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2019年7月のピックアップ書籍

2019年7月のピックアップ書籍
2019年7月のピックアップ書籍

『困ったぞ! こうなりたくない!トラブル事例に学ぶ歯科訪問診療』

超高齢社会の現在、地域包括ケアシステム、オーラルフレイルの予防等々、診療室のみならず、地域社会へ歯科医療が出ていかなければならない時代になってきている。各地域の歯科医師会でもこの状況への対応が行われてきているし、大学でも教育を充実させようという動きが出てきているが、実際の現場では、まだまだ手探りの状況が継続していて、いざ依頼があって訪問診療をするとなると、まず何をすればよいのか、何をしてはいけないかの判断に迷うことが多いのが現状である。このような状況で手助けとなるのは、経験豊富な先輩の情報を共有させていただくことである。とくに診療室と比べて訪問診療の場では、患者さんの状況、受診体制、材料、機材等々さまざまな部分で違いがあり、臨機応変な対応が求められるので、多くの情報を共有させていただくことが非常に重要になってくる。 このたび、クインテッセンス出版より『トラブル事例に学ぶ歯科訪問診療』という本が出版された。この本は、訪問診療に必要な歯科学的知識だけでなく、社会学的知識までもが網羅されている。本書の前半は、患者さんのところへ伺う前に必要な知識や準備の仕方や、他職種とどのように連携をしてどのように役立てていくか、さらには誤嚥等のトラブルを起こさないためにどうすればよいか等々が、事例をもとにとてもていねいに解説されている。そして、この事例の1つひとつが、著者の先生の実際の経験をもとに、それぞれのトラブルに対して、どう対応してどういう結果につながったのかが細かく書かれているので、実践的でとても参考になる。また後半は、訪問診療を行うにあたっての法的責任、医療安全論、医療事故についてなど、ついつい疎かになってしまいそうな、でも知らなければいけない知識が、弁護士も執筆されて、具体例とともに書かれている。熟読することによって、訪問診療に伺うにあたって、不安に感じている部分を確認できる。 訪問診療を行っていて、経験不足から不安に感じる部分がある先生、これから訪問診療を行おうと考えている先生、また、本書後半は、訪問診療のベテランの先生でも、再度確認しておくべきことが多く書かれているので参考になる。評者自身、訪問歯科を行ううえで大きな力になる1冊と感じた。 評者:田中五郎 (神奈川県・田中歯科医院) 浅野倉栄/足立 進/片山繁樹/ 柴垣博一/高田晴彦/中島 丘/ 宮本智行・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:4,800円(税別)

別冊the Quintessence 薬YEARBOOK’19/’20『歯科医師のための「薬」飲み合わせ完全マニュアル』

朝波惣一郎先生、王 宝禮先生、矢郷 香先生がご監修の『患者に聞かれても困らない! 歯科医師のための「薬」飲み合わせ完全マニュアル』が出版された。先発品だけでなく後発品(ジェネリック薬)の写真も含め、クインテッセンス出版らしくビジュアルに訴える形で、とてもきれいに仕上がっている。 タイトルにあるように、「薬剤の相互作用」を主体に書かれた本であるが、降圧薬、糖尿病治療、抗血栓薬などの作用機序や分類なども解説されていて、たいへん勉強になる。そして、歯科で使用頻度の高い抗菌薬、鎮痛薬だけでなく、抗真菌薬、抗ウイルス薬、さらには局所麻酔薬との相互作用が、「処方可」、「慎重を要する」、「減量、休薬など」、「併用禁忌/原則禁忌」の4段階に分類されて表に記載されている。内科から抗血栓薬の「イグザレルト」を処方されている患者さんが来院したときに、このマニュアルを参照すれば、歯科医院で処方するクラリスは「減量、休薬など」、ロキソニンは「慎重を要する」、フロリードは「併用禁忌」であり、サワシリンとカロナールは「処方可」であることがわかる。 歯科医院で処方する薬の表は、すべて同じ順で薬が並んでいるので、パラパラ漫画のようにめくってみると、たとえばサワシリンはほとんどの薬剤において「処方可」となっているが、「ワーファリン」と「メソトレキセート」は「慎重を要する」となっている、ということがわかる。さらに、ページとしては地味なのであるが、「患者への投薬の説明のポイント」も必読である。 以上のように、本書は歯科医師だけでなくスタッフも気軽に参照できるように歯科医院の受付などの本棚にぜひとも並べておきたい1冊である。薬に関する知識が豊富であると、患者さんからの信頼も厚くなる。 ただ、本書の守備範囲を超えることにも気をつけなければならない。各薬剤に関する情報の元となる添付文書でも同様であるが、AとBとの薬剤相互作用についての情報はあるが、AとBに、さらにCが加わったときのように、3種類以上の相互作用については不明なのである。ポリファーマシーの怖さの1つであり、歯科医院で処方する際には、なるべく相互作用の少ない薬を選択するのが現実的であろう。 評者:岸本裕充 (兵庫医科大学歯科口腔外科学講座) 朝波惣一郎/王 宝禮/矢郷 香・監修 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:5,500円(税別)

『一般歯科のDr・DHがともに取り組む矯正歯科治療ガイドブック』

少子高齢化にともない一般歯科医療において、できる限り多くの年齢層に治療を提供できるサービス力は重要である。歯周・保存的な治療だけでなく、インプラント等の補綴治療や矯正歯科治療といった、より専門的な知識を必要とするサービスを、自ら手掛けるかあるいは専門歯科医を雇い入れて行う先生も増えており、これらの治療にはスタッフ、とくに歯科衛生士の積極的な協力がなければ、総合的サービスを患者に提供しながら医院を経営することはできない。 一方で、自身で行っている治療内容に対して、専門医からの助言を必要としている先生も多いのではないだろうか。治療の問題点が整理できず、どのような解決手段があるのか、またどのような治療計画で将来にわたって患者を管理していくのかなどを患者にうまく説明できず、さらには専門医からのアドバイスを含めた積極的なコミュニケーションをとることもできずに、1人で四苦八苦している先生も多いのではないだろうか。 本書では豊富なカラー写真を用いて、一般歯科医が手掛けてきた矯正歯科治療を歯科医師と歯科衛生士の両方の立場からみた視点が記載されており、歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングやメインテナンスにおける注意点もていねいに記載されており、これまでに類をみない画期的な内容になっている。 さらに、本書は著者である矯正歯科専門医からの各治療に対する視点もアドバイス形式で、平易な言葉で記載されており、どのような症例を一般歯科医は手掛けるべきか、どのような装置を選択すべきかについて、明日の治療にすぐに応用できるヒントが満載になっている。これから矯正歯科治療を取り入れていきたい一般歯科医だけでなく、すでに矯正歯科医療に従事している歯科医師ならびに歯科衛生士のよい指南書として、自院の治療システムを見直すきっかけになると思われる。また、矯正歯科治療を手掛ける歯科医院等で働きたい歯科衛生士や学生たちにも、歯科衛生士の職業人としてのすばらしさが伝わるのではないだろうか。ぜひ一読することをお薦めしたい。 評者:八木孝和 (神戸常磐大学短期大学部口腔保健学科) 保田好隆/谷山隆一郎/谷山香織/ 保田広子・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:9,000円(税別)

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