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歯科技工士の独立開業に必要な準備とは?メリットや注意点についても解説

歯科技工士の独立開業に必要な準備とは?メリットや注意点についても解説
歯科技工士の独立開業に必要な準備とは?メリットや注意点についても解説
自分の歯科技工所を持ち、独立・開業を視野に入れている歯科技工士の方も少なくないのではないでしょうか。
独立・開業する場合、実際の方法や準備、注意点について知っておきたいところです。

今回は、歯科技工士の独立・開業のメリットやフローについて解説します。

歯科技工士の独立・開業とは

厚生労働省発表の平成30年衛生行政報告例では、歯科技工士として働く34,468名のうち、25,056名は歯科技工所に勤めています。 残りの約9,000名は、病院や診療所に勤めています。
【引用】平成30年衛生行政報告例|厚生労働省 また、歯科技工所の数は21,004箇所あります。 複数箇所の経営の可能性を除き、すべての歯科技工所をそれぞれ1名の歯科技工士が開業したものと考えると、全体の60%が、自分の歯科技工所を持ち、独立・開業していると考えられます。つまり、歯科技工士にとって、独立・開業は珍しい選択肢ではないといえます。  

独立・開業の種類

1.自宅での個人開業 歯科技工所として賃貸で契約するのではなく、自宅を歯科技工所として利用するケースです。 賃料を抑えられ、職場まで移動する手間・時間がかからないことがメリットです。 ただし、自宅が賃貸の場合は契約上歯科技工所として開業できないことや、業務時の騒音などに配慮しなければならないこともあります。 2.歯科技工所の開設・経営 歯科技工所用の施設を不動産で契約する方法です。 場所や設備など、希望に合う不動産を探すことができます。 一方で、敷金や前家賃などで多額の費用が必要になるため、資金力を求められます。 3.間借り開業 すでにある歯科医院や歯科技工所などの施設の一画を間借りし、開業する方法です。 メリットとしては、賃料をできるだけ抑えられること、提携先から仕事を受注しやすいことなどが挙げられます。 ただし、間借りを許可してくれる歯科医院や歯科技工士の人脈・信頼関係が必要となるでしょう。

歯科技工士が独立・開業するメリット

歯科技工士が独立・開業するメリットは、次の通りです。  

専門分野を極められる

働いている歯科医院や歯科技工所の方針に関係なく、歯科技工士として興味関心のある分野を突き詰め、スキル・知識を高めることができます。 専門分野を極めることが、自分のブランディングにもなるため、積極的に学びを深めていくことが望ましいでしょう。  

収入の上限がなくなる

雇用されている歯科技工士は、雇用主から毎月一定の給与が支払われます。 独立・開業した歯科技工士は、自分の仕事量に応じて収入が決まります。 収入が保証されず不安定になる一方で、収入の上限がなくなるため、「努力して年収を増やしたい」「自分の意思で収入を決めたい」という方に向いています。  

経営者として活躍できる

独立・開業すると、経営者(個人事業主)として人材を雇用することができます。 自分がプレーヤーとして実力を発揮するだけでなく、後世につながる若い人材を育成することで、業界に貢献することもできるでしょう。 さらに、経営者としての手腕を磨き、事業を多角化し展開することも可能です。 たとえば、歯科技工士を育成する研修・セミナーの開催や、歯科医師のビジネスパートナーなどが挙げられます。

歯科技工士の独立・開業に必要な準備

歯科技工士が独立・開業するためには、保健所への届出や開業資金集め、器材や設備の用意、歯科医院との繋がり・人脈形成などの準備が必要です。  

保健所への届出

歯科技工所の開設には、管轄の保健所への届出が必須です。 開設後10日以内の届出が義務づけられています。 【開設時の届出事項】 1.開設者の住所と氏名(法人であればその名称と主な事務所の所在地) 2.開設の年月日 3.名称 4.開設の場所 5.管理者の住所と氏名 6.業務に従事する者の氏名 7.構造設備の概要および平面図 これらの届出事項の中で、1、3〜7に変更があった時は、その旨を届出なければなりません。 【引用】歯科技工所の開設・廃止届|日本歯科技工士会 病院や診療所内の一画を間借りし、そのクリニックに通院する患者さんの技工を行う場合は、届出は不要です。 ただし、そのクリニックに通院していない患者さんの技工を行う場合は、届出が必要となります。  

