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現役歯科医師に聞く!ブラッシング指導(TBI)とは?

現役歯科医師に聞く!ブラッシング指導(TBI)とは?
現役歯科医師に聞く!ブラッシング指導(TBI)とは?
『ブラッシング指導(TBI)』と聞くと、歯科衛生士の仕事というイメージが強いですよね。
「衛生士さんに任せておけばいいや・・・」とお考えの歯科医師の方々もいらっしゃるかもしれませんが、医院に勤めてくれている衛生士さんにTBIの業務を任せるにあたって、まずは医師自身がしっかりとした指導ができる状態でなければなりません。

この記事では、現役の歯科医師である赤松佑莉奈医師の指導のもと、基本的なTBIの流れについて確認していきます。歯科医師・歯科衛生士のみなさんや、歯科助手のみなさんも参考にしてみて下さい。

1.ブラッシング指導(TBI)とは?

ブラッシング指導(TBI)とは、歯垢(プラーク・細菌)の除去を目的として、適切な歯磨き方法を歯科医師・歯科衛生士などの専門家が指導することです。 ※TBI=Tooth Brushing Instruction 健康な歯を保つためには、患者自身が日々のセルフケアを行い、しっかりと歯垢を落とすことが大切です。加えて、日々のセルフケアだけでは対応しきれない歯周ポケットや歯の隙間の歯垢・歯石の除去を歯科医院で行うことにより、細菌の少ない口内環境を保ち、お手入れしやすい状態にすることが可能となるのです。齲蝕や歯周病など歯科の疾患は、歯垢が原因で引き起こされてしまいます。口内の細菌の数が多すぎるか、免疫力が落ちて細菌に負けてしまうことにより、これらの疾患が発症します。免疫力を高めることは容易ではありませんが、患者自身が日々のブラッシング方法を工夫することによって、細菌の数を減らすこと=プラークコントロールができます。歯科医院では、歯科の疾患の治療および予防のために、適切な歯磨剤・歯ブラシの選択や正しい歯磨き方法を患者さんへアドバイスする必要があります。

2.ブラッシング指導(TBI)を行う前にすべきこと

筆者 「それではここからは、ブラッシング指導について現役歯科医師である赤松佑莉奈先生に詳しく伺っていきたいと思います。」 赤松佑莉奈先生(以下、赤松) 「よろしくお願いします!」 医師プロフィール 筆者 「ブラッシング指導を行うにあたって大切なことは何ですか?」 赤松 「ブラッシング指導内容以前に、まずは問診および口腔内診査を行うことが重要です。」 筆者 「患者さんの状態や症状を事前に把握しておかなければならないということですね。」 赤松 「その通りです。それぞれの患者さんのライフスタイルや口腔内の状態に合わせた適切な指導をするために、これらの事前準備は必要不可欠です。」

2-1. 情報収集(問診)

赤松 「まずは、患者さんへの問診を通して情報収集を行なっていきましょう。」 ≪問診での質問内容の例≫ ・ブラッシングはいつ行っているか? ・1回のブラッシング時間は? ・歯磨剤は何を使っているか? ・どのようにして磨いているか?磨き方は? ・歯ブラシの種類は? ・歯ブラシ以外に使用しているものは?(フロス、糸ようじ等) ・年齢は? ・喫煙しているか? ・間食は1日何回しているか?何を摂取しているか? ・これまでにTBIを受けたことがあるか?

2-2.口腔内診査

赤松 「続いて、口腔内の状態を診査します。」 ≪口腔内診査でのチェック項目の例≫ ・齲蝕の有無 ・歯周病の有無 ・補綴物の有無 ・不正咬合の有無 ・歯肉の状態 ・くさび状欠損の有無 ・歯の色 ・口腔清掃状態 ・唾液の性状 ・口臭の有無 など 赤松 「これらの問診、口腔内診査をしっかり行った後は、患者さんの希望や気になっていることを聴取します。」 筆者 「患者さんに合わせたブラッシング指導を行うには、これらの事前準備が大事なんですね!」

3.患者別のブラッシング指導(TBI)事例

赤松 「問診や口腔内診査が終わったら、いよいよブラッシング指導に移ります。 」 筆者 「ブラッシング指導では、実際どんなことに気をつければいいのでしょうか?」 赤松 「患者さんの特徴ごとに指導方法を工夫する必要がありますね。いくつか例を挙げて説明します!」

3-1.ケース①齲蝕(うしょく)の多い患者さん

筆者 「齲蝕というのは、一般的に虫歯と呼ばれている歯科の疾患ですよね。」 赤松 「はい。齲蝕の患者さんはとても多くて、歯周病と並ぶ二大疾患のひとつなんです。」 「もともと齲蝕活動性の高い患者さんの可能性もありますが、齲蝕が多い患者さんの場合は、ブラッシングのタイミングや使用している歯磨剤は適切かどうか確認しましょう。」 筆者 「なるほど。具体的にはどのように指導されるのですか?」 赤松 「朝昼晩の食後や就寝前に、フッ素入りの歯磨剤を使って磨いていただくように指導します。」 「特に就寝中に口腔内細菌は一気に増殖するので、就寝前の歯磨きは必ずするように指導します。」

