Dental Life Design

あなたのデンタルライフを彩るメディア

むし歯の少ない町の歯科医師の日常
シーズン2:変人

2021/3/12 デンタル〇〇デザイン

「変人」、この言葉には親しみを感じる。

昨年メジャーリーグ・ベースボール(MLB)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開催が約4ヵ月遅れ、しかも60試合制短縮シーズンとなった。MLBファンたちは開幕日を指折り数えながら待っていた。そのひとりである私は、それまでの長い時間を乗り切る方法を模索した。まず購入していたMLBワールドシリーズの特別編集DVDや録画していた好ゲーム、特集番組を見続けた。そしてある時、MLBを題材にした映画を再度観ることを思い立ったのだ。

楽しいことはすぐ行動に移せる。本棚からベストセラー本『マネー・ボール』を見つけ出し読み始めた。これはオークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMがセイバーメトリクスとよばれる統計的手法を用いて球団改革を行い、MLB随一の貧乏球団を強豪へと変えていく様を描いたものである。それを読み終えると、ブラッド・ピットが主演で映画化されたDVDに手を伸ばすことになった。

それから「フィールド・オブ・ドリームス」「オールド・ルーキー」「42~世界を変えた男~」「ミリオンダラー・アーム」「ナチュラル」「メジャーリーグ1・2・3」などと連日の映画三昧となった。それまで特別に意識したこともなかったが、主人公たちは周りからみると間違いなく変人ぞろい、考えてみればそもそも映画では主人公自体が異質でなければ物語はおもしろくない。そして何かにつけこのような行動をとってしまう私自身が、なかなかの変人であることに今さらながら気づいたのである。

MLBの現役選手にはヒューストン・アストロズのザック・グレインキーを始め、変人たちがたくさんいる。彼は17年間で208勝をあげ、MLBオールスターゲームに6回選出され、最優秀防御率のタイトルを2回獲得、最高の投手に贈られるサイ・ヤング賞も受賞している。YouTubeには「変人ザック・グレインキーのおかしな行動のまとめ」まであり、パット・ネシェック投手からベースボールカードへのサインを頼まれたが、「疲れるから嫌だ」と拒否して以降、確執が生じた話は特に有名である。

そして今もっとも注目されている変人は、昨季ダルビッシュ・有投手を押しのけサイ・ヤング賞を受賞したトレバー・バウアー投手だ。オフ最大の大物FA(フリーエージェント)選手だった彼は、ロサンゼルス・ドジャースと3年総額1億200万ドル(約107億1,000万円)で合意契約した。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)時代に同学年のゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)と二枚看板を形成し、互いにドラフト1巡指名でプロ入りした二人の報酬は、一球投げるたびに約100万円となっている。

「変人」という以外にも「鬼才」、「異端児」、「問題児」などの言葉を添えられる彼の奇行癖は、MLBファンの中では有名である。先発した試合で5回に8点目を失い、KOされた彼はマウンドで怒りが爆発し、センターバックスクリーンに向かってボールを投げつけた。これは前代未聞の出来事で、本人は後に反省・謝罪しているものの、これがトレードの一因だったことは否定できない。またポストシーズンの直前、趣味のドローンを飛ばして小指をケガし、流血したままマウンドに上がった映像も有名だ。

その一方で彼は研究熱心で、科学的なトレーニングを好み、最新テクノロジーを駆使する「投げる科学者」ともいわれている。先進的な練習方法を積極的に取り入れていることでも知られており、動作解析しフォーム改善を行い、高速度カメラによるデータ解析で他の一流選手の球種を会得する努力も続けている。奇行にはしる感情的な面と、投手として地道な分析・努力を怠らない冷静さを兼ね備えたこの変人は魅力に溢れている。

彼と共通点が多く、互いに尊敬し合いライバルと認めるダルビッシュ投手も変人の部類に属することになる。そのダルビッシュ投手は、インタビューのなかで「野球は好きじゃない。ただ変化球が好き。ピッチャーとして世界一になるよりも思い描く変化球を表現する」とまで言う。例えばわれわれの世界なら「歯科治療は好きでない。思い描く〇〇治療を極める」などと言い換えるのだろうか。世間が認める一流の変人になるために努力が必要である。

そのようなことを考えていると、先日歯科とはまったくかかわりのない団体の重鎮たちから私のある行動についてお咎めをいただいた。次の世代のためには私の意見が正しいと思うのだが、センターバックスクリーンに向かってボールを投げつけるには変人としての実力がまだまだ足りないようである。