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「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 6
研究プロジェクト秘話

2019/10/9 デンタル〇〇デザイン

Vol. 1でお話したように、私はPhD課程を卒業した後も永遠にアイルランドに残りたいと思って、the International Association for Dental Research(IADR)の研究助成金(75,000米ドル)に申し込むことにしました。それはそれは真剣に、知力の全てを振り絞って考えました。スウェーデンで学んだカリオロジーと日本の企業から学んだカスタマー・エンゲージメント、これらを愛するアイルランドで応用するという、自分にしかない色を出して申請書を書いたところ、世界中から24の申請があった中で、私たちの研究プロジェクトが選ばれました。そして、2014年から3年間、この研究プロジェクトのために昼夜を問わず仕事をしました。


<IADRの研究助成金のプレート>

プロジェクトが完了し、ようやく論文の下書きが終わった2017年5月、少し整合性が取れないデータが見つかりました。それを辿っていくと、被験者の携帯電話に教育メッセージを送る介入の記録に信じられないくらいたくさんのミスが見つかりました。その後、本当はそれ以上のミスがあり、大部分がメッセージを送る担当だったプログラマーによって捏造、改竄されていたことがわかりました。物語はこれで終わらず、さらに、プロジェクトチームや私の指導教授らが何とかしてこれを小さく収めるように、指導者の責任問題にならないように、私を密室で何時間も説得したり、私のPhD論文中の事実を書き換えるようなこともされました。


<完成したPhD論文>

ここでは詳細を省きますが、結局、そういった根回しや操作で、誰も責任を取ることなく、この科学不正事件は幕を下ろしました。表向き、中立な立場で科学不正を調査する大学の科学公正官も、私の指導教授の部下にあたり、一番責任が重いはずのプログラマーの監督者と、私の指導教授は家族ぐるみの付き合いがあります。小さな嘘を一つ一つ洗っていけば、矛盾が綻んでくるものですが、細かなことは誰もつつかないのです。「そのプログラマーは、どこかでもっと大きなミスをするだろうから、ここで罰しなくてもいい」と窘められることもありました。


<PhD論文を提出する場所へ通ずる階段>

ということは、アイルランドで仕事をする以上、同じ失敗が繰り返されるリスクは拭えないわけです。少なくとも、このプロジェクトチームと指導教授らとはこれ以上一緒に仕事はできません。PhD論文に嘘を書けるのですから、彼らの書いた他の論文類も、都合の良いように書いている可能性があります。私は、こうしてアイルランドを去る決意を固めました。


<田舎の夕暮れ>

次回に続く