Dental Life Design

あなたのデンタルライフを彩るメディア

2019年12月のピックアップ書籍

2019/11/29 歯科NEWS

薬を飲んでいる患者への歯科治療─抜歯、インプラント治療を中心に

評者の診療室では、開業当初より主に歯周病患者をみてきた関係上、中高年で有病者の患者が他院よりも多かった。さらに、現在開業して40年目になり、以前は健康であった患者も全身的な疾患やそのための服薬が増えている。とくに、骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネート製剤等)を服用している患者に多々遭遇するようになってきた。抜歯やインプラント治療とビスフォスフォネート製剤関連顎骨壊死(BRONJ)について注意喚起するようになったのは評者の記憶に新しい。 さて、本書の著者である髙橋哲教授は、九州歯科大学の口腔外科教授就任前より今日までずっとお付き合いさせていただいており、口腔外科医としての臨床の素晴らしさはもちろんのこと、その関連医学知識の豊富さには敬服するものがある。 本書では歯科医師が歯科治療において最低限理解しておかなければならない医学知識として、ステロイド剤、抗血栓薬、骨吸収抑制薬を服用している患者、そして糖尿病、高血圧症、がん化学療法、虚血性心疾患および心臓弁膜症や感染性心内膜炎のある患者についてフォーカスが当てられている。ステロイド剤を服用している患者の章では、実際にインプラント治療を行った実例が写真付きで示され、その対応や材料も記載されている。抗血栓薬を服用している患者の章では、止血材と使用法が写真付きで解説されている。骨吸収抑制薬を服用している患者の章では、顎骨壊死が起きた患者の状態を写真付きで解説され、実際に抜歯および腐骨除去を行った症例について解説されている。また、他の各章にも実際の症例を用いながら解説されており、各章の終わりにポイントが箇条書きでまとめられているのもありがたい。 評者の診療室にも全身疾患と歯科治療に関する書籍は何冊もおいているが、これだけの情報をここまでコンパクトに、しかも実例を用いてまとめられた本はなく、この分野に関しては一般開業歯科医がもっとも読みやすく、すぐにためになる本であると思われる。歯科医師は全身疾患や薬剤に関して「知らなかった」では済まされない状況になってきており、歯科治療にかかわるすべてのスタッフにぜひ手にとってもらいたい1冊である。 評者:船越栄次 (福岡県・船越歯科歯周病研究所) 髙橋 哲・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:7,000円(税別)

TMD YEARBOOK 2019/2020 顎関節症の三大症状、その検査・診断・治療をやさしく教えます

このたび、顎関節症のプロフェッショナルの先生方が、『TMD YEARBOOK 2019/2020─顎関節症の三大症状、その検査・診断・治療をやさしく教えます』を編纂された。 顎関節症は、歯科医師にとってまだ敷居が高い。その理由の1つは、症状が"口腔内"ではなく、"口腔外"にあることであろう。また、鑑別診断の難しさや心理的な要因も問題になる。しかし、歯科医師が自他ともに"口・アゴ・顔の専門家"となるためには、う蝕と歯周病に続く"第三の歯科疾患"である顎関節症をどうしても押さえておく必要がある。 本書は、顎関節症の患者が来院した際に、一般の歯科医師がどのように対応したらよいか、すなわち、"何を聞いて(問診)、何をするか(検査)を説明して、どのように症状の原因や治療法を説明するか"を懇切ていねいに解説している。 さて、どんなにすぐれた論文や書籍でも、人に伝わらなくては意味がない、論文は限られた専門家だけが理解できればよいのかもしれない。しかし、専門家でない多くの歯科医師に読んで理解して利用してもらうこと、さらに、歯科医師の考えや行動を変えてもらうためには、難しいことは極力省いて、上記の目的達成のために、そぎ落とした本にする必要がある。本書は、見事にそれに成功している。著者陣は、評者が尊敬する大学の先生方であり、現在も共同で仕事をさせていただいたり、また、過去に一緒に講演等をした先生方でもある。評者はこれまで、大学の先生は普段から難解な研究や講義をしているので、開業医が理解しやすく、実用的な本をつくることは難しいのではないかと密かに思っていた。しかし、本書は見事にその考えを覆した。ぜひ、顎関節症の入門書、実用書として推薦したい。 最後に、顎関節症をみるうえで大切なことは、先に述べた鑑別診断である。まず患者は"顎関節症か、別の病気か、あるいは併存か"を見極めることである。そして、顎関節症の患者は心身両面からみる必要がある。読者が本書を契機に患者をみていくと、おそらく慢性の痛みや咬合の異常感などを訴える難しい患者に遭遇するであろう。さらに深く学びたい先生は、日本顎関節学会のHPの情報や類書も利用していただきたい。 評者:和気裕之 (神奈川県・みどり小児歯科,前日本顎関節学会副理事長) 古谷野 潔/小見山 道/ 馬場一美/矢谷博文/ 和嶋浩一・編著 飯田 崇/西山 暁・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,400円(税別)

装置に頼らない子どもの咬み合わせ治療─MFTを応用した咬合育成の実践

近年、口腔機能発達不全症が保険導入され、MFT(口腔筋機能療法)が脚光を浴びるようになってきた。一方で、MFTに関する情報はまだ少なく、子どもの成長と口腔機能の発達について系統だった知識がないのが現状である。出生から安定した永久歯列が完成するまで、口腔内とその周囲はつねに変化し続ける。各成長ステージにおいて正常な発育や機能とはどういうことかを認識して、発育が遅れたり、間違った習癖を身につけてしまったりした場合には、早期に気づき、原因を除去し、MFTで正常な状態に戻すことが非常に重要である。このたび出版された『装置に頼らない子どもの咬み合わせ治療』は、前著『症例から学ぶはじめての咬合育成』を踏襲しつつ、口腔機能の診査とトレーニング方法がより詳細に追加されており、髙田泰先生の45年以上に及ぶ臨床経験に裏づけられたMFTの知識と症例が惜しげもなく公開されている。 PARTⅠではまず実践前に知っておくべきこととして、MFTによる咬合育成の考え方、現在の成長力を知るための8つの項目、0歳から12歳までに至る治療の流れの図解では咬合育成の流れが詳しく示されており、その概略が理解しやすい。つぎに診査項目であるが、驚くべきはその多さで、姿勢や食生活、病気、習癖のチェック、咬合力、舌や口唇の形態などなど、非常に多岐にわたっており、悪い兆候を見逃さないという著者の姿勢を強く感じさせる。また舌や口唇等の形態的分類、検査結果の分析法、各不正咬合の筋機能と日常生活習慣のまとめは他に例をみない内容となっている。これほどまでの診査をMFTのために行い、系統立ててまとめた先生が今までにいただろうか。その他、咬合育成検査用紙、筋機能訓練のわかりやすいイラストなど、とても内容は充実しており、MFTを応用した子どもの咬み合わせ治療をわかりやすく勉強できる構成となっている。 PARTⅡでは装置に頼らずに治療を行った7症例が紹介されている。いずれも2年から11年の長期症例ばかりであり、豊富な口腔内写真やセファロ分析と相まってMFTを応用した咬合育成とはどういうものかを強く実感できるものになっている。とくに顎骨内で永久歯胚の向きの改善、長期症例での子どものモチベーションの低下などにも言及されているところはとても興味深い。装置を用いずここまで治療できることには驚きである。珠玉の1冊である。 評者:井上 亮 (大阪府・まこと歯科医院) 髙田 泰・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:9,000円(税別)