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口腔機能発達不全症 その18”消費者庁 小さく切って与える”VS”母子手帳 小さいものは危険”?!

口腔機能発達不全症 その18”消費者庁 小さく切って与える”VS”母子手帳 小さいものは危険”?!
口腔機能発達不全症 その18”消費者庁 小さく切って与える”VS”母子手帳 小さいものは危険”?!
数年前、小学校1年生の女児が、学校給食で窒息死したという悲しい事故があった。
駆けつけた救急隊員が喉から取り出したものは"ウズラの卵"であった。



"コンニャクゼリー"・"ナッツ類"・"白玉団子"・"プチトマト"などは窒息事故を起こしやすいことは知られている。
しかし"ウズラの卵"には驚いた。
いったい、どのような食べ方をして事故を起こしたのだろう?
ふざけて食べていたのか?食材の問題なのか?あるいは、口腔機能の問題なのか?
残念ながら精細には公表されていない。
そのためか地域によっては、保育所や小学校の給食では"ウズラの卵"の使用を控えているという。
人口動態調査によると1~14歳の死亡原因の第1位は不慮の事故である。
なかでも"食品による窒息"が主要な位置を占め、その大半が4歳児以下である。
筆者も、窒息による低酸素脳症で重度の障がいに陥ったり、死亡した子どもを何人も診てきた。
昨日まで元気な子が、わずかの油断でこのような状態に陥る。保護者にとって、悔やんでも悔やみきれないだろう。


そこで消費者庁からは、"小さく切るように"、"よく噛んで食べさせるように"と通達されている。



しかし、"小さく切ること"が根本的な解決策にならないのは明白である。
また"よく噛んで食べさせる"ことができないから現場は困っている。


さて、母子健康手帳には、誤飲防止のしおりが付いているものがある。



これは、誤飲と窒息予防のためのもので、赤ちゃんの最大口径である39mmの穴があいている。
これより小さいものは、口に入ると危険なので、手の届く所に置かないようにするための目安としているのだ。



誤嚥事故を防ぐため、"消費者庁は小さく切って与える"と勧告しているが、"母子手帳は、小さなものは口に入ると危険"との記載がある。
これでは、保護者や教育現場の混乱が増すばかりである。


いずれにせよ、口腔機能発達不全と誤嚥とは関係が深く、事故の原因を探ることが再発防止の第1歩である。
現在、口腔機能の発達の"みちすじ"が明確になり、その段階に合わせた離乳食の指導がなされている。



一方で、このような事故が多発する背景には、ここに表記されていない
"何か"が足りないのだろう。
今後、口腔機能発達不全症による誤嚥事故が増加することが予想される。
そのため歯科医師の立場からも、事故を未然に防ぐ手立てを考える必要がある。


続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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