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ウィズコロナ&
アフターコロナ時代における
歯科医院での感染予防と管理VOL4:
使用済み器材の再生処理
(洗浄・消毒・滅菌・保管)

2020/6/15 臨床ライブラリ

チェアサイドにて使用した器具器材には患者さんの唾液・血液・組織片等が付着し、病原性を有する微生物も含まれる汚染物となるため、医療従事者や他の患者さんにとっては感染源となってしまいます。器材の再生処理には、分別・廃棄・チェック・洗浄・消毒・滅菌・保管という手順があり、それぞれのステップで不適切な処理を行ってしまうと、かえって取り返しのつかないことになりかねません。洗車でもメイク落としでも同様ですが、ワックスがけや栄養クリームを塗る前には、必ず汚れをきれいに落とさなければなりません。

また、感染管理を効率よく実践するためには、ムダを省き時間・エネルギー・コストを有効活用する必要があります。そこで考えたいのは、「消毒」と「滅菌」の使い分けです。消毒とは、「病原体のみを殺菌、あるいは病原体を減弱させ、感染力をなくすこと」で、滅菌とは「芽胞を含むすべての微生物を殺滅し、無菌状態にすること」と定義されます 1)。すなわち消毒よりも滅菌のほうが上のステージにあたり、滅菌する器材を消毒することは有用ではありません。ただし、洗浄後の段階では無菌性は保証されていませんので、針刺し事故等により感染しないよう、前述の個人防護具PPEを使用し十分に注意して器具を取り扱います。洗浄を始める前には、使用済み器材の中で廃棄するものと再使用するものを分別し、廃棄するものに関しては血液が付着したガーゼなどの「医療廃棄物」、注射針やメス刃などの「危険物」などの廃棄するための分別も適切に行いましょう 2)。綿球・ロールワッテ・ガーゼ等の汚染物廃棄の際には、器材を「ザーク」のようなカセットに入れ、固定用バーを閉じてゴミ箱上で逆さまにすれば、器材はそのままでゴミだけをノータッチで廃棄することができます。

次に洗浄時の注意点ですが、まずは洗剤の選択です。洗剤をpHで分類すると中性とアルカリ性があり、洗浄力はアルカリ性のものが高くなります。しかし、アルカリ性洗剤はアルミニウム等ステンレス製以外の器材に対しては腐食が生じる危険性があり 3、4)、安全性を担保し蛋白質で構成される汚染物を効果的に分解するためには、「ウルトラクレンザイム」のような蛋白質分解酵素入り中性洗剤のご使用をお勧めします。次に洗浄方法ですが、用手・超音波・WD(ウォッシャーディスインフェクター)の中から選択します。切削用バーや根管治療用リーマ・ファイルなどの溝やギザのある器材には中性洗剤を計量・希釈して調製した洗浄液で超音波洗浄器を行えば、細部に入り込んでいる汚染物まで除去することができます。洗浄後には洗剤が残留しないように十分にすすいでからタオルで乾燥させ、エアガンや3ウェイシリンジを用いて確実に乾燥します。内部洗浄可能なハンドピースに関しては、洗浄後に「ルブリナ2」のような自動注油器を用いて潤滑します。

ICウォッシャーのようなウォッシャーディスインフェクターは、その名が示すようにdisinfection(消毒)がなされる洗浄器で、蛋白質を凝固させないように低温での洗浄後に90℃以上の熱水を用いて、グルタラール製剤と同じ高レベル消毒が達成されます。対象となる微生物によりA0(エーノート)と呼ばれる温度と時間の設定がなされており、用途に合わせてモードを選択します。消毒には高レベル・中レベル・低レベルという効果の範囲によるレベル分けがなされており、消毒の対象が器材・生体・環境のどれなのかにより選択し、使用する際には濃度と接触時間を遵守する必要があります。高レベル消毒薬のなかでも過酢酸には金属腐食、フタラールには洗浄不良により残留している蛋白質を凝固させてしまうという点に注意が必要です。

歯科の臨床現場において、対策が難しいものに印象体があります。変形を可能な限り少なくし、病原性を低下させるためには界面活性剤を主成分とする「デンタボン」のような除菌剤を用います。界面活性剤(surfactant)とは、少量で界面の諸性質を変化させ、水の表面張力を低下させる物質で、特長として「浸透作用」、「乳化作用」、「分散作用」、「細胞膜障害性」、「タンパク質変性作用」があります 5)。「ミクロジッド」は第4級アンモニウム塩という界面活性剤を主成分としており、蛋白質を変性させることから新型コロナウイルスのような蛋白質でできているスパイクや脂質でできているエンベロープを有するウイルスの不活性化に有効とされています 6)。

感染管理から連想する処理に滅菌をイメージされる方も多いでしょう。滅菌には高圧蒸気・プラズマ・酸化エチレンガス等の方法があり、滅菌用の包装材には「アシュアープラス」のような滅菌バッグを用います。また、滅菌のプロセスが適切に経過したか否かを確認する「ネスコスICインジケータ」や「コンパクトPCDイエロー」を使用します。ハンドピースやバキュームチップのような内腔のある器材は、その内部にある空気除去を行い、真空状態になってから蒸気浸透を達成させるためには「ICクレーブ」のようなクラスB滅菌器を用います。

感染を予防し管理するためにはハードウエアとして理想的なゾーニングによる消毒コーナーやソフトウエアとしての院内マニュアル作成等、様々な工夫が必要となるため、スタッフが同じ方向性を持ち取り組んでいく体制作りが基本です。ぜひ現状を見つめ、患者さんも含めた安全性確保を目指しましょう。

参考文献 1)最新歯科衛生士教本 顎・口腔粘膜疾患 口腔外科・歯科麻酔 全国歯科衛生士教育協議会監修 2016年 医歯薬出版株式会社 2)Standard precautions: Waste management 2020年 World Health Organization 3)医療現場の滅菌 一般社団法人日本医療機器学会監修 2014年 株式会社へるす出版 4)歯科用器材の再生処理 一般社団法人日本医療機器学会メンテナンスマニュアル出版委員会監修 2017年 一般社団法人日本医療機器学会 5)最新医学大辞典第3版 最新医学大辞典第3版編 2006年 医歯薬出版株式会社 6)WHO_COVID-19_Coronavirus_Animation_EN 2020年 World Health Organization
近著 「よくわかる歯科医院の消毒滅菌管理マニュアル」 ~無駄なく無理なく導入できる現実的な実践法~ 書き込み式 歯科衛生士のための感染管理の基本