初診の2歳児。 母親が歯科健診とフッ化物の塗布を希望し来院した。 年齢から考えても、チェアーに上げると必ず泣き出すはずだ。(図1) 読者諸氏は、どのように対応しているだろう? さて歯科医療従事者は、チェアーが診療を行う場所という思い込みがある。 すでに泣いている、あるいは泣き出しそうな低年齢児を、無理にチェアー上にあげると大泣きしてたいへんだ。 一方、1歳6か月児や3歳児などの乳幼児歯科健診では、術者と保護者が向かい合い座位(knee to kneeの姿勢)で行うのが一般的となっている。(図2) 口腔内が見やすいばかりでなく、体動も抑制することもできる。 これを診療室でも、もっと使うべきだと思う。 特に、処置のない低年齢児の健診や薬物塗布には有効だ。 さて、この姿勢にも、乳幼児の体動を減らすコツがある。 そのポイントを紹介する。(図3) 1.保護者は、子どもの股を広げ、頭を術者の方に向けて座る。 2. 保護者の肘で、子どもの太ももを固定する。 固定すると足をバタバタできない。 3.保護者は、子どもの手をとり、おなかの上で手をつなぐ。 胸の上で手をつなぐと、術者の動きの妨げとなる。 4.術者は、常に軽く子どもの下顎下縁に左手を触れる。 ここを触られると、子どもは起き上がることができない。(参考) この姿勢を素早くとると、子どもが泣く可能性が減少する。 あらかじめイラストを描いておくと、保護者が分かりやすいだろう。(図4) 続く 参考:チェアー上で治療を嫌がり、仰臥位から首をもたげて起きようとすることがある。一度起きると、その度に寝かせなければならない。その度に力で押さえると、こどもはますます嫌がる。 そこで、常に左手で下顎下縁に軽く手を添え、起きようとしたら術者の手を硬くする。これだけで大人でも起きることができない。一度、診療室で試していただきたい。(図5)
著者岡崎 好秀
前 岡山大学病院 小児歯科講師
国立モンゴル医科大学 客員教授
略歴
- 1978年 愛知学院大学歯学部 卒業 大阪大学小児歯科 入局
- 1984年 岡山大学小児歯科 講師専門:小児歯科・障害児歯科・健康教育
- 日本小児歯科学会:指導医
- 日本障害者歯科学会:認定医 評議員
- 日本口腔衛生学会:認定医,他
歯科豆知識
「Dr.オカザキのまるごと歯学」では、様々な角度から、歯学についてお話しします。
人が噛む効果について、また動物と食物の関係、治療の組立て、食べることと命について。
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