筆者は、"被蓋が浅く空隙の多い歯列"を"第1世代"、"閉鎖型歯列"を第2世代の乳歯列と呼んでいる。 乳歯の閉鎖型歯列弓が気になりだしたのは、1990年代の前半である。 その兆候は、乳歯列ではなく下顎切歯の交換期に現れた。 下顎永久中切歯は、乳中切歯の歯根を吸収しながら、やや舌側よりに萌出を開始する(エスカレーション交換)。 そして、舌圧により唇側方向に移動しながら正常な位置に配列する。 しかし、下顎乳中切歯の歯根が吸収されず、自然脱落が期待できない場合では抜歯が必要となる。 これは、下顎永久中切歯の萌出スペースが十分でないケースに多い。 続けて、下顎側切歯のスペース不足につながり、捻転や舌側転位の原因となる。 しかも正常に配列に至る可能性は低い。 ちなみに乳歯の透明模型を眺めると、下顎永久側切歯は、歯列弓内で中切歯に比べやや舌側に、犬歯はやや頬側に位置している。 これがスペース不足の際、下顎側切歯が舌側に萌出する理由である。 さらに、犬歯が頬側に萌出するため叢生が目立つ。 さて、Moorees(1994)によれば下顎で犬歯間幅径が大きく増加するのは、側切歯の萌出時までとしている。 しかし、これは正常な交換が行われた場合である。 下顎犬歯間幅径は、自然に増加するものではない。 ここには下顎前歯の萌出力が関係する。 例えば、下顎側切歯の萌出時には、舌圧とともに犬歯を側方に押す力がかかる。 これが、犬歯間幅径が増加する理由の一つである。 従って側切歯が舌側に萌出すると、この力を期待できない。 こうして"わずかなひずみ"が、次々と拡大し難症例に至る。 それでは、この"ひずみ"をどのようにして解消するか? 続く
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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