代表的な3つの白色病変を理解しよう!
今回は白色病変、特に白板症についてお話ししたいと思います。口腔内に発生する頻度が高い白色病変は3つあります。下図のとおり、白板症、口腔扁平苔癬、口腔カンジダ症の3つだけ知っていただければ十分かと思います。これらの三つの白色病変を比べてみましょう。白板症ははっきりくっきりした白色病変、扁平苔癬はモヤッとした白色病変、口腔カンジダ症はフワッとした感じです。白色病変は扁平上皮癌の前段階として、注意を要することがあるため、できればこの3つの白色病変は鑑別できるとよいでしょう。 白板症は定義がとても難しいです。「臨床的にも病理組織学的にも他の疾患に分類されない白斑」と教科書には書いてありますが、なんのことかさっぱりわかりませんよね。まず、口腔カンジダ症や扁平苔癬などの見てわかる疾患が区別できることが大前提です。これらの見てわかる白色病変を否定できたときに、「白斑があれば白板症と言っていいですよ」ということだと思います。 本来であれば、病理組織学的にも否定するべきかもしれませんが、一般歯科診療所ではそこまでする必要はないと思いますので、見た目で口腔カンジダ症や扁平苔癬でない白斑であれば白板症と言ってよいと思います。比較的境界が明瞭で、比較的色が均一です。こすっても剥離しないのが大きな特徴です。白板症は頬粘膜、舌、歯肉、口蓋など、あらゆる粘膜に発生します。白板症は粘膜上皮が厚くなって角化しているので、下の血管が透けて見えないので、白く見えます。ご存じかと思いますが、白板症は潜在的悪性疾患(前癌病変)とよばれています。凹凸があるもの、痛いもの、発赤があるものは要注意!
しかし、すべてが癌になるわけではなく、日本では3.1%~16.3%が癌化すると報告されています。白板症には癌に近い白板症と癌から程遠い白板症があり、どんな白板症が癌になりやすいか、どんな白板症が様子を見た方がよいかを知っておく必要があります。疣贅型、結節型、潰瘍型、紅斑混在型は癌化しやすいといわれています。表現は難しいですが、凹凸があるもの、痛いもの、発赤があるものは要注意です。 また部位別にみると、舌、頬粘膜、口底に発生する白板症が癌化しやすいといわれています。切除をしたほうがよさそうなタイプなのか、切除せずに経過観察をするタイプなのかを考察するのは専門医でも非常に難しく、管理の仕方や考え方は施設によって多少異なると思います。このような状況もあり、患者さんが安心して経過観察を中断し、数年後来院した時には癌になっていたという症例は少なくないと思います。手遅れにならないように上手に専門医に誘導しましょう。 白色病変を鑑別するためには、症例を数多くご覧になるのがいちばんだと思います。ご興味のあるかたは、ぜひ、2021年に上梓させていただきました拙著『常在菌との共存を考慮した 口腔粘膜疾患の診断・治療・管理』(クインテッセンス出版刊)をぜひお読みください。 参考文献 山城崇裕.常在菌との共存を考慮した口腔粘膜疾患の診断・治療・管理.東京:クインテッセンス出版,2021.
著者山城崇裕
やましろ歯科口腔外科
略歴
- 2000年 九州大学歯学部卒業、九州大学病院顔面口腔外科勤務
- 2006年 博士号取得(歯学博士)
- 2008~2010年 飯塚病院歯科口腔外科勤務
- 2010~2013年 大隅鹿屋病院歯科口腔外科勤務
- 2013~2014年 九州大学顔面口腔外科勤務
- 2014~2016年 福岡県内の複数の歯科医院に勤務
- 2016年 やましろ歯科口腔外科開院(福岡県福津市)
【資格】
日本口腔外科学会認定専門医/日本口腔科学会認定認定医/歯科臨床研修指導歯科医
【所属学会】
日本口腔外科学会/日本口腔科学会/日本先進インプラント医療学会/日本有病者歯科医療学会