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カリエスリスク評価に
生化学的検査を入れない場合

2021/3/24 デンタル〇〇デザイン

カリエスリスク評価には、様々な方法があります。その一部に唾液検査があり、代表的な唾液検査には、「唾液中ミュータンスレンサ球菌群の数」、「唾液中ラクトバチルス菌の数」、「唾液緩衝能」、「刺激唾液分泌量」などが含まれています。そして、これらを歯科医院のチェアサイドで行うか行わないかで議論になることが多々あります。カリエスリスク評価に限らず、様々なNCD(noncommunicable disease)のリスク評価のためにWHO(世界保健機関)が提唱しているSTEPS(STEPwise approach to Surveillance)を用いて議論することをお勧めしたいと思います。

RILEY, L., GUTHOLD, R., COWAN, M., SAVIN, S., BHATTI, L., ARMSTRONG, T. & BONITA, R. 2016. The World Health Organization STEPwise Approach to Noncommunicable Disease Risk-Factor Surveillance: Methods, Challenges, and Opportunities. Am J Public Health, 106, 74-8.

STEPSというツールは、NCDのリスク評価をモニタリングしたり、報告したり、国別または疾患別に比較するための世界共通のフォーマットです。STEPSには以下の3つのレベルがあります。

STEP1 問診(例:自己申告型で、シンプルなアンケートなど)
STEP2 物理的検査(例:身長、体重、腹囲、血圧の測定など)
STEP3 生化学的検査(例:血液検査など)

STEPが上がるごとに、検査は高額になるので、低・中所得国ではSTEP3を行うことが難しいかもしれません。カリエスリスク評価における唾液検査の中の「刺激唾液分泌量」はSTEP2の「物理的検査」に、「細菌検査」や「緩衝能検査」はSTEP3の「生化学的検査」に入るでしょう。高所得国の日本では、患者さんがSTEP1からSTEP3までフルセットの検査を希望されても、実施は不可能ではありません。そして、唾液検査を除くとカリエスリスク評価の精度が有意に下がるという研究結果があります。

Petersson GH, Isberg PE, Twetman S. Caries risk assessment in school children using a reduced Cariogram model without saliva tests. BMC Oral Health. 2010 Apr 19;10:5. doi: 10.1186/1472-6831-10-5.

しかし、残念ながら唾液検査について患者さんに情報提供したり、検査を提供したりする歯科医院は限られています。これらの検査が国民皆保険制度に入っていないことが一因でしょう。もしも、カリエスリスク評価をするにあたって、STEP3の「細菌検査」や「緩衝能検査」ができないという環境下にある場合、一案として下のようなカリエスリスク評価方法を考案してみました。

1回目
口腔内診査(過去の齲蝕経験、プラーク量)
問診(関与する全身疾患とフッ化物利用)
口腔内規格写真撮影
X線写真撮影(デンタル+バイトウィング)
コンサルテーション
 う蝕の病因論の説明
  補助資料を提供
  例)
  「歯みがきしているのにむし歯になるのはナゼ?世界一あたらしいむし歯予防の本」
(オーラルケア出版 2014)
  小冊子「歯の喪失は予防できる」(東京都予防医学協会 2012) 3日間の食事ダイアリー用紙を患者さんに配布 2回目 X線診 3日間の食事ダイアリーを評価 5分間の刺激唾液量を計測 カリエスリスク評価  例)カリオグラム(「う蝕経験」「関連全身疾患」「飲食頻度」「プラーク量」  「フッ化物プログラム」「唾液分泌速度」「臨床的判断」  の7パラメータを入力すると総合評価が出る) コンサルテーション  3日間の食事ダイアリーを使いながら食事指導  フッ化物の利用方法  個人のリスクプロファイルに合わせた総合的なリスクコントロール 3回目以降 3段階のリスクに合わせた間隔でのメインテナンス(歯周病リスクと合わせて総合的かつ、柔軟に決定する)  口腔内診査  PMTC  コンサルテーション 以上です。 私はこの方法を約30人ほどの患者さんで行ってみて、カリエスリスク評価から「細菌検査」や「緩衝能検査」を省略する場合の心許なさを感じながらも、カリエスリスク評価をしないよりは、う蝕をコントロールする上でずっと良い手応えを掴みました。患者さんは自分自身のカリエスリスクをよりよく理解できたとのことで、行動変容に繋がりやすかったです。コロナ禍により歯科医療のあり方も見直されている今、何らかの参考になれば幸いです。