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口腔機能発達不全症 その22 口腔機能と感覚統合

口腔機能発達不全症 その22 口腔機能と感覚統合
口腔機能発達不全症 その22 口腔機能と感覚統合
現在、子ども達の誤嚥・窒息事故が問題となっている。
この背景の一つに、口腔機能発達不全が考えられる。
さて、誤嚥・窒息事故には、二つの予防法がある。
一つは"守りの予防"、もう一つは"攻めの予防"である。
"守りの予防"とは"〇〇しないように、△△する"ということ。
つまり、誤嚥しない様に、食材の形状や性質を考慮し、小さく切って与える。





また、早食い競争、急いで食べる、ふざけて食べるなどの問題行動を禁じるなどである。
一方、"攻めの予防"とは、口腔機能を高めること。
例えば、よく噛むこと・嚥下力を高めること・誤嚥しそうになっても、とっさに食物を排出するなどの機能である。
歯科医師は、"攻めの予防"について広く提言する必要がある。




ところで、感覚と運動は別々に考えがちであるが、これは大きな間違いだ。
ある運動を起こすには、まず周囲からの感覚刺激が必要である。
それに対し運動が起きると、それをフィードバックするために感覚情報が得られる。
感覚と運動は表裏一体であり、この繰り返しで洗練された動きになる。
これが感覚統合である。


前回、シナプスの"刈り込み現象"について述べた。
乳児期、過剰なシナプスが作られるが、使わないものは淘汰され、必要なもの残り強化される。
なかでも生命に影響する刈り込みは、早期に行われる。
すなわち、シナプスが多い時期に、触覚や味覚など多くの感覚刺激を受け、"なめる"・"しゃぶる"などの運動を繰り返すことが重要となる。



この時期の感覚統合の不足が、誤嚥・窒息事故につながる可能性がある。


少々難解かもしれないので、温泉に例えてみよう。
今、川原に温泉が湧き出ていたとする。
ここに入浴する時、まず何を行うだろう?



湯の温度がわからないので、手を浸けて、熱いか冷たいかを確かめる。
もし熱ければ、反射的に手を出し、水を加え適温にする。
また、深さや底の状態は足で確かめ、入浴する。
感覚刺激に対して反応し、運動が引き起こされることがわる。
これらは、危険回避のための行動である。


さて現在、オール電化の住宅が多い。
風呂には、自動的に湯が用意され、そのため温度を確かめる必要がない。
最初から安全な環境で育った幼児は、温泉で火傷をするかもしれぬ。
同じことが誤嚥・窒息事故でもいえないだろうか。


続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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