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発達期における咬合の変化 その3 萌出力と下顎犬歯間幅径の増加

発達期における咬合の変化 その3 萌出力と下顎犬歯間幅径の増加
発達期における咬合の変化 その3 萌出力と下顎犬歯間幅径の増加
筆者は、"被蓋が浅く空隙の多い歯列"を"第1世代"、"閉鎖型歯列"を第2世代の乳歯列と呼んでいる。



乳歯の閉鎖型歯列弓が気になりだしたのは、1990年代の前半である。

その兆候は、乳歯列ではなく下顎切歯の交換期に現れた。

下顎永久中切歯は、乳中切歯の歯根を吸収しながら、やや舌側よりに萌出を開始する(エスカレーション交換)。



そして、舌圧により唇側方向に移動しながら正常な位置に配列する。

しかし、下顎乳中切歯の歯根が吸収されず、自然脱落が期待できない場合では抜歯が必要となる。



これは、下顎永久中切歯の萌出スペースが十分でないケースに多い。

続けて、下顎側切歯のスペース不足につながり、捻転や舌側転位の原因となる。

しかも正常に配列に至る可能性は低い。


ちなみに乳歯の透明模型を眺めると、下顎永久側切歯は、歯列弓内で中切歯に比べやや舌側に、犬歯はやや頬側に位置している。



これがスペース不足の際、下顎側切歯が舌側に萌出する理由である。

さらに、犬歯が頬側に萌出するため叢生が目立つ。




さて、Moorees(1994)によれば下顎で犬歯間幅径が大きく増加するのは、側切歯の萌出時までとしている。

しかし、これは正常な交換が行われた場合である。




下顎犬歯間幅径は、自然に増加するものではない。

ここには下顎前歯の萌出力が関係する。

例えば、下顎側切歯の萌出時には、舌圧とともに犬歯を側方に押す力がかかる。

これが、犬歯間幅径が増加する理由の一つである。




従って側切歯が舌側に萌出すると、この力を期待できない。

こうして"わずかなひずみ"が、次々と拡大し難症例に至る。

それでは、この"ひずみ"をどのようにして解消するか?


続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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