アライナー矯正治療「何から学べばよいか」問題の道標となる1冊! アライナー矯正歯科治療2 CLEAR ALIGNER TECHNIQUE
Sandra Khong Tai・著 長尾龍典/三林栄吾/森本太一朗・監訳 五十嵐一/中嶋 亮/松成淳一/山田邦彦・翻訳統括 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 27,500円(本体25,000+税10%)・300頁 評 者 尾島賢治 (東京都・本郷さくら矯正歯科) アライナー矯正治療の臨床導入を考える先生がたにとって、「何から学べばよいか」という問いはつねに切実である。本書はその問いに対する明確な道標となる1冊だ。 本書の核心は、アウトソーシング型アライナー矯正治療の基本を体系的に整理した点にある。症例の選択基準から装置の特性、治療計画の立案、そしてトラブル発生時のリカバリーに至るまで、臨床の流れに沿って詳解されている。特定のシステムに依存した内容にとどまらず、分析・診断・治療・リカバリーというアライナー矯正治療の普遍的な思考プロセスがていねいに記述されている点が本書の大きな強みである。 すでにEdition1をお持ちの先生がたにも、ぜひ本書を手に取っていただきたいと思う。アライナー矯正治療は時代とともに進化しており、各システムを提供する企業もたゆまぬ努力で装置や技術の改良を重ねている。しかしその恩恵を最大限に引き出せるかどうかは、使い手であるドクター側の知識と理解にかかっている。Edition2である本書では、進化したアライナーシステムを臨床に活かすための最新の視点が盛り込まれており、一度学んだ内容をアップデートする絶好の機会となるはずだ。 評者自身、2026年の米国矯正歯科学会(AAO)で講演する機会をいただき、その場でTai先生にお会いすることができた。Edition1からの進化について直接意見を交わし、互いの取り組みを称え合う貴重なひとときとなった。また以前には、Tai先生が私の医院を訪問してくださったご縁もあり、国境を越えた臨床・教育交流を積み重ねてきた間柄でもある。 近年、アライナー矯正治療は大きな転換期を迎えている。インハウスアライナーへの関心の高まりもそのひとつである。アライナー矯正臨床のありかたそのものが問い直されつつある今だからこそ、基本を体系的に学ぶことに意義があると評者は考える。ここで培われる分析力・診断力・コミュニケーション能力は、いかなる新しい技術や概念が登場してもそれを吸収し、応用するための根幹となる。新時代への備えは基礎の徹底から始まるのだ。 Tai先生は国際的な教育者としても精力的に活動されており、AAO2026年学術大会における講演には多くの人が参集し、その内容への関心の高さをあらためて示した。本書にはそうした豊かな国際経験と教育への真摯な姿勢が随所に反映されている。とりわけ、これからアライナー矯正治療を本格的に学ぼうとする若手の先生がたにとって、本書は実践的かつ本質的な指針となるだろう。テクニックの習得にとどまらず、臨床家としての思考の枠組みを整えてくれる内容は、長くそばに置いておきたい1冊である。アライナー矯正治療の「これまで」を深く理解することが、「これから」を切り開く力となる。本書はその確かな一歩を支えてくれると確信している。
拡大診療の基本と臨床のコツをわかりやすく学べる1冊! 歯科医師・歯科衛生士のための拡大診療 超入門 ルーペとマイクロスコープのテキストブック
辻本真規・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2275(営業部) 定価 9,680円(本体8,800円+税10%)・96頁 評 者 林 明賢 (神奈川県・北久里浜矯正歯科) 歯科診療において“見えること”は、単に視野が拡大するという意味に留まらない。細部が見えることで診断の精度は向上し、処置の質や再現性、さらには術者の思考そのものまで変化する。日常臨床において拡大視野下で診療を行うなかで、評者はマイクロスコープやルーペが診療の質を支える重要なパートナーであると実感している。そのようななか、本書を拝読する機会を得た。 評者が初めてルーペを導入したのは、大学院入局後、間もない頃であった。教授や指導医の先生方がルーペを装着して診療している姿に強い憧れを抱き、余裕のある状況ではなかったものの、思い切って6倍ルーペを購入した。