞いたとき、諸先生方はどうお感じになるだろうか。信頼の証と受け取るか、それとも、まだ言葉にできていない何かがその奥に眠っているのではないかと、少し立ち止まるだろうか。 審美歯科治療の最大の難しさは、技術にはない。患者が「お任せします」と言うとき、その胸の中にはすでに理想の笑顔がある。ただ、それを伝える言葉を持っていないだけだ。そのイメージを引き出し、術者のゴールと重ね合わせる。審美歯科治療の本当の難しさは、実はそこにある。 本書『審美歯科治療ガイド まえ歯の治療を受ける前に読む本』は、まさにその橋渡しを担うために編まれた一冊である。 ここで、監著者の飯田吉郎先生とのご縁を少し記しておきたい。飯田先生と初めてお会いしたのは2025年5月、名古屋での勉強会にお招きいただいた際のことである。共著者の吉木雄一朗先生とともに前歯の審美修復について講演をご一緒した。飯田先生の厚い人望と、思わずほれぼれするようなダンディーなお人柄に触れるうち、気づけば名古屋に足を運ぶ機会が増えていた。 本書を初めて手にしたのは、2026年1月のGNDM第10回記念大会の場であった。吉木先生座長のもと「補綴修復のトレンドと未来像」をテーマにディスカッションを行い、名古屋の先生方のチームワークの良さに改めて感銘を受けたその日、この本と出会った。まさにそのチームワークが一冊に結実したような充実した症例の数々。そして、その頁をめくりながら、私は自身のカウンセリングの場面を何度も思い起こした。 「どんな歯にしたいですか?」と尋ねると、多くの患者が言葉に詰まる。理想はあるのに、それを伝える語彙がない。本書はそのギャップを埋めてくれる。主訴ごとに豊富な写真とともに治療の選択肢が整理されており、患者が自分の悩みと照らし合わせながら頁をめくることで、言葉にならなかったイメージが少しずつ輪郭を持ち始める。 さらに本書がすぐれているの、「きれいな歯にする」という表面的な説明にとどまらない点だ。歯の形態や色調だけでなく、表面性状や内部構造まで丁寧に解説されており、「なぜその材料なのか」、「なぜその設計なのか」という問いに患者と一緒に答えられる構成になっている。治療への理解が深まれば、信頼も深まる。接着修復から補綴まで現代の臨床を幅広く網羅した本書は、その好循環を自然に生み出してくれる。 審美歯科とは、単に歯を修復する医療ではない。患者が思い描く笑顔を、現実として形にする医療である。その過程で必要なのは、卓越した技術だけではない。「理解」と「共有」、そして「伝える力」である。本書は、審美歯科が本来持つその本質を、改めて深く認識させてくれる。臨床家のみならず、これから治療を受ける患者にとっても大きな価値を持つ本書を、自信を持って勧めたい。
当日やるべきこと、 やってはいけないことが簡潔! 明快に! 超速でわかる 外傷歯にやっていい治療、だめな治療 すぐやるべきこと、やってはいけないこととは
吉田憲明・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,600円(本体6,000円+税10%)・116頁 評 者 泉 英之 (滋賀県・泉歯科医院) 私は卒業して間もない頃、幸いにも月星光博先生に出会うことができた。月星先生には歯科医師として大切なことをすべて教わったが、なかでも外傷歯の知識と技術は、私の臨床においてなくてはならない宝となっている。 外傷歯治療を学ぶことの意義は、急患として来院される外傷歯の患者さんに対して、時間的猶予のないなかでも瞬時に正しい診断と治療方針を決定し、適切な処置を行えるようになることだけにとどまらない。外傷歯治療を通じて、エンドやペリオにおける創傷治癒の本質を深く理解できるのである。そうした意味で、外傷歯治療は一般臨床医にとって必要不可欠な知識と技術である。 しかしながら、残念なことに、外傷歯治療の正しい知識と技術が広く普及しているとは言いがたい。その理由はさまざまに考えられるが、外傷歯治療は日常的に行う処置ではないため、どうしても学びの優先順位が後回しになりがちになることも1つの理由であろう。