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2020年12月のピックアップ書籍

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皮膚疾患に対する間違った知識を払拭するためにも、熟読をお勧めしたい『その皮膚疾患歯科治療で治るかも医科歯科連携で治す歯性病巣感染&金属アレルギー』

友人から"皮膚に症状があるが、詰め物の金属アレルギーではないか。セラミックスに変えたらよくなるだろうか?"という相談を受けたことがある。金属アレルギーの問題は知っていたが、本を熟読したことがなく、あやふやな返答になり、歯科医師として恥しい思いをした。 さて数年前、国立モンゴル医学科学大学を訪問した際、教授室に一編の論文が置かれていた。それは監著者の押村進先生の金属アレルギーについて書かれたものであった。モンゴルでも金属アレルギーが多くて問題になっているらしい。押村先生とは大学の同期であると伝えると、ぜひモンゴルの歯科医師会で講演をしていただきたいと頼まれた。残念ながら都合が合わなかったが、代わりに著者の1 人の押村憲昭先生に講演をしていただいた。これが金属アレルギーとの初めての出会いであった。 歯科医師は、皮膚症状というと金属アレルギーを思い浮かべる。そこで、金属修復物を除去し、高価なセラミックスを勧める。これが患者さんの負担を増すばかりでなく、軽快に至らないケースも多い。その原因を探るなかでたどり着いたのが、歯周病や根尖病巣などの慢性炎症である。実際、掌蹠膿疱症における金属アレルギーの合併率は5%に過ぎない。金属除去と根尖病巣の治療のどちらが、皮膚症状の改善につながるかを調査した結果、圧倒的に根尖病巣が大きなウエイトを占めた。そこで金属除去より、根尖病巣の治療を優先させるべきだという。歯周病や根尖病巣が、二次的に皮膚症状を呈する可能性が高いのである。 評者が勤務していた岡山大学病院での話。小児科では、原因不明の疾患が多い。そこで、さまざまな治療を試みて治らなければ、歯に原因があることが多いので小児歯科へ紹介することになっていた。実際、多数歯の乳歯う蝕の根管治療や抜歯を行うと症状は軽快した。おかげで、歯科治療により病巣感染が改善したケースを多数経験することができた。小児科での治療後なので、歯が原病巣である可能性も高かったのだろう。残念ながら、両者の直接的な因果関係を証明するのは難しい。しかし、歯性病巣感染を見逃しているケースは多数あるように思ってきた。 さて、本書は驚くべき内容の連続であった。たとえば、皮膚科に依頼すれば、パッチテストで簡単に診断できるものと思っていた。しかし、作業が煩雑で、判定には訓練が必要なため、施行していない医院が多いのである。また、患者さんへの説明資料、皮膚科医への紹介状の書き方、診療情報提供書や返信例など、皮膚科に紹介する際の心得についても書かれている。歯科医師の皮膚疾患に対する間違った知識を払拭するためにも、熟読をお勧めしたい1冊。 最後に、皮膚症状で悩まれていた患者さんの、歯性病変を見逃していた可能性を考えると、申し訳ない思いでいっぱいである。同時に、自らの不注意で歯性病変をつくらない診療を心がけたい。 評者:岡崎好秀 (国立モンゴル医学科学大学客員教授) 押村 進/髙橋愼一・監著 伊藤明子/今井一彰/押村憲昭/ 小林里実/神野剛良/鈴木加余子/ 長谷川光晴/原渕保明/堀田 修/ 松村光明/森下正志/矢島由紀・著 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,800円(税別)・128頁

