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ニューヨーク便り:
トランプ大統領が
マスクをするまで

2020/7/31 デンタル〇〇デザイン

現在、世界で最も多くのCOVID-19感染者数、死者数を記録している米国の中で、最初に震源地になったニューヨーク。その近郊に居住している親戚からのニューヨーク便りを振り返ると、この8ヶ月間の目まぐるしい変化に驚きます。今年の1月下旬からの現地の生の情報を、写真や動画と共にまとめてみました。



この写真が撮影された2020年1月下旬、武漢で発生したCOVID-19を受けて、ニューヨークでは、マスク姿のアジア人が目立つようになりました。言い換えると、マスクをしているのはアジア人だけでした。「アジア人+マスク=COVID-19」という偏見があって、日本人でも外を出歩くのを控える方が得策でした。早くもマスクは売り切れ状態とのこと。2月には、会社によっては駐在員が日本へ帰省できなくなりました。

3月1日にニューヨーク市で最初の感染者が確認され、その後、市中感染が倍々で増加します。当時、テレビで繰り返し流れていたのは、「マスクは医療従事者のもの」(一般の人は使わないように)「手洗いを20秒」「外出時は顔や目を触らないように」というメッセージでした。

学校・教会は感染者が出た時点で閉鎖、電車も72時間毎に消毒という徹底ぶりだったのですが、感染の勢いは止まらず。
この写真は、3月7日にニューヨーク州で非常事態宣言が出て、その2時間後にスーパーマーケットで撮された写真です。花以外は見事に完売です。スーパーマーケットや薬局以外のお店は閉店、一般医科の手術や歯科は「不要不急」とのことで禁止となりました。スーパーマーケットに入れる人数は、収容人数の50%以下に制限され、入り口と出口では係の人が客の手やカートを消毒します。 しかし、3月27日には米国の感染者数が中国を抜き、病床数がまるで足りず、上の写真のような病院船が現れ、セントラル・パークには野戦病院ができました。
3月下旬には、住人一人ひとりにトランプ大統領から上のような手紙が届き、在宅勤務が日常になりました。毎日行われていた記者会見でのトランプ大統領の様子に威勢がなくなったのが印象的でした。 NY在住モコさんより、米国のオーラルヘルス情報Vol.9 - 歯を守りたい人の『予防歯科広場』 https://www.facebook.com/yobousika/posts/3607675075971530
4月上旬、感染者数はニューヨーク州で10万人を超えます。とうとう医療人以外にもマスクが推奨に。2メートル間隔を開けるソーシャルディスタンシングを守らなければ会話をしただけでも感染すると報道があり、マスクをしても決して安心するなという念押しもありました。ニューヨーク市からは、近郊に住む人全員に、上の写真のような医療人を募る一斉配信があり、切羽詰まっていることが伺えました。 ソーシャルディスタンシングを守らない人への罰金が、今までの2倍の1,000ドルに上がり、集まって良いのは同じ屋根の下に住む人間だけに限られました。基本は「ステイホーム」で、「高齢の親を訪ねるなんてもってのほか」でした。スーパーマーケットに入る人たちは建物を一周して駐車場に及ぶくらいの長蛇の列で待つ状態でした。一人が出たら一人が入るというシステムで、レジ周りに透明な仕切りが出現しました。そのうち、フェイスカバーなしではスーパーに入れてもらえなくなります。 ペット屋さんでは、客が入り口で欲しい商品を伝え、店員が取って来るというシステムに変わりました。動物園のトラが感染したことをきっかけに、ドッグランも一斉に閉鎖となりました。
医療関係者への敬意を示すために、午後7時に住人たちが拍手を送ることが日課になり、上の動画のように救急車や消防車もクラクションを鳴らして応えます。その裏では多くのエッセンシャルワーカーと呼ばれる看護師、医師、救急隊員、駅員、スーパーの店員が犠牲になっていました。エッセンシャルワーカーや、基礎疾患のある人には黒人やヒスパニック系が多く、人種による感染率の歪が顕になりました。医療崩壊の次に、高齢者施設崩壊が始まりました。
犬の予防接種は予約制で、駐車場までスタッフが犬を迎えに来て、会計は登録しているカードで引き落とされ、人と人の接触を極力なくすシステムになりました。動物病院ですら物々しく、受付の人たちは皆、フェイスシールドをしていたそうです。 4月下旬、ニューヨーク市では4人に1人に抗体があることがわかりました。「ニューノーマル」ということばが盛んに使われ、秋からの第二波が一番の懸念事項になりました。とうとう国内便はマスク着用が義務で、米国も様変わりです。 5月になると、お店が徐々に再開していきます。スターバックスは注文をネットで受け付け、店舗は受け取りのみで再開しました。大手百貨店は、マスクの着用を義務、利用可能な試着室の削減、店内の消毒を頻繁に実施、レジの傍にはアクリル樹脂のボードを設置、ソーシャルディスタンシングを徹底、ビューティコーナーではスタッフは顧客に接触しない、テスターは使用不可、一部の店頭では歩道での商品引き渡しサービスをするといった具合です。 歯科医院も写真のような形で再開しました。フェイスシールド、防護服、椅子などの除菌、患者は1人ずつ診るなどが、以前との違いです。
