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2024年2月のピックアップ書籍

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失敗症例を減らすためのバイオロジー,アナトミー,ストラテジー フラップデザイン ベーシック編 4つの要素でわかる再生療法のための切開線の理由,原則,組み立て

水上哲也・著 クインテッセンス出版 問合先 03-5842-2272(営業部) 定価 12,100円(本体11,000円+税10%)・156頁 評 者 元 永三 (福岡県・ゲン歯科クリニック) 1980年代までの歯周外科療法は,歯周ポケット減少のための切除療法と,角化歯肉(付着歯肉)確保のための根尖側移動術がほとんどで,そのためのフラップデザインのmodified Widman flapとapically positioned flapが推奨されていた。 1990年代に入るとGTRの概念のもと,失われた歯周組織を回復させるための歯周組織再生療法が紹介され,歯周外科療法の流れに大きな変化が起こり始めた。まさにちょうどその頃,糸瀬正通先生をリーダーとし水上先生を含めた私たちのグループは,UCLAの歯周病学科でHenry Takei先生,Thomas J. Han先生の指導のもと,この新しい歯周組織再生療法の概念と術式を学んでいた。歯周治療の夜明けと未来への発展と展望を感じて,昼夜を問わず興奮しながら研鑽し合っていたのが,昨日のことのように思える。 そこで学んだことのなかで,この歯周組織再生療法を成功させるためにもっとも大切なのは,マテリアルやテクニックではなく(当時は未成熟分野だったために,これらも重要な部分ではあったが),バイオロジーとアナトミーを理解するということを教えていただいた。そして歯周病学はつねに「原因除去」と「環境整備」を正しく行うことが成功に結びつくということも学んだ。 本書はフラップデザインに特化して書かれてあるが,どの症例も「原因除去」である初期治療が十分になされたうえでのフラップデザインであるため,出血の少ない術野となっていて,非常に見やすくすばらしい治癒像を見ることができる。また,歯周組織再生療法のための「環境整備」を正しく行うには,切開,剥離,減張切開を正しく行うのが必須だ。 2000年代になり少しずつ整理されてきたが,当初からこの著書のようにバイオロジーとアナトミーを基本とし「フラップデザインの理由,原則,組み立て」をわかりやすく解説した書籍があったのなら,私を含め多くの歯科医師の失敗症例の数を減らせただろうにと反省を含めた推測をするしだいだ。マイクロスコープが歯科医療に導入されることによって,新しい術式などが発表されるようになり,これによって当然フラップデザインも変わってきた。今回のサブタイトルが「ベーシック編」ということは,次の「アドバンス編」でもわかりやすく整理して私たちに提供してくれるのではないかと今から期待を膨らませている。しかしそれはあくまでも今回出されたこのベーシック編を熟知してからであろう。 最後に本書でも強調されているように,フラップデザイン各々の意味を理解しながら,なぜその場所にこの切開を入れるのか,こういう場合どういう風にしなくてはいけないのか,などの考え方を十分学ぶことが大切である。水上先生がいっているようにいわゆる答えを見聞きするのではなく,答えを導き出せる考え方が大切で,本書は「答えを導き出す」「答えを作り出す」「方程式を作り出す」ことができる内容だと思う。

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