本来であれば包括的に学ぶべきところ、一度学んだ後でも、いざという場面で細部を忘れてしまったり、判断に迷ったりすることは少なくないのではないだろうか。 そのようなときに心強い味方となるのが、吉田憲明先生が今回上梓された『超速でわかる 外傷歯にやっていい治療、だめな治療』である。本書は、外傷歯に関するあらゆるパターンを網羅しつつ、当日やるべきこと、やってはいけないことが簡潔かつ明快に整理されている。 本書の大きな特徴の1つは、冒頭に配置された鑑別診断のフローチャートである。さまざまな外傷の種類に対し、適切に鑑別診断できるようになっている。さらに、その後に必要となる治療方針やフォローアップの要点が、わずか見開き×3の早見表にまとめられている。急患対応で本当に困ったときには、このフローチャートと早見表だけでも、正しい診断と治療に近づけるだろう。 加えて、各外傷の種類ごとに、豊富なイラストと症例写真、そして詳細な解説によって、臨床で注意すべきポイントが丁寧に記されている。巻末には付録として、それぞれの外傷パターンに対応する早見表も収録されており、実際の臨床現場ですぐに答えに近づけるように徹底して配慮された構成となっている。 外傷歯治療に不安があるが、必要な情報を素早く把握し、目の前の患者さんに正しい治療を実践したいと願うすべての臨床家にとって、本書は手元に置いておきたい1冊である。この書籍が診療室にあるだけで、外傷歯の急患に対する安心感は格段に増すに違いない。 さらに願わくは、本書をきっかけとして、より多くの先生方が外傷歯治療に深く取り組んでくださることを期待したい。そして、日本全国で外傷歯の被害に遭われた患者さんのために、本書が広く貢献することを心から願っている。
口腔機能を診るなら、姿勢も呼吸も! 姿勢と呼吸 歯医者さんの知りたいところがまるわかり
今井一彰/柿崎陽介・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,500円(本体5,000円+税10%)・80頁 評 者 岡崎好秀 (国立モンゴル医学科学大学 小児歯科客員教授) 本書は、「あいうべ体操」を考案された、みらいクリニック(福岡市)の医師・今井一彰先生の『鼻呼吸 歯医者さんの知りたいところがまるわかり』 『睡眠と呼吸 歯医者さんの知りたいところがまるわかり』に続く第3弾である。先生は20年前より口呼吸の弊害にいち早く気づき、全国に発信し続けてきた。口腔機能発達不全症・口腔機能低下症が保険収載された背景には、その活躍が大きく影響したに違いない。 ところで、先生が当時より“一生自分の足で歩くため”に姿勢に注目して活動されてきたことを知る人は少ないだろう。体のバランス能力の低下は、高齢者では転倒につながり寝たきりのきっかけとなる。また小児期においても、転んでも手が出ず、前歯部の外傷の多発につながる。そこで、「ゆびのば体操」や「5本指ソックス(ゆびのばソックス)」の普及に努めて来られた。 しかも、本書の共著者は矯正・小児ひまわり歯科(宮崎市)の柿崎陽介先生である。先生は、院内に保育園を併設され、口腔機能のみならず、呼吸・姿勢も含めた健康な小児の育成を目指されてきた。姿勢と呼吸を語るのに、まさに最強のタッグを組んだといえる。 姿勢や呼吸の問題は、これまで歯科界では重要視されてこなかった。しかし姿勢は咬合と深く関係する。ヒトの体は、脊柱の上に頭蓋骨が乗り、そこに下顎がぶら下がる。姿勢が悪ければ、頭蓋や下顎が偏位するのは当然だ。それを考慮しなければ、歯並び・咬み合わせなど咬合治療が成り立たなくなる。 さて現在、乳歯列期の過蓋咬合や下顎後退位が目につく。これは、乳児期のハイハイや外遊びの減少による体幹筋の発達不足が考えられる。これに加え長時間のスマホ使用による前傾姿勢は、気道を狭窄させ酸素の供給不足につながる。 ヒトの脳の重量は、体重のわずか2%に満たないが、脳血流量は心拍出量の15%、全酸素消費量の20%を消費する。脳は3分呼吸停止すると、不可逆的なダメージを受けるといわれる。いかに脳にとって酸素の供給が重要かがわかる。これは歯科医師自身も気をつけなければならないことである。無理な診療姿勢により、胸部の圧迫で肋間筋や横隔膜が緊張し、胸郭の容積が減少する。すると呼吸が浅くなるばかりでなく循環血液量が低下し、呼吸器系・循環器系疾患の原因ともなりえる。 そこで本書では、姿勢と口呼吸、猫背の影響、ストレートネックと咬合との関係、さらには正しい姿勢を維持するための靴の選び方やインソール、5本指ソックスなどについても触れている。知らないことが山積みだ。しかも、それぞれ1~2ページにまとめられており入門書として最適である。 患者のためだけでなく、自分も含め、家族、スタッフなど身近な人の問題として知っておきたい内容だ。まさに、歯科界に姿勢と呼吸ブームの到来を予感させる1冊である。
