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2019年8月のピックアップ書籍

2019/7/26 歯科NEWS

インプラントの迷信と真実

「迷信と真実」シリーズ、待望のインプラント版が出版された。かつて、歯科の出版業界では臨床医にとってとっつきにくいエビデンスものは売れない、という風潮があった。2012年に評者、小牧令二先生と当時の担当者で出版した『歯周病学の迷信と真実』では、多くのドグマに関して「一問一答、一話完結、わかりやすく、どこから読んでもよい」というコンセプトのもとに制作し、その風潮を打破したと自負している。この『インプラントの迷信と真実』も、基本的にそのときにつくったフォーマットを踏襲しつつさらに進化させており、「読みやすいエビデンスもの」として、とてもすぐれた内容となっている。全論文41編解説となっているが、歯周病版では取り上げなかったメタアナリスなども引用されているので、実際の情報量はそれ以上である。 ひと通り目を通した印象は「高度な教育を受けた臨床医が書いた本」ということである。歯周病版を出版したのちに、つぎに出そうなものがあるとすればインプラント版だと思っていたが、トピックや引用文献を想像すると、かなり難しい仕事になることを予想していた。たとえば、歯周治療の場合のように「スプリットマウスデザインによるRCT」のような比較的わかりやすい研究よりも、多変量解析を駆使した観察研究などが多く、相当トレーニングされた歯科医師でなければ解釈不可能である。その点、さすがと思わせる切れ味で解説されている。また、歯周病版のなかで取り上げたトピックと重複しているところも、最新の論文を取り上げたうえで新たな解釈がなされていて必読である。その他、プラットフォームスイッチング、抜歯窩即時埋入、インプラント周囲炎の治療などの臨床医が抱く疑問に対して、内容のある解説がなされており、評者自身も大変勉強になった。そして著者らが「インプラント至上主義」的な立ち位置でないところにもとても共感がもてた。 本編もさることながら、「はじめに」、「あとがき」、そして各章の最後にあるコラムは、この本の隠れた見所である。中居先生による「論文いつ読むの?」は、同じように感じていたところがあり、ニヤッとさせられたし、大月先生による「イエテボリVSイエテボリ」も、インプラント周囲炎の本質にかかわる話で非常に興味深い。インプラントにかかわるすべての歯科医療従事者が読むべき1冊である。 評者:関野 愉 (日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座) 中居伸行/大月基弘・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,800円(税別)

歯内療法に生かす根管解剖

わが国のエンド治療の成功率はどれくらいであろうか?おそらく今でもそれほど高くはないように思われる。コーンビームCT、歯科用顕微鏡、電気的根管長測定器、Ni-Ti製ファイル、根管拡大用ハンドモーター、根管充填剤(材)、超音波拡大装置など、いわゆるエンドの革新的器材、手法の進展はすさまじいが、これらを適切に臨床に反映させるための設備投資、技術習得、研鑽には大きな支出が必要とされる。そして、これらを保険制度のなかで適切に具現化することへの矛盾を感じている開業医は少なくないはずである。しかし、仮に上記の革新的器材や技術をすべて習得したとしてもエンド治療の成功率がただちに高くなることはないかもしれない。理由の1つは、複雑な根管形態にあるように思われる。 このたび、吉岡隆知氏による『歯内療法に生かす根管解剖』がクインテッセンス出版から出版された。2018年に『ザ・クインテッセンス』誌で1年間連載された内容をベースに、根管形態について透明標本と文献を中心に、また実際のエンド治療におけるCBCTの臨床例と比較しながら、根管の複雑さやそれらが治療結果にどのような影響を及ぼすかについてわかりやすく解説されている。特筆すべきは、「第1章 根管形態研究の歴史」の総括である。根管形態の複雑さの解明に挑んだ先人の功績をまとめているが、ある種根管形態学へのロマンを感じる。また、第2章の「根管解剖の総論」も含め、根管形態の分類(あるいは解剖)が総括的に解説されていることもうれしい。根管形態の特徴は、各歯種(上顎前歯、上顎小臼歯、下顎大臼歯など)別に解説されているので、臨床で難治症例などの問題が生じたときに、解剖学的にどこに問題があるかを考察するのに役立つ。もちろん日頃から歯種別に根管形態の特徴を把握しておけば、術前診断としてのCBCT像をより理解でき、根管の見落としなどを減らすことができよう。 なにはともあれ、エンド治療の最初の成功の入り口は根管形態の把握にあるようだ。この本は、わが国の根管解剖学の最新の成書である。 評者:月星光博 (愛知県・月星歯科クリニック) 吉岡隆知・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:14,000円(税別)

プリアジャステッドアプライアンスの治療とモニタリング

元奥羽大学歯学部歯科矯正学講座教授の氷室利彦先生による『プリアジャステッドアプライアンスの治療とモニタリング─不正咬合の解決策を思考する─』が出版された。著者は大学に所属されていたときからRichard P McLaughlin、John C Bennettらが進めていたプリアジャステッドアプライアンス(以下、PA法と略)の治療システムに興味をもたれており、本法を取り入れながら関連の臨床研究も行っていた。 この本の内容は「Chapter1:わたしの考え方(PA法に対する著者の解釈)」、「Chapter2:プリアジャステッドアプライアンスを理解する(PA法の歴史と特徴)」、「Chapter3:プリアジャステッドアプライアンスの基本(PA法のメカニクス)」、「Chapter4:診断と治療計画(著者による治療アルゴリズムの提案、Dental VTOの説明)」、「Chapter5:治療を管理する(著者はコンピュータにも精通していて、OrthoPicsという写真管理クラウドサービスを使った治療記録管理法を紹介している)」であり、ソフトカバーで手に取りやすく、矯正歯科に興味のある先生にはお薦めしたい好著である。 評者:古賀正忠 (東京都・古賀矯正歯科クリニック) 氷室利彦・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:11,000円(税別)