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発達期における咬合の変化 その17 第1世代と第3世代の口腔機能の比較

発達期における咬合の変化 その17 第1世代と第3世代の口腔機能の比較
発達期における咬合の変化 その17 第1世代と第3世代の口腔機能の比較
第1世代の4歳児のA君(被蓋が浅く空隙歯列弓)と第3世代のB君(過蓋咬合で閉鎖型歯列弓)が、同じ口腔機能を持つとは到底考えられない。(図1)


そこで、某保育園の歯科健診で、“ア~!”と言いながら大きな口を開けるように指示した。
A君のタイプは、口唇の形は丸く頬も軟らかい。(図2)

保育士に聞くと、元気で食物をよく噛んで食べるという。
まさに、生命力に溢れた口である。
一方、B君のタイプは、縦長となっており、一見すると“オ~”と発音している様に見える。
また、頬は硬く柔軟性に乏しい。
保育士によると、丸飲み食べが多く、歯ごたえのあるものは食べたがらないという。

この理由、動物の頭蓋骨を見て気がついた。
まず肉食動物のトラを側方から眺めると大きな牙がある。
臼歯は、上下の歯がまるでハサミの様にすれ違い、肉を切るためのものである。
このためトラの上下の最後臼歯は“裂肉歯”と呼ばれる。(図3)

前方から見ると、巨大な牙のため、側方運動は不可能なことがわかる。
さらに関節頭と関節窩は横長で、蝶番運動しかできない形態だ。(図4)


一方、ウマは、大きく平らな臼歯が並んでいる。(図5)

しかも牙は退化している。(注1)
前方から見ると、切端咬合で側方運動は容易だろう。
顎関節を見ても、側方への可動域が広いことがわかる。(図6)


そうか!
トラは大きな牙により側方運動が制限される。
過蓋咬合のB君の場合、上顎歯列により側方への動きが制限されているのだ。
だから、歯ごたえのある食物は、食べにくいのだろう。
口腔機能は、咬合状態により大きく左右される
過蓋咬合も口腔機能発達不全症の一つなのである。
 注1:雄ウマのでは上顎の牙は、退化傾向にあり小さい。一方雌ウマは、退化し欠損している。 

続く

著者岡崎 好秀

前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授

略歴
  • 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
  • 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
所属学会等
  • 日本小児歯科学会:指導医
  • 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
  • 日本口腔衛生学会:認定医,他

歯科豆知識 「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
知っているようで知らなかった、歯に関する目からウロコのコラムです!


岡崎 好秀

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