前刊『成長期の反対咬合を考える』の姉妹本別冊ザ・クインテッセンス『臨床家のための矯正YEARBOOK 2020─成人の反対咬合を考える』

本書は、前刊『成長期の反対咬合を考える』の姉妹本と捉えてよいだろう。成長期の反対咬合と成人のそれとの違いは、成長期では顎顔面の形態が経時的に変化する(成長する)のに対して、成人では一応成長が終息していることにある。したがって、小児(成長期)と比べて、成人では診断において治療結果の予測が行いやすい面がある。しかしながら、成人特有の歯列や理想とする顔貌に対する期待度を考えると、小児以上に取り扱いが難しいといえるだろう。 一概に成人といっても年齢層が幅広く、なかには歯列をみると多くの修復処置歯や歯周病を抱えている患者がいる。また、顔貌に関してはコンプレックスを抱いているものの、長年有していた顔貌が、とくに外科矯正によって劇的に変化することを危惧する患者もいる。したがって、成人の反対咬合治療においては、処置歯や歯周病をマネジメントできる一般歯科的な能力とともに、患者の心理面を洞察できる能力を兼ね備える必要があるだろう。 本書は第Ⅰ部の日本の著名なスタディグループによる症例提示を柱に、さまざまなコンテンツが盛り込まれている。各スタディグループによる症例提示では、熟達した矯正臨床家による細緻な治療例が詳細な写真やセファロ分析などのデータとともに解説されている。本書の各臨床家の緻密なデータ収集能力と分析能力には感心させられる。 特筆すべきは、今回紹介されている臨床家のなかには、これまで自ら行った治療術式の誤りなどについても教示されていることである。経験豊富な臨床家からこのような真摯なコメントをいただけることは、とても有益である。 本書第Ⅱ部では「メーカーによる商品紹介&臨床応用」として、アンカースクリューおよびアンカープレートが紹介されている。反対咬合治療においては、これらの登場により、従来は外科でしか対応できなかったような症例が非外科で治療可能となってきた。アンカースクリュー(プレート)は現在さまざまな形状のものが臨床家のニーズに応えるべく用意されており、本書でも紹介されている。 本書巻末の「海外論文」では、日常臨床でしばしば遭遇する矯正的問題を解決するための一助となる論文が、わかりやすい和訳と解説で紹介されている。また、「国内学会抄録」では、しばしば現在でも論争になる抜歯・非抜歯の判断基準について、第78回日本矯正歯科学会において著名な臨床家や研究者によって行われた講演の抄録が紹介されている。 本書は矯正家にとっては、現在の成人反対咬合治療のstate of the artを知るうえでの一助となるものと考えられる。また、一般臨床家にとっては、矯正家がさまざまなテクニックやアプローチで成人の反対咬合の治療を行っていることを知るうえで一助となるだろう。 評者:加治彰彦 (東京都・半蔵門ファミリア矯正歯科医院) クインテッセンス出版・編 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:6,000円(税別)・178頁

まさに「インプラント治療のバイブル」といっても過言ではない1冊『増補新版 インプラントセラピー 臨床的アプローチと成功の根拠 第2版』

インプラント治療のあらゆる分野における世界的権威の臨床家と研究者が、科学的根拠に基づいたデータや臨床例を用いてわかりやすく解説している。これほどの数の世界のエキスパートを集めて究極の書籍をつくれるのは、Myron Nevins先生をおいて他にはいない。彼はInternational Journal of Periodontics and Restorative Dentistryの編集長であり、3年に1度ボストンで開催されるPRDシンポジウムの主催者でもある。インプラント治療に関する膨大な情報から正しい情報のみを厳選することができ、かつ誰がその分野でもっともすぐれた執筆者であるかを知っているのは彼1人であろう。 Hom-Lay Wong先生はミシガン大学教授であり、米国インプラント学会(AO)の理事やJOMIの編集役員を務めるインプラント界の重鎮である。書籍の価値を決める重要なポイントは「どのようなコンセプトで編集されているか」である。第1章で書かれている内容から、それを伺うことができる。冒頭に「優秀な歯科医に求められる資質は、予知性(Predictability)が高く、かつ永続性(Longevity)のある治療を選択できることである」と書かれている。そして、重度歯周病の患者の長期症例が提示されている。40~50年を経過した長期症例のなかで、天然歯とインプラントが共存して患者のQOLを高めていることをみて、あらためてそのコンセプトの重要性を認識させられる。「インプラント治療を計画する場合でも、まずは天然歯の保存の可能性を考えるべきである」という示唆が随所にみられる。現在の歯科界において歯の保存が軽視され、インプラント治療に流れる傾向があることに警鐘を鳴らすものと感じ取れる。そのコンセプトを踏まえたうえで、予知性と永続性のあるインプラント治療を実践すべきであろう。目次は29章にも及ぶ幅広いトピックを網羅している。インプラントの外科手技に関する内容はもちろんのこと、アバットメントや連結などの補綴関連のトピックも充実している。インプラント周囲炎を含む合併症への対策にも十分な検討が行われている。第23章では「重度歯周病患者に対する矯正治療とインプラント治療の効果的な適用」と題して、小野善弘先生をはじめとする日本人歯科医師の症例が提示されていることは、非常に喜ばしいことである。日本の歯科治療のレベルが世界基準であることが証明されたことを意味している。重度歯周病の保存の可能性を示した症例は、歯の保存を軽視する傾向に歯止めをかける内容となっている。これまで評者もインプラント治療に関する数多くの本を購入し、診断や治療の参考にしてきたが、それらのすべてを濃縮したような、いや、それ以上の内容をまとめた1冊となっている。世界基準のインプラント治療をめざす歯科医にとっては必読、必携の1冊である。 評者:宮本泰和 (京都府・四条烏丸歯科クリニック) Myron Nevins/Hom-Lay Wang・監著 小野善弘/窪木拓男・監訳 五十嵐 一/勝山英明/桑原俊也/ 佐々木 猛/園山 亘/中田光太郎/ 中村社綱/水上哲也/山﨑長郎・翻訳統括 クインテッセンス出版 問合先 :03‐5842‐2272(営業部) 定価本体:36,000円(税別)・536頁

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