使い始めた当初は違和感や戸惑いもあったが、次第に肉眼では気づかなかった細かな情報が見えるようになり、その魅力に引き込まれていった。気がつけば、ほぼすべての処置でルーペを使用するようになっていた。 その後、外勤先にマイクロスコープを導入している医院があり、「さらに高倍率で診療できれば、より質の高い治療につながるのではないか」と考えるようになった。そして、根管治療やコンポジットレジン修復を中心に、マイクロスコープを使用する機会が増えていった。 しかし、マイクロスコープはルーペとは異なっていた。眼幅や視度など調整すべき項目が多く、また頭を動かして術野を直接覗き込むことができないため、ミラーテクニックを習得して初めてスタートラインに立てるような感覚があった。勤務先でも指導を受けながら試行錯誤したが、やはり自己流で習得できるものではないと感じていた。そのようななか、辻本先生が開業後まもなく開始されたマイクロスコープのプライベートコースを受講する機会を得た。 本書は、辻本先生がプライベートコースや日本顕微鏡歯科学会認定医講習などで伝えられてきた内容を、わかりやすく整理した1冊である。また、本書の魅力は単に知識やテクニックを学べる点だけではない。日々の診療で、知らず知らずのうちに身についてしまった自身の癖や、誤って理解していた点に気づかされ、それらを修正するきっかけを与えてくれる点にも価値があると感じた。 さらに本書では、マイクロスコープだけではなくルーペについてもていねいに解説されており、ミラーテクニックの習得方法や、各処置における拡大診療のポイントまで幅広く網羅されている。単に機器の使用方法を説明するだけではなく、実際に導入する際につまずきやすい点や臨床上のコツにも触れられており、読み手に寄り添った構成となっている点も大きな魅力であると感じた。 評者自身も読み進めるなかで、あらためて基本の重要性を認識させられた。拡大診療をこれから始める先生方はもちろん、すでに日常診療に取り入れている先生方にとっても、自身の診療を見直すための指針となる1冊であり、長く手元に置いておきたい良書であると感じた。
外科主導になりがちなインプラント治療における補綴の重要性を再認識! デジタルインプラント補綴の真実 高精度スーパーインポーズモジュール「DUPY」が切り拓く次世代ワークフローとLongevity
山下恒彦・著 秋山和則/笹部雅大/一栁通宣・執筆協力 奥田裕太/片山 昇/瀧野裕行/寺本昌司/ 堀内克啓/牧野路生/安岡大志/山下貴史/ 米澤大地・症例提供 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 8,250円(本体7,500円+税10%)・104頁 評 者 堀内克啓 (奈良県・中谷歯科医院) 歯科界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、今や避けて通れない奔流である。材料、CAD/CAMソフト&ハードウェアの進化は目覚ましく、デジタルデンティストリーは新たな局面を迎えた。本書は、1996年から北米でデジタル技工の黎明期を支えてきた著者・山下恒彦氏が、その経験と知見を凝縮した一冊である。本書は単なる技術解説書にとどまらず、過去から現在に至るデジタルインプラント補綴の変遷を網羅し、未来への指針を示す「羅針盤」とも言える内容である。本書の根底に流れるのは、デジタルツールを駆使してもなお、インプラント補綴の最優先事項である「パッシブフィット」の獲得が未だに困難であるという著者の誠実な問題提起である。 そこで著者らは、デジタル機器の操作にとどまらず、データ整合性をいかに高めるかという「スーパーインポーズ(重ね合わせ)」の工程に着目した。従来のデジタルワークフローでは、IOSで採得した口腔内スキャンボディのデータ、口腔内に装着されているプロビジョナルレストレーション(以下、PVR)のデータと、口腔外で採得したPVR単体の3データの重ね合わせが手作業で行われることが多く、熟練度によって精度にばらつきがあった。それに対して、本書の「目玉」であるスーパーインポーズ専用モジュール「DUPY」はゾーンとしての立体認識により、自動かつ高速・高精度なデータ統合を可能とし、補綴装置の適合精度を飛躍的に向上させることができる世界初の製品として特許を取得した唯一無二のものである。これは、単なる作業の効率化ではなく、長期的な予後に直結する「補綴の質」を担保するための技術的ブレイクスルーであると言える。 