今回は、歯科医師である弟と言語聴覚士の姉、私たち姉弟の歯科医院ができるまでの道のりについてご紹介します。 まずは設計です。私たち姉弟の共通の設計への要望点は、どんな方でも外来に来られるようにする。バリアフリー、車いすはもちろん、リクライニング車椅子の患者さんも来院できるよう、通路や待合を広めに設計しました。駐車場からのアプローチ、待合からそのまま診察室に入ることができるようにする。それぞれを半個室にしてプライバシー確保に努める。これらのおかげで、車いすの方も多く来院されています。中には、訪問歯科診療でケアマネさんからご依頼を受けて訪問歯科診療をしていた方でも当院であれば車いすでも通院できるため、外来に切り替えられる方もいらっしゃいます。 ここまでは、最近の歯科医院ではよくありますが、当院には目玉となる部屋が必須でした。もうお気づきだとは思いますが、言語聴覚士の私が言語訓練のために必要なリハビリテーション室です。設計は歯科医院を多く手がけられている設計士さんにお願いしました。しかし、そんな方でもリハビリテーション室を作った経験はなく、もちろんキッチンがある歯科医院を作ったことはないとのこと。私が知るかぎり、キッチンを完備している歯科医院は全国でも当院を入れて片手に収まるほどです。こうしてキッチン付きのリハビリテーション室ができあがりました。 キッチンは、摂食嚥下評価・訓練の中で、水分のとろみの調整、嚥下調整食の調理などに使用します。もちろん、ミキサーや電子レンジ、増粘剤、嚥下調整食のサンプルも準備しています。 リハビリテーション室には、小さなお子様もいらっしゃいます。お子様の訓練の時には、クッションマットを敷いて、下に座って訓練ができる空間に変わります。そのため、比較的ゆったりした部屋にしました。 歯科診療室は待合との間には扉がありますが、バックヤードとはつながっていて半個室となっています。しかし、リハビリテーションでは発声訓練などで大きな声を出したりすることもあるので、リハビリテーション室は個室となっています。たまに、私が扉を閉め忘れて訓練をしていると他のスタッフさんがそっと閉めてくれます。 また、リハビリテーション室にはリクライニングチェアを完備しており、頚部の可動域制限がありストレッチが必要な場合などはリラックスして受けていただける空間になっています。 しかし、リハビリテーション室には、保険算定を行うものによっては施設基準があります。もしも、これからリハビリテーション室を作ろうとお考えの先生がいらっしゃいましたら、広さや設置する機器など、ご確認いただけると良いかと思われます。 その他、言語聴覚士がいることで摂食嚥下訓練を希望される訪問診療の依頼も多くいただきます。そのため、裏口からすぐのところに訪問診療などで使用する物品を置くスペースも作っています。 当院では、このようにして設計の準備段階から差別化をはかってみました。次回は、実際の歯科医院における言語聴覚士の取り組みと役割についてお伝えしたいと思います。
著者小島 香
こじまデンタルクリニック 言語聴覚士
略歴
- 2008年 言語聴覚士免許取得
- みなと医療生活協同組合協立総合病院、国立長寿医療研究センターに勤務
- 2017年 日本福祉大学大学院 医療・福祉マネジメン研究科修了
- 2018年 こじまデンタルクリニック
- 日本疫学会
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
- 日本在宅医療連合学会など