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発達期における咬合の変化 その4下顎乳犬歯近心のスライスカット

発達期における咬合の変化 その4下顎乳犬歯近心のスライスカット
発達期における咬合の変化 その4下顎乳犬歯近心のスライスカット
乳前歯と永久前歯の歯冠近遠心幅径の差は、上顎で7.7mm、下顎で5.2mm(男児 小野による)である。



そこで、乳前歯から永久前歯へ正常に交換するために以下の調整因子がある。



1:乳歯列の歯冠空隙:霊長空隙・発育空隙

2:犬歯間幅径の増加(側方成長):切歯交換期に著しく増加

3:歯列弓長の増加(前方成長・上顎で著明):永久前歯の歯軸が唇側へ傾斜することにより増加


さて犬歯間幅径の増加は、上下顎とも約3mmとされているが、これには萌出力が関係する。

下顎では、中切歯の萌出時よりも側切歯の萌出時に著明となる。



これは下顎側切歯の萌出時、乳犬歯を側方に押す力が加わるためである。



従って側切歯の萌出スペースが不足したケースでは、この力が期待できず叢生が進む。




そこで、スペース不足がわずかな場合の"ひずみ"の解消法について紹介する。

まず、早期に下顎乳犬歯の近心をスライスカットする。



この時、下顎側切歯を傷つけないように留意する。

これで、下顎側切歯の捻転や舌側転位を予防する。

可能であれば、側切歯が下顎乳犬歯を側方に広げる力となるようにカットする。

スライスカットの後は、フッ化物を塗布しHysを予防する。


もちろん、これだけですべてのひずみが解消されるのではない。

さて、下顎の乳犬歯が脱落すると,永久犬歯が萌出する。



ここでスペースがなければ、頬側転位や側切歯の捻転が生じる。


そこで次に下顎第1乳臼歯の近心をスライスカットし、萌出スペースを確保する。



こうして、スペース不足という"ひずみ"を乳臼歯部に移行させる。


そして最終的に、リーウエイスペースを利用するのである。


続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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岡崎 好秀

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