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常在菌の役割を理解して口腔粘膜の管理を行おう!第6回(最終回):口内炎について

常在菌の役割を理解して口腔粘膜の管理を行おう!第6回(最終回):口内炎について
常在菌の役割を理解して口腔粘膜の管理を行おう!第6回(最終回):口内炎について

すべての口内炎にステロイド軟膏は効果あり?

最終回は口内炎についてご紹介したいと思います。本コラムをご覧になる方は口腔外科の専門の先生より一般開業医や歯科衛生士が多いと思いますので、詳細は成書を参照していただき、ここでは割愛したいと思います。 口内炎には、潰瘍を形成するものと潰瘍を形成しないものがあります。潰瘍の中にはアフタのような浅いものだけでなく、義歯性潰瘍で時々みられる深い傷になったものもあります。口腔カンジダ症の紅斑性カンジダ症という赤いカンジダ症も口内炎に含まれます。 そして、すべての口内炎に対してステロイド軟膏は効果があるわけではありません。ステロイド軟膏が効果的な場合は、アフタ性口内炎と義歯性潰瘍だけと思ってよいのではないでしょうか(口腔扁平苔癬にはステロイド軟膏の効果が認められますが、今回は口内炎の話には入れないでおきます)。 アフタとは、口腔粘膜に生じる円形で灰白色の線維性偽膜を有する有痛性潰瘍に対する症状名で、アフタをともなう口内炎をアフタ性口内炎といいます。定期的、あるいは不定期に同じ箇所または場所を変えて再発を繰り返す場合を再発性アフタとよび、通常は1~2週間で治癒します。臨床的には小アフタ、大アフタ、疱疹状潰瘍型に分類されています。ヘルペス性歯肉口内炎や帯状疱疹などのウィルス感染症は、最初に水泡を形成して、それが自壊すると疱疹状潰瘍型アフタになります。 アフタ性口内炎。(症例は参考文献1より)

アフタ性口内炎の原因は?

アフタを繰り返す人がいると思いますが、原因は何でしょうか? 唇や舌を咬んでできる口内炎は原因がはっきりしていますが、アフタができやすい人の原因はわからないといってよいでしょう。インターネット上では、再発性アフタの原因としてビタミンB不足が挙げられることが多いです。しかし、健康な患者さんにみられる再発性アフタとビタミンの欠乏が関与する論文を探しましたが、Nolanら2)の報告した1論文だけでした。その論文では、60人中28.2%の患者さんにビタミンB1、B2、B6の欠乏を認め、ビタミン製剤服用後に著明な改善を認めたと書いてありました。また、マルチビタミンを投与しても再発性アフタに影響しないという否定的な論文の方が多いため、これらのビタミンが再発性アフタに関与しているかどうかはわからないということだと思います。通常、歯科医院に相談にくるアフタができやすい人は、ビタミンをすでに試していることが多いと思いますので、ビタミン不足でアフタができやすい人が歯科医院に来るのは稀なのではないでしょうか。 ビタミンB12欠乏症という特殊な病気の人は、再発性アフタとの関連が多く報告されています。ビタミンB12欠乏症の原因は、悪性貧血や胃の摘出手術を受けた患者にみられる吸収障害がある場合等で、健康な個人にみられることは少ないです。最近はビタミンDの欠乏との関連の報告が増えてきています。ビタミンDの補給を行うか、日光浴を勧めると効果がみられるかもしれませんね。 喫煙は口内炎を誘発しそうな印象がありますが、喫煙歴が長い人やヘビースモーカーほど再発性アフタは少ないとの報告が比較的多いです。喫煙すると、その刺激によって角化層が厚くなるからではないかと考察しています。また、禁煙すると再発性アフタができやすくなるとの報告も多いです。だからといって、喫煙が勧められるわけではないのですが、臨床的には興味深い結論です。 口内炎といっても、アフタだけではありません、ステロイド軟膏で効果がない口内炎は口腔カンジダ症だったり、口腔がんも視野に入れる必要があります。 カンジダ関連潰瘍(症例は参考文献1より) 癌性潰瘍(症例は参考文献1より) 本連載ですべてご紹介することはできませんでしたので、興味のあるかたはぜひ、拙著『常在菌との共存を考慮した 口腔粘膜疾患の診断・治療・管理』(クインテッセンス出版刊)をぜひお読みください。 参考文献 1.山城崇裕.常在菌との共存を考慮した口腔粘膜疾患の診断・治療・管理.東京:クインテッセンス出版,2021. 2.Nolan A,McIntosh WB,Allam BF,Lamey PJ.Recurrent aphthous ulceration: vitamin B1,B2 and B6 status and response to replacement therapy.J Oral Pathol Med 1991;20(8):389-391.

著者山城崇裕

やましろ歯科口腔外科

略歴
  • 2000年    九州大学歯学部卒業、九州大学病院顔面口腔外科勤務
  • 2006年    博士号取得(歯学博士)
  • 2008~2010年 飯塚病院歯科口腔外科勤務
  • 2010~2013年 大隅鹿屋病院歯科口腔外科勤務
  • 2013~2014年 九州大学顔面口腔外科勤務
  • 2014~2016年 福岡県内の複数の歯科医院に勤務
  • 2016年    やましろ歯科口腔外科開院(福岡県福津市)

【資格】
日本口腔外科学会認定専門医/日本口腔科学会認定認定医/歯科臨床研修指導歯科医

【所属学会】
日本口腔外科学会/日本口腔科学会/日本先進インプラント医療学会/日本有病者歯科医療学会

山城崇裕

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