新たに歯科医院を開業する際には、クリニック名のネーミングを検討されるでしょう。
ネーミングは、集客に影響・効果を与え、法律に抵触する恐れもあるため慎重に考えなければなりません。
今回は、歯科医院の名称による影響・効果、ネーミングのポイント、法律上の注意点などについて解説します。
歯科医院のネーミングによる影響・効果
クリニック名のネーミングは、歯科医院にさまざまな影響・効果をもたらします。
ブランディングできる
ネーミングは、患者さんが歯科医院に対して抱くイメージに影響します。
たとえば、「はちみつ歯科医院」と「クリスタルクリニック」では、歯科医院に持つイメージが異なるでしょう。
はちみつ歯科医院は、「親近感」や「ファミリー向け」という印象を与えます。
クリスタルクリニックは、「高級感」や「大人向け」という印象を与えます。
歯科医院のターゲット層に合わせたネーミングを行うことで、ブランディングに繋がりますよ。
患者さんの記憶に残る
シンプルで覚えやすいネーミングは、患者さんの記憶に残りやすいです。
ネーミングが覚えやすいと知人や家族に口コミする際にも伝えやすいでしょう。
一方で、長すぎて覚えにくいネーミングは、患者さんの記憶に残りにくいです。
スタッフが歯科医院名を名乗る際にも不便です。
たとえば、「あじさい歯科医院」と「新宿三丁目山田ゴールドクリニック」という名前では、どちらが覚えやすいかは明らかでしょう。
ウェブから患者さんを獲得できる
今や多くの方がインターネットで歯科医院を検索してから来院します。
患者さんが検索するであろうキーワードが「歯科医院名」に含まれていると検索結果に表示されやすくなります。
患者さんが検索するキーワードを想定して、ネーミングを決めることもテクニックのひとつです。
競合と差別化できる
診療圏にある他の歯科医院と差別化を図るためにもネーミングは重要です。
競合のネーミングをすべてチェックした上で、イメージや語呂の被らないネーミングを使用しましょう。
歯科医院のネーミングで押さえておくべきポイント
歯科医師の名称を決める際には、次のポイントを押さえましょう。
表記の種類
ひらがな、漢字、カタカナ、ローマ字……どの表記を使用するかによって、与える印象が異なります。
たとえば、ひらがな表記のネーミングは小学生でも読むことができ、柔らかく優しそうなイメージを与えます。
歯科医師の名字を効果的に表すこともできます。
「名字+クリニック」というネーミングは、多くの歯科医院が使っています。
しかし、漢字表記の名字は普段から見慣れており、珍しい名字でもない限り差別化を図ることは難しいでしょう。
あえて、ひらがな表記にすることによって印象付けることができます。
ちなみに、ひらがな以外の表記では以下のような印象をそれぞれ与えます。
・漢字表記:重厚感、形式的
・カタカナ表記:独創性、斬新
・ローマ字:機械的、技術的
SEO対策
SEO対策とは、インターネット検索の結果に上位表示されるようにウェブページの対策を行うことを言います。
ネーミングにおいては、インターネット上で多くの患者さんが検索しているキーワードを選ぶことが重要です。
たとえば、「診療所」「クリニック」「歯科医院」という似たキーワードでも検索される回数は異なるからです。
患者さんの悩みに訴求して「矯正」「審美」といった診療科目、診療圏の患者さんを狙うために「新宿」や「大宮」などの地域名を入れることも効果的です。
各キーワードの検索数を調べた上で、SEO対策で最も効果を発揮するネーミングにしましょう。
理念・診療方針
「元気」「青空」など理念や診療方針を表すようなネーミングは、患者さんだけでなく、スタッフにも効果を発揮します。
歯科医院で目指している医療がスタッフに浸透しやすくなります。
ただし、理想を掲げるあまりに現実の医療とギャップが大きいとかえって違和感となります。
「元気」と名乗っておきながら、「歯科医師や歯科衛生士に元気がない」「歯科医院のインテリアがダークトーンで暗い」といったことは避けましょう。
歯科医院のネーミング時の注意点
歯科医院の名称をつける際の注意点を解説します。
法律的にNGな名称は避けなける必要があります。
紛らわしい・広告となる表現
歯科医院のネーミングは、「医療法」や「医療広告ガイドライン」で規程を定められています。
「医療法」では、
・診療所に紛らわしい名称を附けてはならない(第3条第2項)
・文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない(第6条第5項)
と定められています。
「医療広告ガイドライン」では、
・虚偽にわたるもの
・他の医療機関と比較して優良であることを示すもの
・事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させるもの
を禁止しています。
上記より、「紛らわしい」「広告となる」ネーミングは法律上NGです。
たとえば、周辺で「あおぞら歯科医院」が既に開業している場合に、新しい歯科医院で「あおぞらクリニック」とネーミングすると紛らわしくなってしまいます。
また、「ナンバーワン」「最高」などのネーミングは、「他の歯科医院よりも優れた医療を提供する」ことを示すような広告につながるため、禁止されています。
その他よくある例として、「無痛治療」というネーミングは誇張・誤認につながるため禁止です。
これらを違反した場合、懲役・罰金を課される可能性もあります。
たとえば、虚偽にわたるネーミングをした場合は「6ヶ月以上の懲役又は30万円以下の罰金」、優良性をうたった場合は「行政指導の対象」となります。
【関連】歯科医院の広告規定は知らないと損!?内容のOK・NGラインとは?
有名な商号などに類似した表現
「不正競争防止法」では、有名な他人の氏名、商号、商標、商品などの表示と同一または類似のものを使用する行為を禁止しています(不正競争防止法2条1項2号)。
「商標法」でも、商標者の許可なく商標を使用する行為を禁止しています。
業界で有名な歯科医院などのネーミングを真似ることは避けましょう。
歯科業界だけではなく、その他関係がない有名な名称も禁止の対象です。
たとえば、「Yahooクリニック」や「Google歯科医院」といった表現は有名な企業の無断で使用することになり、法律に抵触します。
もし、商号などを真似たネーミングをつけた場合は、歯科医院や企業からの訴えにより、使用の差し止めや損害賠償義務を負う恐れもあることを理解しておきましょう。
営利目的を誤認させる表現
歯科医院などの医療機関は、営利目的での活動を禁じられています。
また、医療機関と営利法人で「土地や建物を貸借している」といった関係性を持つ場合に、歯科医院の名称に営利法人による経営をイメージさせる言葉を使ってはならないと定められています(医療機関の非営利性の確認と名称についてより)。
これは、営利法人が歯科医院の経営に関与しており、営利目的に活動する歯科医院だと誤認させる恐れがあるためです。
たとえば、「ひまわり不動産」と賃貸契約を結んでいた場合、「ひまわりクリニック」といったネーミングは避ける必要があるということです。
自治体による自主基準の表現
法律だけではなく、各自治体で自主基準を設けていることもあります。
たとえば、京都市では診療所の名称に「開設者の氏名」を原則としてつけることを定めています。
歯科医院の開業を決めた段階で、各自治体の担当者に確認しておきましょう。
十分に検討した上で歯科医院のネーミングを!
歯科医院のネーミングは売上を左右することもあるため、最初に決める際には十分に検討しましょう。
また、法律に抵触するネーミングは、罰則だけでなく歯科医院の信用を落としてしまうので、注意してください。
歯科医院の名称を一度決めてから変更するためには、膨大なお金や労力がかかるだけでなく、スタッフや患者さんを混乱させることにも繋がります。
今回の記事を参考に、十分に検討してからネーミングするようにしてくださいね。