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2020年5月のピックアップ書籍

2020/4/30 歯科NEWS

『補綴・咬合の迷信と真実─EBMを探り入れた治療のアート&サイエンス』

このたび、クインテッセンス出版から発売された『補綴・咬合の迷信と真実』の書評という大役を得て、同書を読ませていただくことができたことに、まずは御礼申し上げたい。評者は著者の1人である須田剛義先生とは歯学部の同級生で、6年間苦楽をともにした仲である。その彼が卒業後、単身米国にわたり名門タフツ大学にて米国の補綴専門医を取得したのち、さまざまなスタディグループで講演を行うなど、まさしく"大物"になって活躍していることをつねづねうれしく思っている。ただ、学生時代には、まさか彼がこのような大著の執筆に携わり、評者がその書評を担当するようになるとは、お互いまったく予想もできなかったことであるから、つくづく「人間は万事塞翁が馬」である。 前置きはこれぐらいにして、本書について紹介していきたい。まず、「迷信と真実」というタイトルから刺激的であるが、ページをめくり目次に目をとおすと、"支台歯形成は、きれいに削るのがもっとも重要である"、"アルジネート印象材(簡易法)よりシリコーン印象材(従来法)を使用して製作した総義歯のほうがすぐれている"、"インプラントと天然歯では与える咬合が違う"等々、臨床家が必ず一度は遭遇すると思われるさまざまな疑問が取り上げられている。そのほかにも5つのテーマに分け、合計37項目もの補綴臨床における重要な疑問について、研究論文を基にした解説が行われている。 また、取り上げられている論文は著者らによって厳選されており、各項目についての代表的な論文が、各々数本ずつとはなるが簡潔にまとめられている。そしてそれぞれがよく噛み砕かれて述べられているため、普段研究論文を読み慣れていない読者でも読みやすく、理解しやすいと考えられる。また個人的には、部分床義歯の項目において、さほど有名でもない評者が執筆した支台歯の予後についての論文を紹介していただいていることをみつけ、うれしいと感じると同時に、著者らがいかに幅広く論文検索を行っていたかがわかり、感心するばかりであった。 最後に、本書はエビデンスを重視する現代歯科医学にとってはまさにうってつけの良書であり、補綴臨床に携わる若手歯科医師は必ず一度は読んでおくべき書籍であると愚見して、締めくくりたい。 評者:松田謙一 (大阪府・大阪梅田歯科医院) 須田剛義/土屋嘉都彦/木戸惇太・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:7,500円(税別)

別冊the Quintessence『マイクロデンティストリーYEARBOOK 2020』

マイクロスコープは歯内療法の先生を中心に広がりをみせ、現在では多くの分野で応用されている。本書は、編集委員長の鈴木真名先生が述べているように「マイクロスコープの性能自体の向上や付属機器の開発により、さらなる臨床応用への可能性が高まっている」内容となっている。 本書は4つのセクションから構成され、PART1では精密な補綴治療を実現するためにマイクロスコープをどのように用いればよいのかを平易に解説してくれている。歯科技工士サイドとの連携をステップごとに写真で詳しく解説してくれているので、まさに明日から使える知識が豊富である。PART2ではマイクロスコープを用いた歯科衛生士のハイジーンワーク、歯科助手によるアシスタントワーク、さらにチームとしてどのように活用していくかが紹介されている。術者の治療のクオリティ向上はもちろんのこと、患者へ「魅せる治療」のシステムまで触れられている点がうれしい。PART3では、日本顕微鏡歯科学会誌からの翻訳論文や、最新のトピックスが載せられている。マイクロスコープをどう応用するか?というテーマでも多数のすばらしい論文が紹介されている。とくに大河原純也先生が紹介している「3Dステレオスコープを応用した歯科用デジタル顕微鏡」は興味深い。PART4では、各マイクロスコープ取り扱いメーカーによる最新の製品紹介や臨床プレゼンテーションが掲載されている。さらに巻末には「日本と米国のマイクロスコープ事情と今後の展望」というテーマで米国顕微鏡歯科学会長であるDr. William Linger、日本顕微鏡歯科学会長の三橋純先生、本書編集委員長の鈴木先生による興味深い対談が掲載されている。国内のマイクロスコープの導入台数はこの20年間で推定10,000台、2004年に設立された日本顕微鏡歯科学会の会員数も飛躍的に増加している。歯科衛生士のマイクロスコープに対する興味も非常に高まっており、2012年に27名であった準会員が2019年には224名と約8倍強となっている。近年の歯科衛生士シンポジウムは人気が高く会場は立ち見も含めてすぐに満員になるほどである。Dr. Lingerはこの日本の成功モデルに非常に興味をもたれており、世界のマイクロデンティストリーの発展をめざして今後さらなる日米の強い連携を希望している。 マイクロスコープをすでに導入されている人はもちろん、マイクロスコープの導入を検討している人にも必携の1冊である。 評者:山口文誉 (神奈川県・山口歯科医院) 日本顕微鏡歯科学会・編 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:5,500円(税別)

『医療・介護の現場で役立つベーシックオーラルケア─BOCプロバイダー入門─』

著者の長縄先生と評者はデジタルハリウッド大学大学院(通称デジハリ)に通う仲間である。デジハリにはIT・デジタル、クリエイティブの力を医療に用いるデジタルヘルスで世界を変えようとする医師が集まっている。そこに歯科医師の集結も数年前から始まっており、大学病院の口腔外科で口腔顔面領域の難治性疼痛の研究・治療を続けてこられた長縄先生と医療機器の開発・事業化を中心にイノベーション領域で活動する評者の人生が交わった。 出会った頃、長縄先生は世界で普及が進み、日本でもベンチャ企業が成長している遠隔医療を、歯科の領域でも導入しようとする挑戦を行っていた。挑戦のなかで、歯科がない病院・施設でオーラルケアを行っているのは歯科医師や歯科衛生士といった口腔領域の専門家ではなく、看護師や介護士といった職種の人であり、歯科医療従事者同士なら通じる口腔の解剖学的部位や修復方法といった専門用語での会話が、とくに遠隔医療では伝わらないという事実に気が付いた。同じ気付きであれば、大学病院口腔外科、病院歯科などにいて、ICUや病棟の医師、看護師からコンサルを依頼されたことのある歯科医師・歯科衛生士なら経験があるだろう。この気付きをきっかけに、デジハリの先輩の1人である一般社団法人訪問看護支援協会の代表理事である高丸氏とBOC(Basic Oral Care)プロバイダー講座を立ち上げたのだ。 本書はそのBOCプロバイダー講座の内容をまとめた教科書ではない。 第1章は、BOCとは何なのか、BOCプロバイダーとはどんな人たちなのかの解説、第2章は講座のコンテンツである多職種の専門家がそれぞれの視点からみた口腔への考え方を語る講演の講演メモ、第3章はBOCプロバイダーとしてそれぞれの職場で活動する人たちの実践、学びの継続の紹介となっている。読了して伝わってくるのは、講座を受講してBOCプロバイダーとなったさまざまな職種の人たちが、それぞれの立場でインフルエンサーとして口腔の重要さ・オーラルケアの大切さを伝播していく、その活動のために互いに学び続ける拠りどころを提供するBOCコミュニティーを発展させていきたいという長縄先生の想いである。その想いに触れて、やはりデジハリのスローガンである「バカにされよう、世界をかえよう」を思い出す。オーラルケアのインフルエンサーにより世界を変えようとしている長縄先生の挑戦を応援している。 評者:前田祐二郎 (東京大学医学部附属病院トランスレーショナルリサーチセンター) 長縄拓哉・編著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:2,900円(税別)