歯科医院は、米国でも甚大な経済的損害を被っています。5月下旬には、歯科医院の20%が経営が立ち行かないだろうと報道されました。 住人なら誰でも抗体検査ができるようになり、採血から15分で結果が出るそうです。唾液検査でPCRもするようになりました。デジタル化が進んでいるので、秋以降もオンライン授業をする大学が出てきました。ブロードウェイは少なくとも9月までは閉鎖に(7月下旬現在、2021年1月3日まで閉鎖が決定しているそうです)。
6月、再開が徐々に進む中、社会の風潮がガラッと変わります。黒人男性が白人警察官に殺害された事に端を発した抗議デモが発生して、パトカーの音が夜中じゅう聞こえ、20時から5時までは外出禁止に。日本大使館からもデモに近づかないようにとの連絡が入りました。街が燃えたり、デモ隊や警察が暴力沙汰になっている映像がテレビで繰り返し流れます。米国全土がデモで揺れて、コロナ禍を忘れているかのようでした。そのうち、再開が始まった州から感染者が爆発的に増え、人権運動もますます盛り上がるというカオス状態に。
この頃の歯科関係ニュースでは、N95マスクを始めとした個人用防護具(PPE)が不足とのこと。 ニューヨーク州では感染者数が抑えられつつあり、クオモ州知事はマスクが効いているということで、盛んに啓発します。そして、なかなかマスクをしようとしないトランプ大統領を記者会見で公開非難しました。 7月、各病院が次のようなCMを流し始めました。「治療を途中で止めないでください」「病院で待ってます」「オンラインでどうぞ」 ニューヨーク市からも、「子どものワクチン接種を忘れないでください」との再開に向けたメッセージが送られています。 しかし、7月4日の独立記念日にさえ、富裕層が住む地域では、歩道に人がほとんど出ていなかったそうで、ハドソン川上空に飛行機が飛ぶショーがあっても、花火があっても、人が集まらないらしいです。COVID-19と抗議デモに大統領選挙が重なって大混乱とは言うものの、ソーシャルディスタンシングを順守する人と、しない人たちの差が大きいというわけです。
とうとう7月11日、頑なにマスク着用を拒否していたトランプ大統領が公の場でマスクを着用しました。7月21日には、3ヶ月ぶりの記者会見で、国民にマスク着用を要請したのでした。 7月下旬の現在、感染が抑制されたニューヨーク州やニュージャージー州では、感染者数が増えている他州から入る人たちは、14日間の自主隔離が厳格化されているそうです。 そして、大量失業や受刑者の早期釈放(刑務所でのCOVID-19集団感染を防ぐため)のおかげで、銃犯罪や暴力事件が急増していることも取り沙汰されています。 BBC News Trump to send 'surge' of hundreds of federal agents to cities - https://www.bbc.com/news/world-us-canada-53507660 さて、7月下旬の現在のニューヨーク歯科事情ですが、ある歯科医院の対策について下の記事より抜粋します。 - 十分なPPEなしで治療はできないので、PPE*の確保が前提 - スタッフの通勤も含めて安全に職場復帰できるよう万全を期す - 患者に、COVID-19の症状についての詳細な問診(熱、咳、呼吸困難、下痢、慢性疾患などの有無、感染者数が多い州への旅行についてなど)を予約前日と当日に取る - 患者がクリニックについたら手洗いをしてもらい、体温測定 - 患者がクリニックを出る前にも手洗いをしてもらう - 空気清浄機と手の消毒液を完備 - スタッフは全員PPEを着用 - 患者にこれらの安全対策を説明 - 歯科クリーニングでは高速吸引器を導入して飛沫が飛ばないようにする *PPEに含まれるもの:ゴーグル、マスク、手袋、ガウンやスクラブジャケット、フェースシールド ジャピオン1066号 15ページ 「健康のための心と体のメンテナンス 第6回 歯科クリニックでの安全対策」 https://my.ebook5.net/NY_Japion/1066/ 謝辞 ニューヨーク市近郊に住む西由香さんから提供していただいた情報と写真に、心から御礼申し上げます。 (本記事は筆者が所属する新潟大学とは一切関係ありません。〉