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年始に思う低フォスファターゼ症のこと

年始に思う低フォスファターゼ症のこと
年始に思う低フォスファターゼ症のこと
全身疾患や生活の異常を示す兆候が口腔内にいち早く現れることが多くあります。それを、私は「歯は炭鉱のカナリア」と言っています。炭鉱のカナリアとは、昔、炭鉱労働者がカナリアをかごに入れて坑道に入り、カナリアがさえずりを止めることで、有毒ガスの検知に使っていたことから、危険を知らせる前兆を示す比喩表現です。その一つの例が乳歯の早期脱落です。


<乳歯が脱落したところの子ども>

4歳までに乳歯が脱落すると、難病に指定されている低フォスファターゼ症が疑われるそうです。一般の親御さんたちは、乳歯は生え替わるものだと知っているので、4歳未満であっても、まさか重要な病気が潜んでいるとは思わず、見過ごされることが多いようです。しかし、この時点で察知して治療を始めると、重症化を防ぐことができます。その子の人生が大きく左右されるのです。


<乳歯の脱落、子犬ですが。。。>

さて、「カナリア」である歯が黙って教えてくれていることを、どうやって気づいてもらえばいいのか。地道な啓発活動しかないのかもしれません。母子手帳に情報を入れてもらったり、メディアで知らせてもらったり、歯科医師が小児科の医師と連携を取ったり。私たちNPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)でも、啓発活動に取り組んでいます。


<低フォスファターゼ症の情報を載せている母子手帳>

この疾患一つをとっても、歯が全身の状態といかに深く結びつき、早い段階で重要なメッセージを送ってくれていることに気付かされます。Health for All(すべての人々に健康を)という究極の目標を達成するために、歯科の役割は計り知れません。齲蝕と歯周病の治療に隠れて、それ以上に多くの仕事を抱えているのだと思います。様々な病気から人々を守るゲートキーパーとして。


<歯の神様として崇められている白山(歯苦散)神社にて、新年のご挨拶を申し上げます。>

著者西 真紀子

NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー

略歴
  • 1996年 大阪大学歯学部卒業
  •     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
  • 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
  • 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
  • 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
  • 2018年 同大学院修了 PhD 取得

西 真紀子

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