診断に自信なくてもOK!しかしその疾患を放置してはダメ!
こんにちは。福岡県福津市で開業していますやましろ歯科口腔外科の山城崇裕と申します。今回、全6回にわたって連載の機会をいただきましたので、口腔粘膜疾患のみかたについて解説したいと思います。 皆さんは、口腔粘膜疾患を見つけたときに、適切な診断と説明ができますか?私は、口腔外科を標榜して診療していますが、10%程度は診断できていないかもしれません。診断できていなくても、二次医療機関に送ることができれば、それで良いと思っています。診断に自信のない疾患を放置することが、一番問題だと思います。 そして、患者さんの主訴に対して、一次医療機関(一般の歯科診療所)で観察が可能な病的意義の少ない粘膜の変化(正常な組織を含める)、一次医療機関で治療が可能な粘膜疾患、二次医療機関(専門性のある病院)に紹介したほうが良いものを選別して、経過観察や治療にスムーズに導けるようになっていただきたいと思います。 口腔粘膜疾患を診察するにあたっては、正常な口腔粘膜を理解し、異常な粘膜が正常な粘膜とどのように違うのかを診ることが大切です。また、粘膜下で疾患がどのように拡がっているのかをイメージできると、疾患の特徴や診断力が上がると思います。口腔粘膜が皮膚と比べて赤みを帯びている理由、知っていますか?
まず、口腔粘膜が皮膚と比べて赤みを帯びている理由をご存じでしょうか。粘膜や皮膚は上皮と上皮下組織に分かれています。その上皮を見た時に、上皮下の血管が透けてえるかどうかで赤く見えるか赤く見えないかが分かれます。つまり、皮膚と粘膜の上皮の厚みを比べると、皮膚の上皮の方が厚く、角化しています。角質細胞は光を乱反射して白くみえるといわれています。また、角質細胞が少ない粘膜ほど粘膜下の血管が透けています。皮膚の上皮は厚みがあって角化していて、粘膜下の血管が透けて見えないので粘膜ほど赤くは見えないのです。 粘膜の見え方。参考文献1より。 上皮下で炎症が起こると血管が増えます。そうすると、皮膚も粘膜もより赤く見えます。紅斑性カンジダ症は萎縮性カンジダということもあります。上皮が萎縮して薄くなって血管が透けて見えています。これが、萎縮性カンジダが赤く見える理由です。 炎症の構造。上皮下組織に血管の増生を認める。参考文献1より。 びらんは、上皮の欠損が上皮内でおさまったもの、潰瘍は上皮を超えているものをいいます。この潰瘍は上皮が欠損しているのに赤く見えません。人の体は傷がついたら治ろうとする力があります。潰瘍は、治癒に必要なフィブリンが表面に沈着していますので、赤く見えません。 このように、口腔粘膜の変化は、粘膜下で起こっている変化をイメージできると、疾患の本質が理解でき、患者に対する説明が、理解だけでなく安心を提供できるようなものになると思います。 次回からは腫脹や腫瘤のみかたから白色病変など、さまざまな病変を理解できるように、解説したいと思います。 なお、もっと詳しく知りたい方は、2021年に上梓しました拙著『常在菌との共存を考慮した 口腔粘膜疾患の診断・治療・管理』(クインテッセンス出版刊)をぜひお読みください。 参考文献 山城崇裕.常在菌との共存を考慮した口腔粘膜疾患の診断・治療・管理.東京:クインテッセンス出版,2021.
著者山城崇裕
やましろ歯科口腔外科
略歴
- 2000年 九州大学歯学部卒業、九州大学病院顔面口腔外科勤務
- 2006年 博士号取得(歯学博士)
- 2008~2010年 飯塚病院歯科口腔外科勤務
- 2010~2013年 大隅鹿屋病院歯科口腔外科勤務
- 2013~2014年 九州大学顔面口腔外科勤務
- 2014~2016年 福岡県内の複数の歯科医院に勤務
- 2016年 やましろ歯科口腔外科開院(福岡県福津市)
【資格】
日本口腔外科学会認定専門医/日本口腔科学会認定認定医/歯科臨床研修指導歯科医
【所属学会】
日本口腔外科学会/日本口腔科学会/日本先進インプラント医療学会/日本有病者歯科医療学会