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発達期における咬合の変化 その1 ある医師の言葉

発達期における咬合の変化 その1 ある医師の言葉
発達期における咬合の変化 その1 ある医師の言葉
1980年代に出会った"ある医師の言葉"。

「戦争後、食物がなく抵抗力がなかった時代は、乳幼児の感染症が多く死亡率も高かった。しかし次々と抗生物質が開発され、感染症は駆逐された。このままでは、小児の病気はなくなるのではないかと思った。しかし、それに代わって"アレルギー性疾患"や"心の病"が増えてきた。病気には、それぞれの時代に潜む問題が現れている様に思っている」。

30数年前の齲蝕が多かった時代の話なので、もし減少したら、歯科的にどんな問題が起こるのか全く想像できなかった。



その医師は、学校保健に非常に熱心な先生であった。

続けて・・。

「学校で健康診断をしていると、私の子ども時代にはあったとは思えない"おかしい状態"が目につく。例えば、"骨盤の発達が悪く、トレパンがずれ落ちる"、"つまずいたとき、とっさに手が出ず、顔をケガする"、"姿勢が悪い"、"朝礼で倒れる"、"低体温"など数えればきりがない。

医師や教師がおかしいと思っても、子ども自身はなにも不自由さを感じていない。

これらは医学的にも病名をつけられない(検査結果は正常)が、放置すれば将来さまざまな病気を引き起こす可能性がある。

これを見逃してはならない。

歯科医師は、齲蝕や歯周病のみならず、もっと他の点にも目を向けて欲しい。

例えば、唾液。私は、内科検診の時に喉にも注意を払っている。

喉に傷が多いと感じるのは、給食でフライが提供された日に多い。

ひょっとしたら、傷の理由が唾液の減少ではないか・・と考える。

学校歯科でも、この様な疑問を持ちながらの健診をお願いしたい」。


幸いなことに、当時 岡山大学行動小児歯科 下野 勉元教授は、全医局員に対し、地域の乳幼児歯科健診や学校での歯科保健教育を行なうことを義務付けていた。



筆者も乳幼児から中学生まで年間20回以上地域に出かけていた。

幼稚園児で齲蝕が減少したから、歯科健診を早く終えるのではない。

皮膚がカサカサしていたら、口腔粘膜は乾燥していないか?



あるいは、事前に虐待やネグレクトを受けている可能性のある幼児を園から聞き、その情報を基に歯科健診を行なう。

また数多くの口腔内写真を撮影してきた。



大学では30年勤務していたが、おかげで筆者の目が養われたことは言うまでもない。

これらの写真を見直して、次回より発達期における口腔の変化について述べることにする。

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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