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「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 7 どこの国も一長一短

「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 7  どこの国も一長一短
「ヨーロッパの果て、アイルランドに住んでみて」Vol. 7 どこの国も一長一短
心血注いで取り組んだ研究プロジェクトが、思わぬ結果に終わり当分の間、信じられるのは赤ちゃんと犬だけという時期が続きました。しかし、アイルランド人が信じられる人たちであるべきだとするのは、私の勝手な押し付けでもあります。一緒にいると楽しい気持ちにさせてくれるコミュニケーション上手、物事をスムーズに進めてくれるロビー活動上手、細かいことを気にしない寛容さ。これらの裏を返せば、責任感がなかったり、臭い物には蓋をしたり、間違いを有耶無耶にしたりということも十分にあり得るのですね。


<傷ついた心を癒やしてくれたマルチーズ>

スウェーデンの恩師の故ダグラス・ブラタール先生が、「人は誰でも汚いところを持っている」と私に言われたことが、思い返されました。アイルランド人だって例外ではありません。一方、窮屈に感じて夢の場所を探して出た日本の短所も、見方を変えれば、決まりを守る確実さ、細かいところまで気を配る綿密さ、迅速で丁寧な対応、という共同で仕事をするにはこの上ない長所へ様変わりすることに、今更ながら痛感しました。13年間もアイルランドに住んだ結果が、メーテルリンクの青い鳥のように、自分の身近を見つめ直すというありきたりの結末になってしまいましたが、これが真実なのでしょうか。


<ヤギを売りながら、そのミルクを飲む人>

アイルランドを去る時、あの私を虜にした結婚式にも参加していた友人たちが、パブで秘密のお別れ会をしてくれました。前々から「また3ヶ月後のクリスマスに来るから、お別れ会は絶対にしないで」ときつく頼んでいたので、まさかと思って普段と同じようにパブで談笑していると、照明が消え、奥から歌と共にゆらゆらと灯のともったケーキが運ばれてきました。そのお別れの日、朝から子どもを含めて全ての人がアカデミー賞ものの名優で、私はすっかり騙されました。


<パブの奥から出てきた Safe Trip Home ケーキ>

そして、次の日、出発の朝には「Makiko」と書いたカードとアクセサリーの入った紙袋が、泊めていただいていたお家の静まり返った食卓に、ひっそり置かれていました。最後まで心憎い演出に、キュンとなりながらコークの自宅に戻ったのでした。アクセサリーは「タラのブローチ」という8世紀頃のケルトの宝物を模したもので、「アイルランドの思い出に」と選んでくれたそうです。講演など大切な時に胸につけています。13年間の幸せな出来事と苦い経験を思い出しながら。


<タラのブローチの写真が使われたアイルランド国立博物館の看板>

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著者西 真紀子

NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
  • 2018年 同大学院修了 PhD 取得

西 真紀子

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