Dental Life Design

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医科歯科ボーダレスな
診療を目指して第2回:
なぜ内科医師が歯科に興味をもち、
歯科受診を勧めるに至ったか(後編)

2021/4/16 デンタル〇〇デザイン

第1回は私の研修医時代まででした。今回はその続きです。卒後2年間は研修医として京都府立医科大学附属病院に勤務、毎日朝から深夜まで院内で過ごし、1年間でお休みをいただいたのは夏休み1日のみでした。

当時の京都府立医科大学第三内科は、肝臓・内視鏡・消化吸収・循環器・神経内科・血液内科(培養研)と6つの研究グループがあり、先輩方が切磋琢磨されていました。研修医1年目は上級医と一緒に主治医をさせていただき、2年目になると研修医1年目と2人で入院患者さんを受けもつのですが、おかげさまで幅広い疾患を経験させていただきました。

1990年当時、長期間経口摂食ができない患者さんに対する栄養療法は、頸部静脈(鎖骨上か鎖骨下)から中心静脈カテーテルを留置してのTPN(Total Parenteral Nutrition)が主流でした。長期間の絶食に耐えうる栄養療法ではありましたが、普及するにつれてその問題点も明らかになってきました。具体的には、カテーテル熱や微量元素欠乏症、腸管粘膜の萎縮などです。

また、何らかの理由で経口摂食できない患者さんに対する栄養療法として経鼻経管栄養がありましたが、経鼻胃管の自己抜去、咽頭喉頭部に胃管があることが誤嚥性肺炎の誘因になりえるなどいくつかの問題点がありました。そこでよりすぐれた栄養療法として胃ろう造設による経管栄養が開発され普及していったのです。栄養素が腸管を経由するメリットは多数あり、TPNに替わる療法として期待をもって導入したものでした。

しかし、胃ろうの黎明期には、経口摂食を中止した後の口腔ケアが必要かつ重要であることは知られていませんでした。肺炎を繰り返すから胃ろうを造ったはずなのに、胃ろう造設後早期に肺炎を発症してしまったケースが散見され、経口摂食していないにもかかわらず、また肺炎になってしまったと落胆することも少なくありませんでした。その後しばらくして、胃ろう造設後の口腔ケアの重要性が認識され、医科医療者にも認知されるようになりました。

1990年頃に開発された胃ろうは2000年頃に急速に普及したと記憶しますが、ちょうど米山武義先生(静岡県開業)らの専門的口腔ケアが肺炎発症リスクを低減し、肺炎による死亡を減らす効果があるという論文がLancet誌に掲載された時期と一致します。

残念なことに、現在、「胃ろうバッシング」という言葉すらあるのですが、胃ろうは登場した時には期待の星だったのです。私は「胃ろうはプロセスであって、ゴールではない」と本気で思っています。

1990年後半から1993年は、歯科的知識をたくさん得た時期です。週に2日は歯科医師、歯科衛生士と会食しながらお互いの症例のこと、学術的なことを話す機会がありました。

大学院を修了した1997年から2003年まで大阪府枚方市にある星ヶ丘厚生年金病院(現在の星ヶ丘医療センター)に勤務していたのですが、在職中は同院の歯科口腔外科にお世話になりました。ちょうどその頃に周術期やICUにおける口腔ケアが注目され始め、看護師さんに対する口腔ケアセミナーが行われていました。2003年から2008年頃までの時期、歯周病と全身の健康を含むオーラルヘルスと全身の健康にかかわるエビデンスが次々と登場しました。そのこともあってか、医科医療現場で、口腔ケアや摂食嚥下障害への興味が盛り上がっていたことを記憶しています。

2003年に京都市内の医療法人に異動し外来診療と健診、内視鏡検査などを主たる業務とするようになりました。

時代はインターネットの普及、ブログ(ウェブログ)など個人による情報発信ツールも普及してきてDr.ほそDのブログ(ameblo.jp)を書き始めたのがちょうどその頃です。今も過去の記事が閲覧できます。歯科医療への思いも綴っていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

また、「Dental-medical network」という医師・歯科医師による勉強会を立ち上げたのがこの頃です。設立の設立趣意を「医科と歯科の医療者が、互いの専門分野だけでなく専門外の立場の視点からも意見を交わし見識を高め合い、ネットワークを構築することによって、各々のクライアントに新しい価値を提供すること」と定めました。主な活動はメーリングリストにより情報提供と情報交換。メーリングリストの運営サービス終了などがあり立ち消えになってしまったのですが、後にSNSなどによる交流に続くことになります。

2007年、日経メディカル誌の記者の方の取材を受ける機会があり、同誌のオンライン版「日経メディカル・オンライン」に「医師も歯科受診を勧めてみませんか」という記事を寄稿させていただきました。予想外に反響があり、全国の歯科の先生から感想や激励のお手紙などをいただきました。このことがさらなる展開につながって行くのですが、それは次回に。









内視鏡システムで撮影した口腔内写真の画像。いつも上顎・下顎・左右頬粘膜を観察して4~5枚撮影しています。