TOP>コラム>発達期における咬合の変化 その13水分摂取と咀嚼回数

コラム

発達期における咬合の変化 その13水分摂取と咀嚼回数

発達期における咬合の変化  その13水分摂取と咀嚼回数
発達期における咬合の変化 その13水分摂取と咀嚼回数
まず嚥下時の舌運動について考えてみよう。
矢状方向から見ると、舌尖はスポットに当たり、続いて蠕動様運動により食塊を後方に移送する。
次に水平方向から口蓋を見ると、舌尖がスポットに当たった後には側方へ広がる。(図1)


続けて舌の外側縁は、前方から順次歯頸部に当たり、食塊を口蓋中央部に寄せつつ移送する。
その後、舌を口蓋に押し当て嚥下力を作り出す。
この力は、同時に口蓋を広げるように作用する。(図2)


第2世代の閉鎖型歯列弓の増加は、嚥下力と関係する可能性がある。

さて筆者は、ミミを切った玉子サンドを、何回咀嚼し嚥下するかを試したことがある。
すると、一切れ130回で食べ終えた。
次に、ミミ付きのもの、ミミを切って焼いたもので比較した。(図3)


個人的には、ミミ付きの咀嚼回数の方が多いだろうと予測していた。
しかし、予想に反した結果となったのである。
ミミ付きは202回で約1.5倍。
ところが、ミミを切っても焼けば236回と約1.8倍になったのだ。(図4)


そこで理由を考えてみた。
この実験に際し、手元に飲み物がなかったのである。
パンを焼き水分を飛ばすと、飲み込み難い。
そこで、唾液と混ぜ合わすことが必要だ。
唾液を出すため、咀嚼回数が増えていたのだ
食物中の水分摂取は、咀嚼回数に影響することがわかる。

今、手元に 水分が多いヨーグルトと水分の少ないパンがあったとする。(図5)


ヨーグルトは、水分が多いので簡単に飲み込める。
しかしパンは、咀嚼した後、舌を口蓋に押しつけ強い嚥下圧が必要となる。
だから水分の少ない食物は、咀嚼回数が増えることがわかる。
食物中の水分摂取は、舌を介して歯列にも影響する可能性がある。

ちなみに、ミミ付きで焼いたサンドイッチを食べてみた。
噛む回数は、一気に260回となり約2倍となっていた。(図6)



続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事