リカバリーについて多角的に捉え、立て直しの視野を広げる実践的な一冊 別冊QDI インプラント治療のリカバリー ─審美・補綴・インプラント周囲炎─ オッセオインテグレイション・クリニカル・アカデミー・オブ・ジャパン 23rd ミーティング抄録集
金成雅彦・監修 松井徳雄/飯田吉郎/甘利佳之/岡田素平太/ 菊地康司/増田英人/村川達也/米澤大地・編集 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 6,820円(本体6,200円+税10%)・160頁 評 者 丸川恵理子 (東京科学大学大学院医歯学総合研究科口腔再生再建学分野/口腔インプラント科) オッセオインテグレイション・クリニカル・アカデミー・オブ・ジャパン(OJ)の23rdミーティング抄録集である本書『インプラント治療のリカバリー─審美・補綴・インプラント周囲炎─』は、インプラント治療に携わる者の誰もが直面する「リカバリー」という難しいテーマであったにもかかわらず、さすがの講師陣で実りある内容であった。インプラント治療が普及し、成熟期に入り、初回治療の成功率だけで語れなくなった現在、リカバリーの視点は不可欠である。本書は、インプラント治療の「失敗」そのものを論うのではなく、問題が顕在化した局面からいかに立て直し、機能と審美を両立させながら、長期安定へつなげるかを多角的に示す一冊である。 「リカバリー」の多くは単一の問題ではなく、相互に関連している審美・補綴・インプラント周囲炎を同時に再評価しなければならない。審美的不調和は軟組織や骨形態のみならず補綴設計、エマージェンスプロファイル、咬合付与、清掃性の設計不全と重なりやすい。周囲炎もまたプラークコントロール不良、清掃困難性、補綴装置の形態、マージン設定、接合様式、患者のリスク因子、メインテナンス体制など複数因子の相互作用として増悪する。とくに周囲炎を疑う局面では、臨床指標の評価と同時に、補綴形態と清掃性、過大な負荷の関与までを統合して管理目標を再設定する必要がある。 たとえば歯肉退縮の症例を追っていくと、周囲炎への対応を急ぐあまり補綴の設計思想が置き去りになり、清掃性や力のコントロールが改善されないまま再発をまねくこともある。したがって「リカバリー」は、再手術のことだけを指さず、補綴の形態を少し変える、接合方式やマージン設定を見直す、メインテナンスの頻度と評価項目の組み替えなどといった、比較的低侵襲な介入で転機を作れる場合も少なくない。 重要なのは、再治療を決断する以前に、何が問題か診断し直し、どこまでを許容可能な妥協とし、どの時点で介入するのかを明確にすることである。保存的対応から外科的介入、補綴的再設計、場合によっては撤去と再建まで、さまざまな選択肢を考慮しなければならず、患者のリスクと治療利益のバランスをふまえた意思決定が求められる。本書の利点は、そうした連鎖の起点を見落とさないための視点が、経験豊富な著者から有望な若手医師の臨床的提案に至るまで幅広く提示されている点にある。 治療過程や手術は典型的に「きれいな」報告も重要であるが、成功談よりも、問題が生じた後にどう立て直すか、どこで方針転換するかといった具体的な対処にこそ実務的価値がある。本書は、現場で迷ったときに、審美・補綴・炎症といった問題を多角的に捉え、次の一手を組み立て、立て直しの視野を広げる実践的な一冊であり、インプラントにかかわる歯科医師はもちろん、補綴およびメインテナンスに携わるスタッフと共有したい内容である。

