開業資金

歯科技工士の独立・開業に必要な開業資金は、開業の種類(自宅/賃貸/間借り等)や設備、人数などによって異なるため、「いくらあれば開業できる」といった明確な基準はありません。 しかしながら、一般的にはおおよそ700万円〜1,000万円の資金が必要になると言われています。 開業資金を自己資本でまかなえない場合は、融資を受けましょう。 開業資金融資は、日本政策金融公庫や制度融資などがおすすめです。 たとえば、日本政策金融公庫では無担保・無保証で上限3,000万円、自己資金要件1/10以上など、ゆるやかな融資条件となっています。 詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。 歯科医院向けの内容ですが、基本的な資金調達方法を網羅しています。 【関連】歯科医院の資金調達の方法とは?開業や経営に役立つ資金調達の各方法を解説! また、技工用の器材を新品でなく中古にしたり、自宅を兼用したりすることで費用を抑える方法もあります。  

器材や設備

歯科技工所に必要な器材や設備を準備する必要があるものの、最新の設備の中には数百万円以上するものもあり、すべてそろえるには資金がいくらあっても足りません。 そのため、開業時は、必要最低限の設備から始めましょう。 経営が安定し、売上を伸ばすことができたのちに、新しい設備投資を行うことをおすすめします。 最初から設備を整えるために、数千万の融資を受けることはリスクに他なりません。  

歯科医院との繋がり・人脈

独立・開業したばかりの歯科技工士は、基本的に実績はほとんどありません。 勤務中に製作した経験や成果物があったとしても、あくまで個人ではなく、その職場での実績です。 経営者としての実績や信頼は、独立後・開業後に作る必要があります。 実績や信頼のない状態で仕事をスタートする場合、歯科医師や歯科技工士との人脈や、歯科医院とのコネクションを築いておき、独立・開業後に仕事をいただけるような準備をしておきましょう。

歯科技工士の独立・開業の注意点

最後に、歯科技工士が独立・開業する際の注意点をお伝えします。 事業を失敗させないために、次の点に気をつけましょう。  

売上が立たない

開業・独立した歯科技工士がもっとも重視すべきなのは、売上です。 売上が立たなければ、融資の返済はおろか、人材を雇っている場合は給料を支払うことすらままなりません。 そこで、顧客を増やしていく経営やマーケティングの視点が重要です。 具体的には、事前に以下に関する入念なリサーチをしておきます。 ・商圏にある歯科医院の数や特徴 ・競合となる歯科技工所の数や特徴 ・他の歯科技工所との差別化のポイント など リサーチを元に積極的な営業活動やアプローチを行いましょう。  

融資の返済が間に合わない

金融機関やビジネスローン、助成金など、資金調達する方法はさまざまあります。 自分でコツコツと貯めなくとも、自己資本が足りずとも、審査さえ通れば資金を借り入れることができます。 しかし、借りたお金は当然返さなければなりません。 理想の状態で開業するためにあちこちから資金調達した結果、「売上が伸びずに、返済で首が回らない…」という事態に陥ることもあり得ます。 「売上は、事業計画書通りには伸びない」という前提で、本当に必要な資金だけを借り入れるようにしましょう。

入念な準備をした上で独立開業を

今回は歯科技工士の独立・開業の流れについて解説しました。 全体の半数以上が独立・開業しており、チャンスは多くあるといえます。 しかしながら、マーケティングや資金調達などで失敗する恐れもあるでしょう。 リスクを伴うことを理解した上で、入念に準備し、独立開業を目指してみてください。

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