この図は、小児歯科専門医でレジン充填の各ステップと小児の状態を調べたものである。 ここでは、術者は無痛的治療に心がけ、アシスタントもたいへん上手に治療を行っている。 点数が低い方が、上手に治療を受けている。 一方、高くなると、泣き暴れてアシスタントによる固定が必要だ。 こうしてみると1・2歳児は、ほとんどが泣くことがわかる。 歯の治療に対する理解力がないから仕方がない。 歯の痛みがあれば治療を余儀なくさせるが、この嫌な経験が将来に悪影響を及ぼさない配慮が必要となる。 1・2歳児は、家庭での仕上げ磨きでも泣くことが多い。 そこでフッ化物の塗布などの処置は、短時間で終わらせ保護者への指導に時間をかける。 また歯科健診・歯磨き指導は、チェアー上で行うと大泣きする。 そこで術者と保護者が座位で対面して行う(knee to kneeのポジション)と良い。 この方法は、保護者が子どもの体動を抑制することができる。 いずれにせよ、低年齢児は、無痛的治療を心がけ、終了後も定期健診により良い体験を繰り返していくとおりこうになる。 この図では、3歳の後半になると上手に治療を受けていることがわかる。 しかしこれは小児歯科専門医での調査なので、一般歯科医院では4歳と考えたほうが良いだろう。 さて、幼稚園などに入園し、数か月~半年経つと、おりこうに治療を受けるケースが増える。 入園までは、母子が一体化した世界です。子どもの要求は、母親により満たされ思いのままです。しかし幼稚園に入ると、集団生活に入り、規則の存在に気づいたり、泣いたら恥ずかしいなどの気持ちが芽生えます。だから我慢することを覚え、おりこうな子が増加します。 また4歳頃は、幼稚園への入園の年齢であると同時に、歯の治療が自分のためであることがわかる時期でもあります。これはこの時期の精神発達と関係します。 例えば、“まだお父さんが仕事から帰ってこない。”と“お腹がすいた。”を組み合わせると“お腹がすいたけれど、お父さんが帰ってくるまで待ってよう。”となります。このように“○○だから△△しよう!”、すなわち“むし歯があるから歯の治療をしよう”は4歳頃の発達の課題です。もちろん、これが理解できても、痛いことは我慢できません。 続く 参考:岡崎好秀.小児歯科診療最前線! 子どもを泣かさない17の裏ワザ.クインテンス出版,2014. https://www.shien.co.jp/i/BK05583
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
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