コロナ禍のおかげで、以前にも増してオンラインを使った会議、講演、授業が盛んに行われるようになりました。私も去年の9月~12月までWHO(世界保健機関)が主宰するMOOC(大規模公開オンライン講義)の一つを受講しました。WHOは、OpenWHOというMOOCプラットフォームを持っていて、数え切れないほどのコースを無料で開設しています。 https://openwho.org 私はその中で、"Healthy Ageing for Impact in the 21st Century: Global Online Leaders Training (Sep-Dec 2020)"というコースを選びました。 このコースは、2020年12月15日に国連が採択した決議案「健康な高齢化の10年(United Nations Decade of Healthy Ageing 2021-2030)」に関連するものです。 https://undocs.org/en/A/75/L.47 「健康な高齢化の10年」の採択により、すべての人が尊厳と平等の下、健康的な環境において、自分自身の能力を発揮しながら歳を重ねられるよう、政府・市民団体・国際組織・専門家・大学・メディア・民間セクターが集まる機会を作ります。このコースは「健康な高齢化の10年」の実践要員を育てる目的のものでした。 世界中から約1,000人がこのコース参加しました。そして、「高齢化する世界」、「エイジズム」、「健康な高齢化」のモジュールを学び、その他に「高齢者に優しい環境」か、「インテグレーテッドケア」のモジュールを選択して学びました。コースを通して、個人課題とチーム課題に取り組み、チーム課題には、チームにチューターが一人ずつついてガイドしてくれました。私のチームには、私の他に3人のオーストラリア人がいて、そのうちの1人は途中で脱落してしまいましたが、残りの3人で力を合わせ、これもオーストラリア人のチューターが導いてくれて課題をパスしていきました。 口腔保健や歯科については、必修教材にも補助教材にも取り上げられていませんでした。しかし、チューターや参加者の中には、高齢者の口腔保健は見過ごされているが、健康、福祉、クオリティ・オブ・ライフにとって重要なインパクトがあることに気づいている人たちが少なからずいました。私は、自由参加のワークショップ内で、日本のあるテレビ番組で放映された101歳で28本の歯を持つ女性を紹介しました。 https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_bstvtokyo/program/detail/202010/22200_202010170900.html これを見て、ワークショップの参加者は強い関心を持ち、他の話題が吹っ飛ぶほどでした。また、チーム課題の最後に提出したアクションプランでは、先に British Dental Journal に出版していたSakataモデルのある山形県酒田市を舞台に、オーストラリアの"My Health Record"というシステムを歯科医療に応用しました。チーム課題は、他のチームの人3人が評価するのですが、口腔保健に着目したことを褒めてもらって満点をいただき、extraordinary submission「非常に素晴らしい」というマークも付けてもらいました。 個人課題やチーム課題を通して、コース参加者の結束がどんどん強まり、終了時にはFacebookやLinkedInによって同窓会ができました。私のチームメンバーも、定期的に連絡を取って繋がりを保っています。国際的、学際的な共同作業の楽しさを感じた3ヶ月でした。そして、これからもこの分野での口腔保健の重要性を探究していきたいと思います。
著者西 真紀子
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)理事長・歯科医師
㈱モリタ アドバイザー
略歴
- 1996年 大阪大学歯学部卒業
- 大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
- 2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
- 2001年 山形県酒田市日吉歯科診療所勤務
- 2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修了 Master of Dental Public Health 取得
- 2018年 同大学院修了 PhD 取得
- NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP):
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