しかし、現時点では多数歯や無歯顎症例の場合フルデジタルのみではパッシブフィットが得られないため、べリフィケーションジグおよびキャストを適正に併用してパッシブフィットを獲得する手法も詳細に解説している。超一流の歯科技工士ならではの鋭い視点は、バックヤードでの苦悩を知らない歯科医師にとって、成功の鍵を握る重要な教訓となるだろう。そして、複雑で精緻なデジタルインプラント補綴において、歯科医師と歯科技工士の「密な連携」が不可欠であることを強調しており、本書に掲載の評者の上下無歯顎症例(53~57ページ)の過程でもそれを実感した。 本書は、4Yジルコニアへの回帰という材料学的変遷から、ボーンアンカードブリッジのデザイン、そして最新のスーパーインポーズ技術まで、デジタルインプラント補綴の「バリエーション」と「真実」を余すことなく伝えている。外科主導になりがちなインプラント治療において、患者の満足につながる審美性・機能性・長期安定性(longevity)をもった「上部構造」の重要性を再認識させる一冊として、すべての歯科臨床家に強く推薦したい。
これが聞きたかった! 臨床家自身のために生まれた63の問いと答え 臨床家の疑問に専門家が答える これが正解! 歯科麻酔
城戸幹太/讃岐拓郎・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 5,280円(本体4,800円+税10%)・80頁 評 者 小城賢一 (北海道・オーラルセラピーデンタルオフィス、デンタルアロー代表取締役) 歯科麻酔学は、基礎医学、薬理学、全身管理、歯科臨床特有の判断が重なり合う、難しい領域だが、私たち歯科医師にとって局所麻酔は、日々の診療から切り離すことのできない、身近な医療行為でもある。 通常、歯科麻酔で大きな問題が生じることは多くないが、忘れた頃にふと“ざわつく瞬間”が訪れる。何本打っても患者から「まだ痛いです」といわれたときの焦り。また、高齢社会となった現在、循環器疾患を有する患者さんや多剤服用中の患者さんが来院され、「本当にアドレナリン含有の麻酔薬を選択してよいのか?」「何mLまでなら安全と考えてよいのか?」と内心で立ち止まる感覚。こうした経験は、臨床家であれば誰しも1度は持っているのではないだろうか。 そのようなとき、「少し教えてほしいのですが……」と気軽に相談できる歯科麻酔の専門家が身近にいれば、どれほど心強いだろう。本書はまさにそうした歯科医師の切実な思いに正面から応えた1冊である。 本書の最大の特徴は、出版を前提に企画されたものではない点だ。全国の歯科医師をつなぐオンラインプラットフォーム「OralStudio」の会員Dr.144名から寄せられた歯科麻酔に関する質問を分析し、そこから63の疑問を抽出。それらに対して、大学に籍を置く歯科麻酔の専門家が1つひとつ回答するという、GPとアカデミアの協働企画から生まれた書籍なのだ。 つまり本書は、著者や編集者が机上で想定した疑問への回答集ではなく、顔の見える臨床家から実際に発せられたリアルな問いに対し、専門家が真正面から向き合った問答集である。その意味で、本書には一般的なQ&A本とは異なる温度がある。まるで臨床現場と大学の専門家との間で交わされた、真剣な交換日記のような趣さえ感じられる。 回答は平易で読みやすいが、単なる経験則や感覚的な説明に流れることなく、エビデンスに基づいた整理が丁寧になされている。そこには、地域医療を支える臨床家と患者の双方を守るための知識を、過度に難しくせず、けれども誠実に届けようとする姿勢が感じられる。また視点を変えると、本書は“大学の知”を地域の臨床家を通じて社会還元・実装するためのエコシステムとしても重要な役割を担っているといえる。まさに双方向性の高いWebメディア、アカデミアとOralStudioとの関係性、そして書籍という普遍性の高い媒体が有機的に連携した結果、誕生した“新しい形の知の提供”ともいえるかもしれない。 本書が提供するのは、「読んで勉強になった」で終わる整った教科書的知識ではない。明日の臨床判断を少し安全にし、迷ったときの足場となってくれる実践的な答えである。歯科医師である限り、局所麻酔を行わない日はほとんどない。だからこそ本書は、若手からベテランまで、すべての臨床家の手元に置かれるべき1冊だと強く感じる。
















