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むし歯の少ない町の歯科医師の日常 シーズン2:Z世代

むし歯の少ない町の歯科医師の日常 シーズン2:Z世代
むし歯の少ない町の歯科医師の日常 シーズン2:Z世代
11月8日、バイデン政権に対する初の審判となるアメリカ中間選挙が行われ、現在も開票作業が続いている。今回の選挙では、確認作業に時間を要する郵便投票が増え、また接戦州も多くなり、すべての結果が判明するまでには、さらに時間が必要らしい。

選挙前、インフレ率が40年ぶりの高水準であることや、大統領支持率が50%を大きく下回っていることから、与党・民主党は下院では大きく議席を減らし、上院でも過半数を割る可能性も少なくないと報道されていた。

もし上院で民主党が過半数を獲得できれば、民主党色の強い規制強化(環境、ハイテク、金融など)の動きが予想されていた。一方、トランプ前大統領の意をくむ候補者が多く出馬した野党・共和党が上下院で過半数を獲得した場合、バイデン政権は内政でほとんど成果が出せなくなる公算が高くなると推察された。加えてウクライナ問題への対応変化などが懸念されることも、世界からの注目度を高める理由のひとつでもあった。

接戦が続くなか、13日にはネバダ州の開票集計が終わり、与党・民主党が議会上院で半数の議席を獲得することが確実となり、主導権を維持する見通しとなった。

開票集計作業の進行に合わせて、この選挙においては生まれた年代によって支持政党が異なる米国社会の「分断」が浮き彫りになった。気候変動対策や銃規制を巡り若者が民主を支持する一方で、高齢者は共和を支持する傾向にある。特に選挙の結果に大きな影響を与えたのが、Z世代の投票であると分析された。

Z世代とは、1990年代後半から2010年代前半に生まれ、生まれた時からインターネットが普及していることからSNSを使いこなして情報発信を行う世代をいう。アメリカの人口の27%を占める彼らの投票行動こそが、選挙予想を覆したのだ。タフツ大学の調査によれば、18~29歳の今回の投票率は、過去30年間の中間選挙で2番目の高さだったらしい。

人工妊娠中絶、銃規制、人種差別、LGBTQ(性的マイノリティ)の問題、そしてこのまま放置しておけば、若者たち自身の世代に降りかかってくる気候変動への対策を巡り、Z世代の多くが民主党を支持したということだろう。さらにフロリダ州10区では、銃規制強化や格差是正を訴えた民主党のマックスウェル・フロスト氏(25)が、共和党候補に大差をつけて初当選した。彼は「Z世代」初の連邦議会議員となる。

経済学者・データ科学者であるイェール大学の成田悠輔助教授は著書の中で、民主主義的な理念には懐疑的ではないが、それを実行するために選挙に過度に依存していることが問題だとも述べている。テクノロジーの進歩が、選挙以外からの情報により民意を捉えることを可能にした。将来的には、私たちが今「選挙」とよんでいるものとは違う「民主主義の具体化」が登場し、世の中に散らばる大量の意見や思想、考え方に関するデータを集積し、分析を行い、政治の方向性を決めるようになると予測している。

ただ、こういった仕組みの実現には、乗り越えなくてはならないたくさんの壁があり、さまざまな領域からの取り組みと、数十年から百年という長い時間が必要となることも付け加えている。しかし残念ながら、私たちが直面している重要課題の中に、それほど時間的猶予があるものは存在しない。たとえば、今この瞬間に私たちが出している二酸化炭素の地球温暖化の影響をいちばん受けるのは、私たちではなく、Z世代を含む次世代である。

アメリカ中間選挙でのZ世代の影響力のニュースを、日本のZ世代たちはどのように受け取ったのだろう。少子超高齢化の日本においては若者の割合は小さく、政治勢力、政策に影響を与えることは難しいかもしれない。ただ私は言いたい。「あなたたちの人生はまだまだ先が長い。だからこそ、日本、世界、地球の未来のために、今自分たちがベストだと思う政策実現を目指さなければならない」。

今年、あるデータ分析調査が、気候変動による海面上昇によって水没する世界の36都市を発表したが、1位に東京、4位には大阪が記されていた。この分析結果は、都市の地形だけでなく、海面上昇に対する各地域の自治体の具体的な行動や、問題点を早期に認識する能力、深刻な被害を抑える資金についても加味され導き出されたものだ。

毎朝足を運ぶ浜辺の海面は、年々明らかに上昇にし、波は容赦なく岸壁を削り取っている。それを眺めていると、私が地域で取り組んできたむし歯予防活動などは、造作ない試みのように感じる。

Z世代の未来のためにも、今すべての世代が力を結集するべきだと断言する。

著者浪越建男

浪越歯科医院院長(香川県三豊市)
日本補綴歯科学会専門医

略歴
  • 1987年3月、長崎大学歯学部卒業
  • 1991年3月、長崎大学大学院歯学研究科修了(歯学博士)
  • 1991年4月~1994年5月 長崎大学歯学部助手
  • 1994年6月、浪越歯科医院開設(香川県三豊市)
  • 2001年4月~2002年3月、長崎大学歯学部臨床助教授
  • 2002年4月~2010年3月、長崎大学歯学部臨床教授
  • 2012年4月~認定NPO法人ウォーターフロリデーションファンド理事長。
  • 学校歯科医を務める仁尾小学校(香川県三豊市)が1999年に全日本歯科保健優良校最優秀文部大臣賞を受賞。
  • 2011年4月の歯科健診では6年生51名が永久歯カリエスフリーを達成し、日本歯科医師会長賞を受賞。
  • 著書に『季節の中の診療室にて』『このまま使えるDr.もDHも!歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本』(ともにクインテッセンス出版)がある。
  • 浪越歯科医院ホームページ
    https://www.namikoshi.jp/
浪越建男

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