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2020年1月のピックアップ書籍

2019/12/26 歯科NEWS

別冊the Quintessence
『臨床家のための矯正 YEARBOOK 2019 成長期の反対咬合を考える』

本書のテーマ「成長期の反対咬合を考える」は本シリーズの既刊テーマ「開咬」(2018年)と並んで、臨床家にとって難しいトピックといえよう。この書評を書いている筆者自身、骨格性反対咬合で小学校低学年の頃からチンキャップを数年使用したものの、中学に入ってから治療を中断し、結局は成人してから外科矯正を受けた経験があり、反対咬合の治療がひと筋縄ではないことを知っている。 反対咬合を有する患児は、みた目のコンプレックスからある程度の年齢になると心理面への影響も大きいことがあり、いじめの対象となることがある。術者は保護者や患児への配慮もあり、早期治療を行うこともあるが、その効果は一時的なことも多く、治療自体が長期化し、患児や保護者が治療に対して燃え尽きてしまうことがある。とくに骨格的な素因を有する反対咬合の早期治療に関しては、介入の是非が長年議論されている。 本書第Ⅰ部では、日本で代表的な矯正の各スタディグループから多様なアプローチによる治療例が紹介されている。各スタディグループの治療目標は同じでも、治療に対する概念やテクニックはさまざまで、それらを一堂に会して供覧できる点は面白い。 本書第Ⅱ部のメーカーによる商品紹介&臨床応用では、近年はやりの小児患者へ用いる可撤式の反対咬合改善用マウスピースが紹介されている。これらの装置は基本的に既製の装置からサイズを選んで使用することから、その簡便さゆえ、一般臨床家の間で普及しているようである。各社から販売されている商品について、はじめにメーカー側から商品の仕様等について詳細な説明があり、続いて臨床応用に熟達したエキスパートから症例解説がなされている。これからこれらの装置の導入を検討している臨床家には参考になるであろう。 本書後半では、国内外の主要な学会に関するレポートが掲載されており、学会に行かずとも、各学会で発表された内容のエッセンスを学び取ることができる。 本書は、矯正医にとっては自分の臨床を省みて問題点を洗いだし、改善を図るための好書となるであろう。一般臨床家は、矯正のテクニック的なことや商品の特徴について学べるのみならず、矯正医がどのようなコンセプトで成長期の反対咬合の治療に取り組み、悩んでいるかを知ってもらうことができるであろう。 評者:加治彰彦 (東京都・半蔵門ファミリア矯正歯科医院) クインテッセンス出版・編 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,000円(税別)

ビジュアル臨床補綴・歯周治療のマネジメント

超高齢社会が到来して人生100年時代といわれる今日では、中年期に大きな歯科治療介入を行った場合、たとえそれが最良の歯科治療であったとしても、患者はその後も長期間生き続けるので、将来的に再治療が必要となる可能性が高い。そうであるならば、最初の治療介入の段階で将来再治療が必要になった場合まで考慮して治療戦略を立てる必要がある。こうした考え方を著者は、「セカンドステージを考えた歯科治療戦略」と呼び、その重要性を強調している。本書では、最初の章でこうしたことを踏まえた歯科治療のあるべき方向性、さらにもう一歩進んで、患者のライフステージごとに、それぞれに応じた歯科治療を展開する必要があることが述べられている。 続いて、検査の実際と得られる基礎資料の重要性および臨床上の有用性が述べられている。これらは治療の経過や結果を云々する前に、臨床医としてまず身につけるべき重要な内容であるが、その解説に本書の1/3のページ数を割いているところに著者の思いが込められているし、本書の1つの特徴ともなっている。 本書では、書名に"ビジュアル"との言葉が入っているとおり、豊富なイラストや臨床写真を用いて、歯周治療、咬合治療、矯正治療の勘所が詳細に記載されている。手技や理論にとどまらない実践的な内容が示されており、初学者に限らずベテランの歯科医師であっても目から鱗が落ちるような発見があることだろう。 また、著者が1つの章を割いて提唱している「天然歯のパフォーマンス」という概念も特筆すべき考えである。「天然歯のパフォーマンス」とは、「残存歯がもっている一口腔内での臨床的環境における個々の負担能力」と定義されており、インプラント治療を含めた治療計画立案の際の重要な要素であると考えられる。すなわち、天然歯を①支台歯の歯冠長における分類、②歯根の要因、③歯根長、④歯の質の4つの要素に着目して分類し、評価するというものである。 本書では全編を通じて、臨床医であり、スタディクラブを主宰する教育者としての側面ももつ著者が、重要であると考え、読者に伝えたいと願うエッセンス・フィロソフィーが凝縮されており、読みやすく理解しやすい好書であるといえよう。 評者:古谷野 潔 (九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座) 田中秀樹・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:13,000円(税別)

再根管治療の成功率を高めるスカンジナビアエンド

日常臨床で頻度の高い根管治療は1年間で国民の10人に1人の割合で行われている。なかでも再根管治療は近年、治療する機会が増加しているにもかかわらず、抜髄症例に比べて予後が悪いという理由で抜歯される場合も少なくない。再根管治療をせずに抜歯を選択するという前に、もう一度その是非を考えて、現代科学の知識と技術を最大限に応用し、歯の保存にチャレンジしてはどうだろうか。本書はその一助となる可能性がある。 スウェーデンからの報告では、根管治療全体における再根管治療の占める割合は7%とかなり低く、わが国日本と比較するとその様相が相当異なる。日本の近々10年間の歯内療法にかかわるレセプト請求では、抜髄治療よりも感染根管処置の件数が多い現象がいまだ改善されていない。すなわち、抜髄はもちろん感染根管処置の成功率は10年間低空飛行のままなのである。 本書の構成は、1章で再根管治療の治療成績はどうすればよくなるのかに関してそのエビデンスと問題点を提議されている。2章では再根管治療における診査・診断をステップごとに解説している。とくに再根管治療の意思決定は多くの臨床家にとってぜひ理解していただきたい点である。そして3章はスカンジナビア流・再根管治療の診査と診断の実践をどのように行うのか、症状や歯種、そして状況別に分けて多くの資料を基に説明されており、最後の4章では、実際のテクニックを論じている。再根管治療は抜髄と異なり、意思決定と技術がかなり必要である。できればこの章にてガッタパーチャ除去の細部やテクニックにもう少し触れていただきたかった。 本書の著者自身が北欧で歯内療法を学び、その考え方から治療手技を本人の臨床に導入し、実際にそのよさを実感されていることが本書からよく伝わってきた。つまり日々実践している再根管治療内容のエッセンスが本書に凝縮されているのである。 評者:牛窪敏博 (大阪府・U'zデンタルクリニック) 宮下裕志・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:8,500円(税別)