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脱水と経口補水液 その2

脱水と経口補水液 その2
脱水と経口補水液 その2
一昔前、運動部では練習中に水を飲んではいけないと言われた。しかし現在のスポーツ医学では、水分補給をすることが常識になっている。どうして、このように変わったのだろうか?

さてアメリカンフットボールは激しい競技で有名である。炎天下にプロテクターを身にまとい練習するため2.5ℓもの汗をかく。かつては、厳しいトレーニングに耐えることで精神力を養い強い選手になると考えられていた。

(図1)

そのため、スポーツ中の水分摂取は禁じられていた。そこで競技中に、"こむら返り"や"嘔吐"、"意識障害"が頻発した。脱水や熱中症で倒れたのだ。ちなみに熱中症の初期症状は脱水である。身体は、汗をかくことで体温を一定に保っている。しかし脱水により汗が出ないと、体温が上昇し熱がこもるのだ。

さて"脱水とは、身体から水分だけでなくナトリウムなどの電解質も同時に失う"ことを指している。軽い運動では汗は少量なので、導管を通過する際、ナトリウムが再吸収され塩分濃度の低い汗が出る。

(図2)

そのため軽いジョギングや散歩程度では、塩分を補給するほどではない。

しかし激しい運動ではどうだろう?再吸収される前に排出されるので、塩分濃度が高い汗となる。そこで、水分と電解質の補給が必要となる。

余談だが、電解質の再吸収は口腔内でも起こっている。以前述べたが、刺激唾液は安静時唾液より緩衝作用が強いため、歯が脱灰されにくい。これは、重炭酸塩が導管内で再吸収されにくいためである。

(図3)

参考:謎解き唾液学【9】なぜ刺激唾液は緩衝作用が強いのか?

ここで簡単に体液について整理する。

成人では体重の約60%が体液である。この中、40%が細胞内液である。残りの20%が細胞外液であり、そのうち15%が組織間液、5%が血漿である。食事をすると、腸管から栄養素や水分が吸収される。これが血管に入り、細胞外液の血漿、そして組織間液を通じて細胞内に入る。また逆に細胞内で産生された老廃物は、組織間液や血漿を通じて体外に排出される。このホメオスタシスを司るのが体液である。

(図4)

では脱水時に、水ばかり飲み続けるとどうなるだろう?

続く

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著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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岡崎 好秀

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