永久歯に大きな齲窩があり、自発痛があれば抜髄の可能性が高い。 しかし、保護者が「子どもが痛がっています」と言っても、安易に抜髄をすべきでない。 まず、客観的に診断をすることが大切である。 例えば、乳歯にアブセス・打診痛・動揺がある場合は、炎症が根尖まで波及しており処置が必要だ。 それ以外は、まず疼痛を訴えた時期を聞く。 おやつの直後であれば、ショ糖の浸透圧による疼痛かもしれない。 また食事の直後であれば、食片圧入で痛んだ可能性がある。 そうであれば歯ブラシで除去すれば、痛みが治まるケースが多い。すなわち、疼痛を訴えた時、まず歯髄炎か食片圧入化を見分ける必要がある。 これを知らない頃、“痛い”と言われ、抜髄をして大泣きされ失敗したケースが多数あった。 食片圧入の場合でもサフォライド塗布を行うが、齲窩が大きい場合はハイボンド・カルボセメントで仮封する。 ちなみに、このセメントも銀の還元作用があるので効果的である。 サフォライドがすべてのケースに通用するとは思わないが、確実に抜髄のケースを減らせることができる。 では初診で、抜髄を行った場合は、以後の処置はどう進めれば良いだろう? そもそも乳歯齲蝕は、左右対称・上下対称に発生する。 従って片側が抜髄を行ったケースは、反対側も抜髄になる可能性が高い。 最初の根治が終了した頃には、反対側が痛み始めるかもしれない。 そこで抜髄の時、他の歯に症状が現れそうであれば、先にサフォライドを塗布し慢性化しておく。
こうしてサフォライドによる慢性化を行った歯科医師は、「これまで泣かしていた子どもが、泣かなくなった」・「歯科衛生士に2・3回 塗布をしてもらいながら、TBIで慣らせると上手にできるようになった。」・「硬くなるのでエキスカで簡単に取れ、充填も楽になった。」などの意見をいただいた。 急性齲蝕を慢性齲蝕にすれば、時間が稼げる分、泣かずに治療できる。 上手に使えば、術者やスタッフだけでなく、子どもも楽なるのである。
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!
- 岡崎先生ホームページ:
https://okazaki8020.sakura.ne.jp/ - 岡崎先生の記事のバックナンバー:
https://www3.dental-plaza.com/writer/y-okazaki/