≪おすすめの歯磨剤≫

Check-Up standard

Check-Up gel ミント

Check-Up rootcare

3-2.ケース②歯周病の患者さん

筆者 「歯周病も齲蝕と同じくらい患者さんの数が多い病気ですよね。」 赤松 「そうですね。歯周病の患者さんの場合、動揺歯があって歯が磨きにくい場合もありますが、歯周ポケットに歯ブラシが行き届くように歯ブラシを当てることが大切です。」 筆者 「どんな磨き方がいいのですか?」 赤松 「一般的にはバス法をおすすめします。歯と歯茎の間に45°の角度で歯ブラシを当てる磨き方です。」 筆者 「歯茎をマッサージするように磨くと効果的なんですね。」

≪おすすめの歯磨剤≫

■歯周病リスクが高いが症状はない場合

Systema薬用 デンタルリンス

Systema SP-Tメディカルガ-グル

Systema薬用歯間ジェル

Systema Dentalpaste α

■歯肉の炎症や退縮が認められる場合

Systema SP-T ジェル

Systema Haguki Plus PRO

3-3.ケース③不正咬合がある患者さん

筆者 「噛み合わせや歯並びの状態がよくない、不正咬合の患者さんの場合はどうでしょうか。」 赤松 「不正咬合がある患者さんの場合、特に叢生があると、歯ブラシが行き届きにくい可能性が高いです。」 「叢生は人によって叢生部位等が異なるので、それぞれの患者さんの歯列に合わせた指導が必要です。」 筆者 「この患者さんの場合、歯ブラシ選びがポイントとなるのではないですか?」 赤松 「そうなんです!下顎の智歯が一部萌出していて歯ブラシの先が届きにくい場合と同様に、一般の歯ブラシが行き届きにくい部位はワンタフトブラシの使用を勧めます。」

EX onetuft(ワンタフト) systema

3-4.ケース④くさび状欠損がある患者さん

赤松 「くさび状欠損とは、歯と歯茎の間にできるエナメル質の欠損のことです。」 筆者 「この症状が起こる原因は何なのですか?」 赤松 「歯ぎしりや歯の食いしばり、または誤った歯磨き方法や歯磨剤を使用していることなどが原因ですね。」 「くさび状欠損がある場合は、歯肉退縮による根面露出のため、根面齲蝕や知覚過敏のリスクが高くなります。」 「ですので、まずは適正なブラッシング圧と歯ブラシの持ち方を指導します。」 筆者 「歯磨剤が原因でエナメル質が削れてしまうこともあるのが驚きです!」 赤松 「歯磨剤に含まれている研磨剤は、歯質を削り知覚過敏を促進するリスクもあるんです。」 「特にくさび状欠損のある患者さんには研磨剤無配合の歯磨剤をお勧めしています。」

Systemaセンシティブ softpaste

Check-Up rootcare

3-5.ケース⑤清掃状態が悪くうまく磨けない患者さん

筆者 「歯磨きの仕方が下手だと、歯垢がたまってしまいますよね。私も歯医者さんで注意されたことがあります・・・」 赤松 「歯垢が溜まると歯科疾患にかかりやすくなってしまいますから・・・。うまく磨けない患者さんには、まずは正しいブラッシング方法を指導します。」 筆者 「正しい歯磨きなどでお口の歯垢・細菌を減らすことをプラークコントロールと呼ぶんですよね。」 赤松 「その通りです。筋力の低下などが原因でプラークコントロールが低下している場合は、まず電動歯ブラシの使用に切り替え、洗口剤の使用を促し、異なる手段でプラークコントロールを向上させることが大切です。」

≪おすすめの電動歯ブラシ≫

「歯科用音波式電動歯ブラシ ソニッケアー」

まとめ

ブラッシングは歯の状態や治療状況にも大きな影響を与えます。 そのため、それぞれの患者さんに合わせたブラッシング指導を行うことが大切です。 歯科医院では、ブラッシング指導を歯科衛生士が担当することが多いですが、歯科医師自身もブラッシング指導の方法や重要性を理解しておきましょう。 この記事が参考になれば幸いです。

著者赤松佑莉奈

歯科医師

■経歴
神戸女学院高等学部卒業
大阪歯科大学歯学部卒業
和歌山県立医科大学附属病院 歯科口腔外科 臨床研修終了
■現在
赤松歯科医院 勤務
和歌山県立医科大学附属病院 歯科口腔外科 非常勤医師
■所属学会
日本口腔外科学会
赤松佑莉奈

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