TOP>コラム>発達期における咬合の変化 その15 若年性顎関節症と乳歯過蓋咬合

コラム

発達期における咬合の変化 その15 若年性顎関節症と乳歯過蓋咬合

発達期における咬合の変化 その15 若年性顎関節症と乳歯過蓋咬合
発達期における咬合の変化 その15 若年性顎関節症と乳歯過蓋咬合
1990年代の資料を見直していると、乳歯の過蓋咬合の増加の兆候は他にもあった。
C:若年性顎関節症が疑われたケース。(7Y 男児)主訴:“数日前より顎がだるくて開かない”。(図1)


過蓋咬合でoverbiteが8mmであった。
発症理由がわからないまま、声の大きさについて尋ねた。
すると保護者は「内向的で、声が小さい」と答えた。
そこで過蓋咬合があると、余分に開口しなければならない理由について説明した。
すると「そう言えば、普段大きな声を出さないのに、秋祭りで始めて御神輿を担ぎ、”ワッショイ!ワッショイ!”と何時間も声を出し、その翌日から症状を訴えるようになった」とのこと。
長時間にわたる過開口が、原因と考えられた。
若年性顎関節症は、1980年代にはほとんど聞かなかった病名である。
顎関節内障が多く、Angle2級で下顎骨の劣成長の2類や過蓋咬合に多い。
これは下顎骨劣成長や下顎角の開大がみられ、開口時に下顎頭の移動距離が多く、これが円盤の転位に結びつくと考えられている。

D: 歯科医院からの紹介 主訴:下顎第1大臼歯遠心歯肉の反復性腫脹・疼痛  。(13歳男児)
同部位の洗浄と投薬を行ってきたが、腫脹・疼痛が反復するため精査を希望。(図2)


第2大臼歯は未萌出である。
しかしパノラマX線写真上では、下顎第1大臼歯と等縁で萌出しているように見える。 
前歯部の被蓋は、約10mmであることから、咬合高径の不足による第2大臼歯の萌出障害が考えられる。
これが反復性の歯冠周囲炎の原因で治療法は、咬合の挙上となった。

さて、乳歯の過蓋咬合は、被蓋が深くなるに伴い下顎前歯には次の変化が見られる。(図3)


①下顎乳前歯が、わずかに舌側傾斜 →②下顎乳側切歯の捻転→③下顎乳前歯の叢生。  
現在、下顎乳前歯部の叢生は、頻繁に見かける。
しかし筆者は、過蓋咬合の増加に気がつくまで乳歯の叢生を見た記憶がなかった。
従って、同部位の叢生は、過蓋咬合の増加とともに生じたと考えられる。
さて、永久歯列の下顎前歯の叢生は、前歯部交換期のスペース不足によるものである。
しかし乳歯は、下顎前歯が最初に萌出するためスペースは十分にある。(図4)

では、どうして過蓋咬合が叢生の原因になるのだろう?


続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

tags

関連記事