2005年、兵庫県 川西市の小児歯科医 徳永順一郎先生は、閉鎖型歯列弓や口呼吸の増加の原因の一つが"口遊び"だと考えた。 そこで幼稚園の保護者に呼びかけ、"レッツチューイング"をスタートした。 これは1年間月に2回、年長児と一緒に風船ガムを膨らませる"口遊び"の取り組みである。 当初、"大きな風船ができる"は6.3%、"できる"20.8%、"もう少し"10.4%、そして実に"できない子"は62.5%であった。 しかし、できなくても園児の楽しそうな表情を見ていただきたい。 子どもの笑顔は、無理やり練習させられていては出てこない。 楽しみながら行うことが大切である。 こうして、何度も繰り返す中に、できる子が増えてきた。 卒園時には"大きな風船ができる"は41.6%、"できる"54.2%と急増した。 そして、"もう少し"2.1%、"できなかった子"は"わずか2.1%(1名)を残すのみとなった。 またその際、口唇閉鎖力(リップ de カム)も測定した。 初回と1年後を比べると、平均口唇閉鎖力は4.8Nから7.6Nにアップしていた。 そもそも口唇閉鎖力が弱いと、風船ガムを上手に膨らませることはできない。 膨らませるためには、大きく息を吸って止め、口唇を複雑に操り、ゆっくりと吹かねばならぬ。 風船を膨らます園児が、急増したのは、口唇閉鎖機能の向上が考えられる。 余談であるが、最近ガムを噛む光景を見かけない。 ガム離れが進んでおり、2004年と比べると2015年では生産量が半分になっている。 その理由の一つが"硬いので噛むのが面倒"ということらしい。 きっとガムを噛んだことのない小児も増加しているだろう。 始めて風船ガムを与える時には、誤飲や誤嚥を見守る必要がありそうだ。 参考:風船ガムと普通のガムの違いは、ガムベースの差によるものである。 しかし2005年当時、風船ガムはすべて砂糖入りで、代用糖(キシリトール・パラチノース)入りは市販されていなかった。 代用糖入りは、噛むとすぐに味がなくなるという欠点がある。 そこで、特注の風船ガムを作り使用した。 なお現在、トレーニングフーセンガムで検索すれば入手可能となっている。 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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